試合レポート

都立城東vs都立片倉

2022.06.05

東西都立の雄対決、城東はシード校の力を示し、片倉は浮上への期待

都立城東vs都立片倉 | 高校野球ドットコム
本塁打を放って三塁を回る城東・藤森君

<交流戦:城東7-0片倉、片倉10-6城東>◇5日◇片倉高校グラウンド

 夏本番へ向けて、いよいよ1カ月となってきた。これからの練習試合は、個々の調整ということも大事だが、ケガをしないようにということも含めて、しっかりと作っていきたいところであろう。また、ベンチ入りを目指す線上にいる選手としては、個々がそれぞれで結果を残しながらアピールしてベンチ入りを勝ち取りたいという選手も多いはずだ。そういう意味では、一つひとつの試合が大事だということである。

 今春の東京都大会は、夏のシード権を得られるベスト16に残ったのは、私立校が14で、都立校としては東東京の小山台と城東だけだった。この両校は、やはり近年の東京都では安定した実績を上げている都立の実力校である。これに対して、西東京の実力校と言われている都立校は日野と片倉が双璧だが、この春は共に都大会では勝ちきれずシード権は逃してしまっている。それでも、片倉ではジョンソン・マーカス太一投手(3年)が注目を浴び、やはりその存在は気になるところであろう。

 そんな東西の東京の都立校の実力校対決である。

 夏の本番1カ月前という今の状況で、どんな試合を展開してくれるのかという興味もあった。ただ、片倉の宮本秀樹監督は、「豊富な投手陣のはずだったんだけれどもねぇ、ここへきてなんだか故障者が多くて、一体誰が投げられるんだよ…? というような状況になってきちゃったんだよね。まあ、無理もさせられないし」ということで、いろいろ試しながら状況を見ているというところのようでもあった。

 とは言いつつも、この日の最初の試合は、現状でのお互いのほぼベストメンバーと言っていいであろうか。片倉はジョンソン、そして城東北誠 四郎投手(3年)が先発。

 城東は、先頭の藤森 晴久外野手(2年)がファウルで粘ってジョンソンにいきなり9球を投げさせた上に四球で出塁すると、続く渡邊 匠内野手(3年)が中前安打後、重盗で二、三塁と攻め立てる。さらに四球もあって、1死満塁となったところで、5番北が右犠飛で先制。しかし、それでもジョンソンも1失点止まりで抑えた。2回は3人で抑えたので立ち直っていくのかなと思われたが、3回、いきなり先頭の藤森が左越え本塁打。これで立ち直りかけていたジョンソンはまたリズムを崩した。


都立城東vs都立片倉 | 高校野球ドットコム
5回を投げたジョンソン君だったが6失点を喫した

 続く渡邉が二塁打し四球後、4番佐久間 飛向外野手(3年)が右中間三塁打。さらに内野ゴロで佐久間も生還してこの回4点。城東の上位打線は、スイングの思い切りもよく打球も鋭い。内田稔監督は、「いや、たまたまタイミングが合っただけですよ」と謙遜するが、各打者がかなり振り込んでいるなと言う印象ではあった。

 城東打線のスイングの強さは、内田監督が現役時代の21年前に甲子園出場を果たした時にもそうだったけれども、甘い球を逃さないでしっかりと振り切っていくという思い切りの良さがある。そのあたりはしっかりと受け継がれていっていて、もはや城東の伝統と言ってもいいくらいではないだろうか。

 このリードを城東は、北が5イニング、リリーフした峯岸叶投手(3年)が4イニングをそれぞれ0に抑えて7対0というスコアで片倉を圧倒した。峯岸は、3四死球こそ与えたものの、4イニングを無安打に抑えていた。球が速くて、やや投球が荒れ気味だったということもあって、それが却って片倉打線が絞り切れなかったというところもあったのかもしれない。城東としては比較的制球のいい北→球速のある峯岸という継投が勝ちパターンとなっていきそうである。

 2試合目の城東は、この日は1人だけ連れてきたという1年生の篠原 康紀投手が先発。「どれだけ投げられるかわかりませんが、自分も楽しみです」と、内田監督も期待していた様子だったが、4イニングを4安打1四球1失点という内容は、まずまず合格点と言ったところだろうか。こういう選手が出てくるあたりにも、何だかんだ言いつつも城東の層の厚さと言っていいであろう。さらには、この日もさらに別働で2チームがそれぞれ動いており、試合をこなしているという。そうした中からも、また台頭してくる選手もあるであろう。


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城東・篠原康紀君

 篠原が粘って踏ん張っている間に、城東は片倉投手の連続四球押し出しなどもあって4点を奪う。しかし、「2つ負けるわけにはいかない」という思いの片倉は、後半には意地を見せて、6回に2人目となった本来は内野手の松山虎士朗(2年)から湯地詠斗外野手(2年)の二塁打や野島昂太内野手(3年)の犠飛で2点を返す。さらに、7回には3人目としてマウンドに登っていた藤森に対して2死走者なしから満塁として、4番藤井 亜郎内野手(2年)が一掃の二塁打を放って逆転した。

 こうなってくると、スコアも競り合ってきて、お互いに負けたくない思いも強くなり、8回に城東も2死走者なしから藤森が二塁打して、2つの暴投で本塁へかえってきた。

 こうして、6対6の同点のまま9回となったが、片倉は途中から2番に入っていた麻野 凛空内野手(3年)の本塁打で勢いづいて、相手の暴投失策などもあって、さらに3点を追加した。

 そして、「どうなるかわからない」という思いで送り出した佐藤 陽大投手が四死球は与えたものの、何とか抑えて逃げ切った。

 片倉としては、苦しい投手事情だというが、3人目として投げた左腕高岡 大投手(3年)が、故障で欠場していたのだが前日の試合から復帰して、この日は2イニングという限定の中で、4三振を奪う好投。安定感があるだけに、宮本監督としても、「ちょっとは光明が射してきたかな」と言うところのようではあるが、これからの1カ月は、調子を崩していた選手や故障していた選手を戻しながらの調整ということになりそうだ。

 城東は、上位打線の強さと個々の質の高さはさすがだと言っていいであろう。やはり、シード権を得るだけの存在である。夏の組み合わせ次第では、上位へ進出していく可能性も十分に秘めていそうだ。

(記事:手束 仁

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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