馬場 皐輔(仙台大)「高い意識と確かな積み上げで、大学球界を代表する剛腕へ」
今年の大学生で上位候補として取り上げられる馬場 皐輔(仙台大)。最速155キロのストレートと7種類の変化球を武器に、仙台六大学リーグでは通算15勝、防御率1.34と安定した実績を積み上げた。仙台育英時代は最速145キロの右腕がなぜ、ここまでのレベルに到達したのか。それは高い意識と計画的な練習による積み上げで、今の馬場があった。
甲子園ではメンタルの強さを学んだ
馬場 皐輔(仙台大)
野球を小学校3年生の時から始めた馬場は、その時から投手。塩釜三中時代では七ヶ浜シニアに所属し、仙台育英に強い憧れをもって入学。まだその時は120キロ台の投手だった。同期の選手たちのレベルが高く、なかなか試合に出場することはできなかったが、その中で地道に積み上げていきながら、入学当初、120キロ台だったストレートの球速は、2年秋には135キロまで速くなった。
そして2年秋、東北大会優勝。明治神宮大会でも完投勝利。順調に結果を残しているように見えたが、「当時は野球もわかっていなかったですね。ピッチングの技術もなかったので、漠然と投げていたイメージしかありません。本格的に野球を知り、そして野球をしていたと感じるのは高校3年の春から。秋までは怖いもの知らず。野球の怖さを知らないまま来た感じでしたね」と振り返る。
その野球の怖さを知ったという3年選抜。馬場は初戦の創成館戦で1回無失点の好投、続く早稲田実業戦でも先発として、7回1失点の好投。選抜ベスト8入りに貢献する活躍を見せたが、いろいろなことが学べた場所だという。特に学んだのはメンタルコントロールだ。
「春夏通じて、プレッシャーや緊張の中でどんな風に投げれば、普段通りの自分のピッチングができるのかを学ぶことができました。甲子園はピンチになると、マイナスな考えが働く場所でもあります。甲子園で、自分のメンタルをコントロールするのが春夏通じて良くなったと思います」
選抜から帰ってきて、馬場はさらに成長を見せる。いろいろな人からフォームのことについて教えてもらい、試行錯誤を重ねた馬場は、東北大会期間中に、最速145キロ~6キロをマークするまでに。そして夏の甲子園にも出場。初戦の浦和学院戦でリリーフ登板。春の優勝チームあいてに、最速145キロを計測するなど、6.1回を投げて2失点の好投を見せた。馬場にとって印象深い試合となった。
「負けたら終わりで、一戦も落とせない。チームで一丸となって戦う大切さや嬉しさもありましたし、ピッチング自体も1球の怖さを試合の中で理解しながら1球で試合の流れが決まるっていう緊張感の中で投げれたかなと思う」
浦和学院を破った仙台育英だが、2回戦で常総学院に敗退。3年間で大きく成長を見せた馬場だが、大学進学を決意。
「まだまだ自分の実力が足りないと思いましたし、体もまだまだ小さかった。大学でピッチングであったり、体のことであったり、もう一度自分を見直したい。仙台大で体育大ってこともあり、自分にあった大学と思い入って4年間で力をつけたいと思いました」
こうして仙台大の入学を決意した馬場。ここでもしっかりと積み上げながら成長を果たす。
トレーニングと投球術を専門的に学び、大学球界を代表する剛腕へ
馬場 皐輔(仙台大)
馬場は1年春からリーグ戦に登板。5試合に登板し、1勝1敗。防御率0.93の好成績。さらに、フォーム修正がうまくいき、最速150キロまでスピードアップした。
「左足を一本足で立った時のバランスを大事にしていて、特に全体的なフォームのバランス、下半身と上半身をうまく連動させることが1番大事だと思っています」
上半身と下半身の連動性は高校時代から課題にしていたことだったが、なかなかできなかった。そこで馬場は専門的なトレーナーについてもらいながら、ウエイトトレーニングを行い、基礎的な体力をつけ、3、4年生になると、野球に特化した動きを取り入れたトレーニングで、体の機能を高めた。トレーニング面の見直しが、剛速球を投げる秘密につながった。筋力、バランス能力が高まると、自分の体が意図通りに動かせるようになる。
「力みはなくなってリラックスして投げることはできるようになりました。リリースのところだけ力を入れて0と100の力加減を覚えることが出来ました」
力みがなくなると、コントロールも自然と良くなり、変化球の精度も上がり、投球の幅が広がる。大学2年生の時、馬場はあえて球速を落とし、制球力重視のピッチングを試みた。そこで学んだことは打者の打ち取り方だ。
「球速を落とすことで、打者の打ち取り方、間合いの取り方などいろいろなことを学ぶことができました」と駆け引きを学んだ馬場は、再び球速を高め、3年春、4勝0敗、防御率0.76と好成績につながった。
大学4年生でピッチングの奥深さを極め、隙なしのピッチングを展開
馬場 皐輔(仙台大)
そして大学ラストイヤー。「色んなコース、いろんな球種を投げられるピッチャーになりたい」と臨み、4年春は2勝2敗、防御率0.33と好成績を挙げた馬場だったが、「まだ使えるコースが少ない」と反省。現在、使える球種は、カットボール、縦横2種類のスライダー、カーブ、スプリット、フォーク、チェンジアップ。
カットボール、スライダーは回転数の高さにこだわり、スプリットとフォークはストレートと同じ腕の振りで投げて落とすことに注力に置き、特に磨いてきたチェンジアップは、見せ球として使い、投球の幅を広げた。その結果、4年秋は5勝0敗、防御率0.49、37イニング60奪三振と自己最高のシーズンを送ったが、それでも馬場は「反省すべきところが多い」と満足をしていない。
それでも春から良くなった点として、「まだ完璧ではないですが、甘いコースには投げてないですし、それなりの組み立てはできるようになりました。今までに比べてメンタルが強くなり、厳しいコースにも投げられるようになったことがこのような数字に繋がったのだと思います」と手ごたえはつかんでいる。
迎えたドラフト。
「不安な気持ちもありますが、実感がわかずあまりピンと来てないです」というが、この4年間、プロにいくために、計画的な積み上げで、大学球界を代表する剛腕投手へ成長した。
「プロ入りできれば、心と体の準備をして1年目からガツガツといって活躍したいです」
普段は天然キャラと慕われる馬場だが、これまでの歩みを振り返れば、1つ1つのステージをいろいろなことを感じ、課題を見つけながら積み上げた意志の強さ、向上心の強さを感じる。高校、大学で培ったメンタルの強さを貫くことができれば、プロでも代表する速球投手になることだろう。
(インタビュー/文・河嶋 宗一)