Interview

奥川の後を継ぐコントロールピッチャー・荻原吟哉(星稜)が求めるのは「速さ」と「緻密さ」

2020.03.02

 星稜の大エース・奥川恭伸の後を継ぐのは荻原吟哉だ。星稜中時代から全国的な活躍を見せてきた荻原は1年秋から公式戦登板が増え始め、2年夏には甲子園デビューし、2試合12イニングを投げ、2失点の好投を見せた。

 最速141キロながら抜群の制球力とキレのある変化球を投げ分ける好投手・荻原のこれまでの歩みを伺った。

球技全般は何でも得意。投球フォームは野球を始めた時から変わらない

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ガッツポーズをする荻原吟哉(星稜)

 石川県金沢市の隣町である白山市出身の荻原。野球を始めた小学校2年生から投手を始めるほどの才能の高さがあったように、スポーツは何でもできた。サッカー、バスケット、バトミントン、バレーボール、卓球と球技全般はできた。投球フォームは一切いじられたことはない。変化球も覚えようと思えばそれほどすぐに時間をかけずに習得ができた。コントロールについてもそれほど苦しんだことがない、まさにセンス抜群だった。

 星稜中に進むと、同期の知田爽汰がライバルだった。最初は「知田のほうがエースになると思いましたね。体も大きいですし、スピードもありますし、あいつは謙遜しますけど、本当に良い投手でした」

 そんな中でも勝負できるものは、コントロールだった。コントロールに磨きをかけ、活躍を見せ、最速135キロのストレートとキレのある変化球を投げる投手として、全国大会優勝を経験。そしてバッテリーを組んでいた内山壮真とともに中学軟式日本代表を経験。高い期待をかけられ、星稜高へ入学する。

 そして高校に進むと、奥川恭伸(現・東京ヤクルト)の姿に目を奪われる。
「ストレートも速いですし、変化球もよくて、コントロールもよい。マウンドに立った時の立ち居振る舞いも素晴らしいですし、気配り、目配り。すべてが素晴らしい方でした」と絶賛する。その中で奥川から投球についての考え方を学び、それを自分のものとしていく。高校でも引き続き「コントロール」を磨きにかけてきた。

 1年秋から登板機会が増え、明治神宮大会では準決勝、決勝の2試合に登板した。初めての全国舞台のマウンドは良い面と悪い面も見つかった大会だった。
「初めて全国舞台で緊張しましたが、決勝戦では決勝点を与えてしまい、3年生を優勝に導けなかったのは悔しかったですし、改めて自分の実力を考え直す機会となりました」

 その後、体づくりを行いながら、ボール1個分のコントロールを求め、そしてツーシームを磨きをかけ、レベルアップに取り組んだ。そんな荻原が日の目を浴びるようになったのは2年春以降である。センバツでは登板がなかったが、センバツ後の県大会ではエースの奥川が登板回避。決勝戦の日本航空石川戦では6.2回を投げ、2失点の力投を見せ、優勝に貢献した。

「この期間はいろいろ試すことができて、自分の高校人生の中で大きな大会でした」と振り返る。

[page_break:甲子園で活躍も、神宮大会で感じた実力不足]

甲子園で活躍も、神宮大会で感じた実力不足

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荻原吟哉(星稜)

 そして荻原の存在が最もクローズアップされたのが夏の甲子園だ。真夏の甲子園となれば、当然、奥川1人だけでは勝ち抜けない。そこで安定感抜群の荻原が託された。試合中、冷静な表情を見せていた荻原だが、内心は「かなり緊張していましたね。マウンドに立つ前はやばかったです」と本音を打ち明ける。しかしマウンドに立てば自然と落ち着くことができた。また奥川を次の試合で投げてもらいたいためには絶対に負けられなかった。

 気迫を込めて投げた荻原は立命館宇治戦では5回無失点の好投。続いて準々決勝の仙台育英戦でも先発の機会が巡ってきた。

 ここまで圧倒的な打力を見せて勝ち上がってきた仙台育英打線について、「全く隙がないチームだなと思いました」と警戒していた。だが、これまでずっと磨きをかけてきたツーシームがはまり7回2失点の好投。

 全国舞台でも活躍を見せ、大きく評価を上げた。そして2年秋は背番号「1」として、北信越大会優勝に貢献。再び明治神宮大会出場を決めたのだった。しかし明治神宮大会の明徳義塾戦では6回5失点と悔しい結果に終わった。この大会で課題となったのは「ストレートの力強さ」だ。

「今までストレートではなく、変化球に頼りすぎることが多かったので、改めてこの冬はもう一度、ストレートを磨きなおしてきました」

 そのためスクワット、走り込み、ウエイトトレーニングなど増やし、ストレートの強化に努めてきた。求めるストレートの球速は「常時140キロ台・最速140キロ後半」だ。ストレートのスピードがすべてではないが、「神宮大会と同じ球威、球速だったら、同じ結果になると思います」とストレート強化のために研究は怠らない。

 林和成監督は「球速を求めると、彼本来の良さであるバランス、制球力が失われる危険性もあるので、本来の長所と球速を伸ばしていければ理想的です」と、持ち味を失わず、スピードアップを期待する。

 これまでの経験の積み重ねを発揮し、エースとして臨む全国舞台で躍動する。

(記事=河嶋 宗一

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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