中日ドラゴンズ 荒木 雅博選手
これまで堅実な守備、俊足を武器に、過去に4度のリーグ優勝に貢献。今もなお成功確率の高い盗塁技術で中日に欠かせないプレーヤーとなった荒木 雅博選手に、今回は走塁の極意を伺いました。
走塁の極意
――荒木選手は、まず盗塁を試みる上で、意識していることはどんなことですか?
荒木 雅博選手(中日ドラゴンズ)
【1】ピッチャーのクセを見つける
荒木 雅博選手(以下「荒木」) まずはピッチャーが、どういうクセを持っているか一番最初に気付きたいので、下から順に足の幅や足の向き、そこにクセがなければ、膝、腰、上半身、頭と見ていきます。それでも、分からないなという時は、ぼんやり全体をみる。その中で、なんだかここが気になるなという部分があれば、その1点を見てスタートするようにしています。
【2】リードをとる上で意識していること
荒木 僕は少しでも大きくリードします。リードすることによって、相手キャッチャーにもそのリードが見えるわけなので、相手に『ちょっとでもファンブルしたら、セカンドに行かれちゃうな』とか思わせることができる。
つまり、自分がセカンドベースに近い、サードベースに近いというリードをしたいからするのではなくて、相手にみせる、プレッシャーを与えるためのリードというのを常に考えています。
【3】良いスタートを切るために
荒木 ずっとプレーしている中で、どこが一番スタートを切りやすいのかというのは、もう毎日毎日、模索しています。それはアップをしているときでも、ダッシュをするときでも、この形が走りやすいなとか考えていますね。
それでも、『これがいい』という正解はないと思うので、人それぞれ高めにしてスタートするのがいいのか、低めにしてスタートするのがいいのか、それはもう自分で見つけるしかないです。
走塁のスピードアップを求めるために大切なこと
――走塁のスピードアップをするために工夫していることはありますか?
【1】加速力を高めるために
荒木 雅博選手(中日ドラゴンズ)
荒木 加速力を高めるというのは、ちょっとした部分で、例えばスタートを良くするとか、あとはスライディングの時にスピードが落ちないように走るといった部分は工夫できるかと思います。最初と最後です。あとはもう練習で走りこむこと。ここは根性ですね(笑)
【2】良いスライディングで高まる成功率
荒木 危ないので、あまりオススメはしませんが、スライディングはベースの近めから滑り込むのがいいと思います。
盗塁は、最後の動作のひとつ、“スライディング”でアウトになるとか、セーフになるとかが半分は決まってしまうので、『あぁ、今もっと良いスライディングしておけばセーフだったな。スライディングが悪かったらアウトだったな』というのが多いんですね。
だから、なるべく低くスライディングができるように、低く滑りこむ練習をすればできるようになるので、そういった部分でも成功率は高められると思います。
【3】盗塁でのアウトを生かして上手くなれ!
荒木 盗塁でアウトになるということは、失敗したということ。でも、僕はそこから失敗に対して、いま何が足りなかったのかを常に考えます。スタートが悪いのか、スライディングが遅いのか、ただ単に相手の方が上だったのか?など、考えると失敗の要素が出てくるので、1個失敗をするたびに、どこに失敗があったのかというのを考えて、次は失敗しないようにやっていけばいいと思います。
高校生であっても、振り返りはできますよね。なんで、アウトになったんだろうとか、やっぱり失敗したことに対して復習をすることが大切です。予習よりも復習のほうを大事にしてほしいですね。
[page_break:次の塁に行く意欲が沸いたスパイク / 頑張る高校球児へメッセージ]次の塁に行く意欲が沸いたスパイク
――荒木選手はスパイクに関してもこだわりはあるのでしょうか?
荒木 フィット感はいつも重視していますね。僕は小さめをぴったり履きたくて、それはあまり推奨できないことなんでしょうけど、僕は小さめを履いて伸ばしていきたいんですよね。
というのも、多少重たくてもフィットしていれば軽く感じるし、逆にスパイクが足と分離した状態だと重たくて、進まない感じがします。それが、今シーズン途中から履いているスパイクは、フィットして足に合いました。
最初は、立つとグラグラ感があり、違和感もあったのですが、そこはすぐ慣れて、スパイクを変えてからは、『次の塁に行こう』という意欲も沸いてきました。『こういうの本当にあるのかな?』って思うくらい。よくCMで見るようなウソみたいな話ですけど、『あ、行ってみようかな』という感覚にさせてくれたスパイクでした。
荒木 雅博選手(中日ドラゴンズ)
――スパイクを変えただけでそこまでの変化があったのですね。
荒木 実際に、今のスパイクを履いてから盗塁数も伸びています。また、このスパイクは、砂を掴む感覚がすごく強い感じがしました。砂を掴む感覚があると、前に進みそうな感じはしますね。気持ち的にも余裕が出てきて、滑るような感覚ではなく、1回地面を噛んで前に行けるという感覚です。
僕らの高校時代は、こんなかっこいい感じのはなかったでしょ。今のスパイクは、見た感じから速そうじゃないですか。足の形になってきていますよね。
来シーズンは、もう一度、盗塁数を増やして、30盗塁走りたいですね。今年の後半から、このスパイクを使わせてもらって、それが出来るような光が見えたので、自分自身でもそれが楽しみです。
――最近では高校野球でも、走塁を武器にするチームも増えてきましたが、荒木選手自身、走塁を武器にしようと思った時期はいつでしたか?
荒木 プロに入って、レギュラーを獲る前ですね。もう、自分は『走塁だけで生きていこうかな』と。『代走要因でもいい!』と思った時期もありました。
高校野球のチームでも、チームの中で得意、不得意、それはバラバラだと思うのですが、自分の得意なものを伸ばしていけば、あとは監督がそれを上手く組み合わせてチームを作っていってくれるので、選手としても『これが出来ないから、これを出来るようになろう』という考えよりは、『これが得意だから、ここをもうちょっと伸ばしていこう』と考えたほうが、面白くなっていくと思います。
頑張る高校球児へメッセージ
荒木 色々な失敗をしていくことが大事だと思うんです。その失敗をただ単に、『あ、失敗しちゃった』で終わらせるのでなくて、その失敗に理由がついてくるはずなので、それを見つけて出して同じミスをしない。もし、2回、同じミスをしても『次はしないよ』というのを徹底してやっていくことが大切ですね。
それで、成功に近づけていく。だからこそ、いっぱい失敗したほうが成長すると僕は思いますね。僕も8割方、失敗しているから、そこから学んできました。
荒木選手、ありがとうございました!来シーズンも、荒木選手の“足”に注目です!