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興南、沖縄尚学の2強以外の新興私学も台頭!沖縄県の2022年を総括

2022.12.28

興南、沖縄尚学の2強以外の新興私学も台頭!沖縄県の2022年を総括 | 高校野球ドットコム
ウェルネス・富村

 沖縄県高校野球3大ニュースでも触れたように、連合チーム初のベスト8に始まった春に沖縄水産が25年ぶりの制覇。その後、興南の選手権沖縄大会と新人中央大会制覇、沖縄尚学の秋季県大会と九州制覇、エナジックの1年生中央大会優勝で幕を閉じた2022年沖縄県の高校野球を総括してみたい。

コロナに悩まされた具志川商、興南、宜野座

 ひと冬越した春、沖縄県高校野球春季大会がもうすぐ開幕というところで悲報が襲う。3月20日の大会初日に登場する予定だった具志川商が部員のコロナ感染により出場辞退。それから数日後、昨年の沖縄県高校野球秋季大会を制覇していた第1シードの興南が部員のコロナ感染により同じく出場辞退を申し出てきた。当該野球部はもちろん、野球関係者やファンも涙を飲むまさかの出来事となった。

 具志川商興南2校の衝撃を受け止めた県内各チーム。感染しないようにと細心の注意を払いながら迎えた3年生最後の夏。1回戦全チームが無事に試合を終え、さぁ2回戦と意気込むところで、宜野座が凶報に見舞われる。「諦めないで」。3年生にとって本当に最後の大会。沖縄県高校野球連盟の先生たちも、宮城 岳幸監督に対し最低9人になっても良いから、感染していないメンバーで出場することを打診。監督はじめ、3年生、2年生、1年生が懸命にかからないように注意していたが、1日立ち、また1日とPCR検査で陽性が確認された。ついに9人を割ってしまい、泣く泣く出場辞退。3年生が途方に暮れてしまったが、宮城 岳幸監督は別のことを考えていた。「お前たちをこのままでは終わらせない。とにかくバットを振っておけ!」と指示。今まで1度も嘘をついたことのない指揮官の言葉に戸惑いながらも、素直にバットを振り続けた3年生たちに、選手権沖縄大会が終わって数日後、吉報が届く。春の大会で同じく悔しい思いをした具志川商が名乗りを上げた。そう、引退試合である。

 当初は宜野座が2回戦で当たる予定だった興南との引退試合を考えていたが、それはあくまで優勝を逃した場合のみ。そのあとでも、具志川商が手を挙げてくれたことが嬉しかった。会場は地元の[stadium]かりゆしホテルズボールパーク宜野座球場[/stadium]に決まった。

 当日はもちろん村内の方々が大勢スタンドに駆け付け、県内テレビ、新聞も取材に来た。宜野座のメンバーは全て3年生だけで臨んだ。スコアは8対8、両軍ヒットの数まで8本ずつと、天の神様が用意したかのような数字が並び9回引き分け。勝つことはできなかったが、同じくコロナで悩んだ具志川商ナインとガチンコ勝負できたのが嬉しかった。最後は両軍並んで写真に収まるなど、清々しい引退試合となった。

[page_break:私学校の活躍が光った2022年]

私学校の活躍が光った2022年

 沖縄県の有名私学と言えば、選抜高校野球大会で2度の優勝を誇る沖縄尚学と、史上6校目の甲子園春夏連覇を達成した興南の2強。その2強の牙城を崩そうと、私学3校が凌ぎを削った。

 未来沖縄は、夏の沖縄大会で春に大敗した第1シード沖縄水産を2回戦で迎える。初回、大城 元投手(巨人育成7位)の安打を足掛かりに先制すると6回、7回には下位打線で加点。見事4対2で下すと、糸満与勝に勝ち準決勝へ。興南相手に奮戦する未来沖縄は、先発した興南生盛 亜勇太投手(3年)に、4回から登板した大城が闘志むき出しの好ピッチング。2対2のまま迎えた9回裏、大城の二塁打などで無死二、三塁とサヨナラの好機を得た。
 名門を、生盛を追い詰めた未来沖縄だったが、そこから生盛が圧巻の三者連続三振斬り。延長12回で敗れてしまったが、王者を一番苦しめた未来沖縄の健闘が光った夏であった。

 沖縄県高校野球秋季大会で活躍したのが日本ウェルネス沖縄だ。2回戦の八重山との戦いを24対7と衝撃的なスコアで飾ると、宮古エナジック糸満を破り初の決勝進出。もちろん九州地区高校野球大会初出場となった。

 その九州地区大会では初戦で、甲子園制覇の経験もある佐賀北(佐賀)と対戦。日本ウェルネス沖縄は1回裏、佐賀北エース宮副 愁司投手(2年)から3点を奪う好スタート。投げては上原 律己投手(2年)が6回まで佐賀北打線を4安打無失点に抑える力投。打線は4回、7回、8回にも加点し6対2で快勝。見事初出場初勝利を手にしたのだった。

 トリを飾るのはエナジック。1期生の1年生だけで夏の大会に出場。3年振りに開催された新人中央大会にも出場。秋はベスト8まで駆け上がった1年生軍団に怖いものは無かった。

 1年生中央大会出場は当たり前とばかりに、北部地区大会を全勝で通過。迎えた中央大会初戦、八重山を9対1のコールドで下すと準々決勝の具志川商戦は9回に追い付かれ初めてのタイブレーク。しかし2番、3番に連続長短打が出るなど、大量5点を奪い勝利を収めた。続く準決勝は興南。初めて対戦する名門にも臆することなく戦うエナジックは、主砲・龍山 暖が経験豊富な興南の時期エース・田崎 颯士投手から3安打(内三塁打1本)3打点。6対3で下し決勝へ。ほぼアウェーの[stadium]宜野座球場[/stadium]での決戦も落ち着き払い、3対0で勝利。沖縄県高校野球連盟史上初の、創部1年目で公式戦優勝を飾ったのだった。

(記事:當山 雅通

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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