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大阪桐蔭が春夏連覇を達成した2012年 センバツでは森友哉と関東一の2年生右腕が躍動

2022.02.26

大阪桐蔭が春夏連覇を達成した2012年 センバツでは森友哉と関東一の2年生右腕が躍動 | 高校野球ドットコム第94回選抜大会のトーナメント表
浦和学院、敦賀気比などが属するブロック
大阪桐蔭、花巻東などが属するブロック
ベスト8以上の組み合わせ

大阪桐蔭が春夏連覇を達成した2012年 センバツでは森友哉と関東一の2年生右腕が躍動 | 高校野球ドットコム関連記事
根尾、藤原、小園など新2年生が輝いた2017年センバツ、将来NPB支える逸材が登場

 第94回選抜高校野球大会が3月18日に開幕する。多くの選手に注目が集まる中、この春から新たに2年生となる選手たちをクローズアップ。ここ10年のセンバツで印象的だった新2年生の活躍をプレイバックしてみる。

ビッグ対決の裏で、2年生捕手が攻守で活躍

大阪桐蔭が春夏連覇を達成した2012年 センバツでは森友哉と関東一の2年生右腕が躍動 | 高校野球ドットコム
森 友哉(大阪桐蔭)

 それにしても…。クジのいたずらというのはあるものだ。

 2012年の第84回選抜高校野球大会は初日、大谷 翔平投手(現エンゼルス)の放った1発で幕を開ける。マウンドには、藤浪 晋太郎投手(現阪神)。そう、この大会、第1日第3試合では、藤浪の大阪桐蔭(大阪)、大谷の花巻東(岩手)が激突したのだ。大会前から大注目だった2人の「ダルビッシュ2世」(最近とんと見かけなくなった表現。当時は、長身の速球派投手が現れると「○○のダルビッシュ」などと形容されたものだ)が、よりによって初日に対戦するのだ。大相撲なら、千秋楽結びの一番に見たい垂涎のカードである。

 2回裏、花巻東の先制点をたたき出したのが大谷のバットだった。藤浪の、内に落ちる変化球をライトスタンドへ。だが大阪桐蔭打線は、大谷の制球難につけこみ、7安打7四球で9対2と快勝する。この試合、大阪桐蔭の一番を打ち、3打数2安打とチャンスメイクしたのが、2年生捕手の森 友哉(現西武)だった。

 とはいえ、2年生とは思えない。前年秋の公式戦打率.571は出場32チーム中2位、3本塁打は5位タイ。なにしろ、打ち損じがほとんどないのだ。西谷 浩一監督によると、
「単なるミート力じゃなくて、球を確実にとらえる率が高い。OBと比べても遜色ない、というか森のほうが断然上です」
 それが、大谷からの2安打(ついでに、四死球も2)の裏づけだ。森は続く九州学院(熊本)との2回戦でも4打数1安打、中軸のケガで三番に座った浦和学院(埼玉)との準々決勝では4打数3安打とヒットを連ねている。この試合では、1対1と同点に追いついた直後、7回裏に無死満塁のピンチを迎えたが、ここは藤浪を強気にリードし、気迫の三者三振に導いた。捕手としての高い資質を見せたのは、準決勝の健大高崎(群馬)戦も同様。そこまでの3試合で計16盗塁している相手は、2回1死から二盗を仕掛けてきた。森はこれを持ち前の強肩で刺すと、さしもの「機動破壊」もその後、まるで動けなくなったのだ。

 この試合の森は同点に追いつかれたあとの8回、先頭打者として左中間に甲子園初ホームランを記録。これが決勝点になるのだが、
「出塁して、まず1点と思っていました。ホームランより、盗塁阻止のほうがうれしい。変化球のカウントで走ってくると分析し、練習してきましたので」

 詳しく聞くと、投手にワンバウンドの変化球を投げてもらい、それを二塁送球する練習を繰り返したのだとか。決勝の相手は、光星学院(現八戸学院光星=青森)。森はここでも「守りでチームを引っ張る」と決めていた。3回、一時同点に追いつかれるとマウンドの藤浪に駆け寄り、「変化球を投げるとき、ヒジが下がっています。低めを狙っていきましょう」とエースをもり立て、5回には好守で走者の本塁生還を阻止している。

 大阪桐蔭がセンバツ初優勝を決めたこの試合こそ無安打だったが、森は5試合18打数8安打、1本塁打。この後も3回甲子園に出場し、通算打率.473、5本塁打だから、「5打数4安打でも、よく打ったという感じにはならない。なんで1打席は打てんかったんや…ってなるんです」という西谷監督の話も、冗談には聞こえなかった。

[page_break:直球がホップする2年生右腕が3試合連続完投]

直球がホップする2年生右腕が3試合連続完投

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中村 祐太(関東一)

 決勝で敗れた光星学院は、前年夏の決勝も日大三に敗れた。そしてこの12年夏もふたたび大阪桐蔭に敗れて3季連続の準優勝となるのだが、12年センバツで光星学院が準決勝で下した関東一(東京)には、2年生の中村 祐太投手(現広島)がいた。素人目には、なんの変哲もない投手だ。前年秋の最速は、138キロ。東京大会決勝で1安打完封された帝京・前田 三夫監督も「ほとんどまっすぐ。速くはないのに、なぜか力負け」と、首をひねっていたものだ。だが、「まっすぐとわかっていても打者が詰まる」と、関東一・米沢 貴光監督がホレ込むのがその球質だ。

 秋の公式戦防御率1.07は、32校中5位。ほかに奪三振率、被安打率も軒並みトップ5に押し上げた直球は、別府青山(大分)との1回戦でもさえる。5回終了までパーフェクト、13三振を奪って2安打無四球完封だ。智辯学園(奈良)との2回戦も、8安打5四死球を許したものの1失点で完投勝ち。智辯学園・小坂将商監督が地団駄を踏むのとは対照的に、関東一松谷 飛翔捕手はこう証言する。「中村の直球は、最後に5センチ上がる感じなんです」。今の言葉でいえば、ホップ成分が強い、ということか。

 前年夏までは、チームでも目立たない存在だったという。だが、「キャッチボールの時から球を離すときだけ力を入れ、切るイメージで」投げる日々の取り組みが、浮き上がる魔球を生んだのか。かと思うと中1日の準々決勝では、「相手(横浜高・神奈川)打線が、直球を狙っているのがわかったので」と、自ら変化球主体に切り替えて5安打2失点と、対応力も高い。終わってみれば、中学時代にあこがれた横浜高相手に完投勝利を挙げ、センバツで3試合連続完投をやってのけた。

 さすがに先発を回避した光星学院との準決勝は、リリーフして3回3失点とつかまったが、北條 史也内野手(現阪神)の打席で、自己最速を更新する141キロをマーク。冬場の走り込み、筋トレ、ストレッチという「肉体改造分」が、球速アップにつながった。4試合、30回を投げて防御率1.80、23奪三振。ただ森 友哉と違い、「夏にまた帰ってきて、リベンジしたい」との思いは叶わなかったが……。

(文=楊 順行)

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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