試合レポート

関西学院vs西宮北

2012.07.21

胸を張って!

「お前らはよくやった。今日はノーエラーやったやないか。相手の“E”の所には“2”という数字があったけれど、お前らは“0”やった。ミスはしていない。しっかり自分の力を出し切れたんやから、胸を張れ!」

試合後、球場外で行われた最後のミーティングで、西宮北の辻克樹監督はナインを前にそう語りかけた。
スコアは0対4。結果だけを見れば、単なる完封試合に過ぎないかもしれないが、内容は決して一方的ではなかった。

1回からいきなり満塁のピンチを背負い、関西学院の波にのまれそうにもなった。
それでも、先発のエース・喜久田賢哉(3年)が内野ゴロに仕留めてピンチを脱した。以降、中盤まで1安打に抑える力投。「今まで何度もピンチを背負ってなげてきていたので、今日も今までどおりの気持ちで投げました」とエースは振り返った。

だが、ここまでの3試合を1人で投げてきた喜久田の疲労は決してゼロだったわけではない。
本来はマウンドを分け合うはずだった控え投手の岡田弘明(3年)が6月の練習試合で左足首のじん帯を断裂。緊急事態に陥ったチームの窮地を救うために、1人で奮闘してきた。

しかも相手の関西学院は、今春の県大会出場を争う西阪神支部大会の決勝戦で敗れている。
だからこそ、負けたくない。喜久田の気持ちはただそれだけだった。


だが、第二の立ち上がりとも言われる6回表。関西学院の先頭打者・八木亮介(3年)に甘く入ったストレートをライトに打ち返され、ランニングホームランを許してしまう。
「それでも1本打たれただけなので、何とか気持ちを切り替えようと思ったのですが…」と喜久田。

以降、気持ちのブレが生じたのか、走者を背負う場面が増えていく。
そして7回には3本の長打を浴び、2点を許してしまった。
「自分がもっとピンチで踏ん張れたら…。終盤に腰の調子が思わしくなくて、球が浮いてしまいました。チームのみんなに申し訳ないです」と、エースは涙をこぼした。

それでも、持てる力を振り絞ったエースの力投に応えようと、野手も堅守で盛り立てた。
「地区(支部)大会決勝で関西学院と対戦したときは、ミスで負けてしまったけれど、今日はミスなんてなかった。春の負け以降、練習では特に3年生には色々厳しいことを言ってきたけれど、全員よくやってくれました。この子らを私は誇りに思います」と選手たちを讃えた辻監督。

結果はどうであれ、春の教訓を見事に生かした試合だった。

スターティングメンバー
関西学院】 (主将)鈴木太陽
5江川遼治
7辻本岳史
8八木亮介
9久保雄太郎
3中田盛太
2外山玲
6上田星
4安達勇太
1木村聡志

西宮北
2平田滉一郎
4福岡昴志 
1喜久田賢哉
6山岡昌平 (主将)
5宮本大輔 
8前山梨緒
9米満宥太
3奥薗信人
7田中純平

(文=沢井史)

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

関連記事

応援メッセージを投稿

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

RANKING

人気記事

2024.05.16

【宮城】仙台一、東北、柴田、東陵がコールド発進<春季県大会>

2024.05.16

涙の甲子園デビューから大きくレベルアップ!前橋商の192センチの剛腕・清水大暉は、高速スプリットで群馬県大会19回1失点、22奪三振の快投!<高校野球ドットコム注目選手ファイル・ コム注>

2024.05.16

【2024年春季地区大会最新状況】全道大会は出場校決定、関東と東海は18日に開幕

2024.05.16

U-18代表候補・西尾海純(長崎日大)、甲子園で活躍する幼馴染にむき出しのライバル心「髙尾響には負けたくない」

2024.05.16

【秋田】夏のシードをかけた3回戦がスタート、16日は大館鳳鳴などが挑む<春季大会>

2024.05.15

【全国各地区春季大会組み合わせ一覧】新戦力が台頭するチームはどこだ!? 新基準バットの及ぼす影響は?

2024.05.13

【24年夏全国地方大会シード校一覧】現在29地区が決定、愛媛の第1シードは松山商

2024.05.14

大阪体育大の新入生に兵庫大会8強の145キロ右腕、金光大阪の1番センター、近大附の4番打者など関西地区の主力が入部!

2024.05.16

【宮城】仙台一、東北、柴田、東陵がコールド発進<春季県大会>

2024.05.12

学法石川の好捕手・大栄利哉が交流戦で復帰! 実力は攻守ともに世代トップクラス!身長200センチ右腕を攻略し、完封勝利!

2024.04.21

【愛知】愛工大名電が東邦に敗れ、夏ノーシードに!シード校が決定<春季大会>

2024.04.29

【福島】東日本国際大昌平、磐城、会津北嶺、会津学鳳が県大会切符<春季県大会支部予選>

2024.04.22

【春季愛知県大会】中部大春日丘がビッグイニングで流れを引き寄せ、豊橋中央を退ける

2024.04.22

【鳥取】昨年秋と同じく、米子松蔭と鳥取城北が決勝へ<春季県大会>

2024.04.23

【大学野球部24年度新入生一覧】甲子園のスター、ドラフト候補、プロを選ばなかった高校日本代表はどの大学に入った?