浦和学院vs明秀日立
想定通りの乱戦。浦和学院の恐怖の2番が5打点の活躍で明秀日立を破り4強!
3安打目を打つ伊丹一博(浦和学院)
<春季関東地区高校野球大会:浦和学院9-7明秀日立>◇24日◇準々決勝◇[stadium]栃木県総合運動公園[/stadium]
明秀日立(茨城)vs浦和学院(埼玉)の一戦は乱打戦の末、浦和学院が勝利した。
(試合経過はこちら)
センバツに出場し、今年の世代では関東地区をリードするチーム同士の対決とあって、スタンドは多くの観客で埋まった。この試合、両校にとっては夏へ向けて意味がある試合になる。お互いの勝ち上がりを見ても、実力差を見せつけて勝ち上がっている。自分たちのペースで試合運びができた。だが、実力が拮抗しているからこそ、思いもよらない展開が起こる。
それは浦和学院・森監督も覚悟していた。
「好投手同士の対戦は投手が実力を発揮して、投手戦になるか。大味の試合展開になるか。どちらかになることが多いんです。点を取られることは覚悟していた」
まさにそんな試合運びだった。
先発マウンドにたったのは宮城 誇南投手(3年)。センバツ後は、トレーニングを積み、夏に通用する球速アップに励んできた。立ち上がりから140キロを計測するなど、明らかに威力はアップしている。
関東大会出場投手の中では別格の投手であるが、どうもコントロールがまとまらない。
1回表、明秀日立の5番小久保 快栄内野手(3年)に右前適時打を許して1点を失い、さらに2回表にも本坊 匠外野手(3年)の適時打で1点を失い、3回にも1点を取られた。
森監督はここまでの失点内容はある程度覚悟していた。
「明秀日立さんの打線にしっかりとストレートを弾き返されていましたし、球速が速くなるとそれに頼ってしまうところがあります。それも含めてまだ成長過程なので」
と今後の投球でさらに精度を高めることを期待していた。ただ、5回表、宮城の悪送球から2点を許してしまい、同点となった。森監督も打たれたことよりも、ミスによる失点について反省を促していた。
対照的に、打線は明秀日立の猪俣 駿太投手(3年)、石川ケニー投手(3年)から9得点を奪った。特に2番・伊丹 一博外野手(3年)は、3安打5打点の活躍を見せた。伊丹は「次につなぐつもりで打席に立ちました」と振り返ったが、甘く入れば、確実にヒット、長打にできる強打の2番打者がいるのは、相手にとって怖い存在だ。
その後は金田 優太内野手(3年)、鍋倉 和弘内野手(3年)、高山 維月捕手(3年)と強打者が続く、この打線は強力だ。9回は2点差まで迫られたが、なんとか凌いで、2017年以来となる5年ぶりのベスト4進出が決まった。
次の相手は山梨学院と、関東大会準決勝以来の対決だ。
リベンジを果たすべく、自慢の強打を発揮する。
圧倒的なチーム、投手になるために…。明秀日立にとっては必要な「一敗」になるか
適時三塁打を打つ猪俣駿太(明秀日立)
<春季関東地区高校野球大会:浦和学院9-7明秀日立>◇24日◇準々決勝◇[stadium]栃木県総合運動公園[/stadium]
ここまで圧倒的な戦いを見せて勝ち上がった明秀日立は、夏へ向けてさらに強いチームになるために、公式戦で簡単に勝てない強豪校との対戦を待ち望んでいた。金沢監督は浦和学院のチーム力を「大阪桐蔭に匹敵するチーム」と表する。
それでも7得点を奪い、強力な浦和学院投手陣にしっかりと食い下がる攻撃は見事だった。能力が高いだけではなく、投手のタイプによって打席の立ち位置を思い切り変えていた。浦和学院の宮城 誇南投手(3年)がインコースに投げにくいよう、右打者はホーム寄りに立ち、外角に狙い球を絞った。
センバツのようにアウトローを精密にコントロールできる状態であれば、打ち崩すのは難しかっただろう。それでもコントロールに苦しむ宮城にとっては有効な戦法だった。1回表には小久保快栄内野手(3年)の適時打、2回表には本坊 匠外野手(3年)の適時打で2点を先制。さらに、その後、守備のミスが絡んで同点に追いつき、宮城から7安打を放った。
さらに6回から登板した金田 優太投手(3年)からは9回表、猪俣 駿太投手(3年)の適時三塁打に、その後、内野ゴロで1点を返し、7対9と2点差に迫った。2死から代打・徳留 亨(2年)が左越え二塁打を放つなど、強打ぶりは発揮した。石川 ケニー主将(3年)は「点が取れたことは良かったと思います。浦和学院は打撃だけではなく、バントでは決めるところでしっかりと決めて、エンドランを仕掛けてきた。甘い球は確実に仕留めるなど、攻撃が多彩で、さすが甲子園ベスト4と思わせるチームでした。自分たちもああいう野球を学んでいきたいです」と振り返った。
ここまで圧巻の投球をしていたエースの猪俣は6回途中8失点でマウンドを降りた。立ち上がりの1回こそ、140キロの速球に、切れのあるスライダー、カーブを投げ分け、三者凡退に抑える上々の滑り出しだったが、2回以降に崩れた。猪俣は「1回が良い形だったので、行けると思って過信した攻めをしてしまいました。今までで最悪な投球です。甘いところをすべて打たれました」
この春の猪俣はかなり成長を見せていた。自己最速の143キロをマークし、さらに速球、変化球の制球力も向上し、ストライク先行の投球には風格があった。自分の思い通りの投球ができない相手と対戦することはさらに成長させるきっかけになる。猪俣にとっては「必要」な一敗だったかもしれない。
石川はこの負けを肯定的に捉えていた。
「浦和学院さんがやられていた野球を自分たちも実践し、夏は圧倒して甲子園に行きたいです」
初の夏の甲子園出場実現へさらなるレベルアップを誓った。
(記事:河嶋 宗一)