試合レポート

花咲徳栄vs武蔵越生

2017.07.18

快勝も花咲徳栄に突き付けられた二つの課題

 最終的に快勝した花咲徳栄だが、この試合二つの課題が浮き彫りになった。

 3連覇を目指すAシード・花咲徳栄対3試合連続二けた得点と勢いに乗る武蔵越生との一戦、先発は武蔵越生がエース双木温斗(3年)、一方の花咲徳栄もMAX149kmを誇るエース清水達也(3年)が先発し試合が始まる。

 最初にチャンスを掴んだのは、今大会の勢いそのままにこの試合に臨んだ武蔵越生であった。初回清水の立ち上がりを攻めたて、先頭の山岸力(3年)がレフト前ヒットで出塁すると、続く清水紘幸(3年)がきっちりと送り一死二塁とする。さらに、3番・佐藤直樹(2年)が四球を選び一死一、二塁とチャンスを広げるが、頼みの4番・伊藤大地(3年)は三振、さらに続く中村藍人(2年)の所で二走・山岸が三盗を試みるが、ここはキャッチャー須永光(3年)に刺され無得点に終わる。

 先制したのは花咲徳栄であった。3回表、この回先頭の小川恩(3年)がレフト前ヒットで出塁すると、一死後、9番・岩瀬誠良(3年)が右中間へ二塁打を放ち一死二、三塁とする。ここで続く太刀岡蓮(3年)がセンター前タイムリーを放ちまず1点、さらに2番・千丸剛(3年)もセンターへ犠飛を放つなど、2点を先制する。

 花咲徳栄は4回表もこの回先頭の須永のヒットを皮切りに無死一、二塁と追加点のチャンスを迎えるが、一死後8番・清水が併殺に倒れるなど無得点に終わる。

 するとその裏、武蔵越生は二死から7番・高橋輝樹(3年)がライト前ヒットを放ち出塁すると、続く千葉響(2年)も三振振り逃げで出塁し二死一、二塁、さらに9番・双木も四球を選び二死満塁とし1番・山岸を迎えるという同点へ願ってもいないチャンスを迎える。だが、頼みの山岸が倒れ無得点に終わる。

 一方、追い詰められややヒヤリとさせられた花咲徳栄は5回表、この回先頭の岩瀬がセンター前ヒットで出塁すると、続く太刀岡も四球を選び無死一、二塁とする。一死後3番・西川愛也(3年)のセカンドゴロでそれぞれ走者が進塁し二死二、三塁とすると、ここで続く野村佑希(2年)がレフト前2点タイムリーを放ち4点差をつける。

 だが、武蔵越生もその裏、この回先頭の清水がレフトへライナー性の打球を放つと、太陽が目に入ったか、レフト西川がこれを後逸し無死三塁と反撃へ絶好のチャンスを掴む。だが、ここは花咲徳栄・清水が踏ん張り一死後4番・伊藤の内野ゴロの間の1点のみに抑える。

 1点を返しやや勢いが戻ってきた武蔵越生は6回表にも一死から代打・長谷川真之(3年)がレフト線へ二塁打を放つと、二死後9番・双木がセンター前へタイムリーを放ち4対2とする。


 一方、2点差に追い上げられ、おしりに火の付いた花咲徳栄は、4巡目を迎えついに双木を捉え始める。先頭の太刀岡がショートへの内野安打で出塁すると、一死後ここから西川、野村、須永とクリーンアップが三連打を放ち、2点を追加すると、続く高井も犠飛を放つなど、結局この回3点を奪い7対2とし試合の大勢は決まった。

 最終回にも西川のランニング本塁打で1点を追加した花咲徳栄は、投げてはピリッとしなかった清水ではあるが、悪いながらも7回を2失点で切り抜け、8回が綱脇慧(3年)、最終回は左腕の中山大陸(3年)が締め8対2で花咲徳栄が勝利し5回戦へ駒を進めた。

 まず武蔵越生だが、戦力差は明らかであるにもかかわらずこの試合最後まで喰らいついていった。エース双木は強打の花咲徳栄打線を相手にしても臆することなく、強気のピッチングを見せた。打線もこの日MAX140km後半の清水に対し、一巡目から鋭い当たりを飛ばすなど全く名前負けせず結局この試合も3投手から9安打を放った。むしろ泉名監督を含め、選手達が時折笑顔を見せるなど楽しそうにプレーしていたのが印象的だった。

 新チーム残るのはレギュラーでは佐藤、中村の2人だけだが、この日は他の2年生メンバーも途中出場し花咲徳栄の力を肌で感じた。これは今後の財産になるはずだ。1年でこれだけ生まれ変わった武蔵越生が今後どこまで伸びるのか。注視していきたい。

 一方の花咲徳栄は最終的には快勝したが今後へ向けて大きく二つの課題が浮き彫りとなった。まず、一つ目はレフト西川の肩の状態だ。肩が治ったからレフトを守っているのかと思われたが、今日の試合でも返球は山なりで不安は残ったままだ。ちなみに、春はファーストを守っていたのだが、おそらく、内野のほうが、ダブルプレーなど素早い返球を求められることが多く、そのリスクを避けたのであろう。だが、西川のバッティングを見ると外すわけにもいかない。肩の状態を見ると、今後も相手チームの的にされてしまうであろう。ウィークポイントは残ったままだ。

 二つ目は現時点で一番良いボールを投げている左腕・中山の使い方だ。もちろん、実績、経験面で清水、綱脇にはかなわないが、花咲徳栄投手陣というと大抵は清水、綱脇の両右腕の名前が挙がる。つまり対戦相手とすると、清水、綱脇のタイプこそ違うが、右投手のどちらかが投げてくると想定して対策を立てることができる。もし、これが昨夏の高橋が対象であれば何も言わないが、清水、綱脇はこの日も共にピリッとせず、まだそこまで絶対的な存在には成りえていない。

 そんな時に左腕・中山である。これは提案でもあるが、例えば彼を清水、綱脇の間、二番手として短いイニングを投げることで相手の目先を変えられることができる。場合によっては中山を先発に送る奇襲を使えば、次の相手は対策が絞りにくくなる。現状、今期は打のチームである花咲徳栄にとって、失点を1点でも減らすべく今後彼の使い方がポイントになるのではなかろうか。

(文=南 英博

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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