打倒・名古屋の私学4強 不気味な存在感がある3校
私学4強と言われている中京大中京、東邦、愛工大名電、享栄をはじめとする名古屋地区の私立校が圧倒的に強い愛知県。それでも、そこに負けまいと公立勢も健闘している。その公立勢から、東西の三河地区と知多地区から各1校をピックアップしてみた。
オールドファンが多い時習館
安田 拓真(時習館)
純白のユニフォームに白い帽子、白のストッキングにアンダーシャツ、胸に漢字で「時習」の文字の伝統のスタイル。第1回の中等学校野球時代から地区大会に参加している県内屈指の伝統校であり、愛知四中~豊橋中の伝統を担う名門校である。県内高校野球の指導者も多く輩出している。一昨秋から林 哲也前監督(現副部長)を引き継いで指揮を執る彦坂 祐志監督もOBである。
伝統的公立の雄として、県内高校野球ファンの間では「時習館ファン」の人も多いが、その人たちからも「今年の時習館は、選手が揃っとるで、面白いぞ」という声が多く上がっている。確かに、旧チームでも昨春から2年生が先発9人中7人も占めるというくらいに、高い能力の選手たちが揃った。
中でも、投打の柱がしっかりと存在しているのも心強い。エース安田 拓真投手(2年)は安定した投球で定評がある。ある程度、球に力もあるだけに、力でねじ伏せようとしていくと、かえってとらえられてしまうところもある。そのあたりの投球の間合いを持田 龍樹捕手(2年)とのインサイドワークでお互いに研究していくことができれば、さらなる飛躍も期待できる。
打線の軸、木戸 脇光外野手(2年)は飛距離もある強打者だが、外野手の間を鋭く抜いていく打球も放てる上手さもある。安田投手とともに、東京六大学で野球を続けていきたいという希望も持っている。また、チームをまとめる主将の片桐 丈太内野手(2年)も好打好守の遊撃手だ。県大会の日本福祉大附戦ではスクイズで得点を重ねるなどきちんとバントを決めることができる手固さも示した。目指していた21世紀枠の推薦は逃したものの今春以降への飛躍へ向けて余念がない。
[page_break:全三河大会を制した西尾東]全三河大会を制した西尾東
第145回全三河大会優勝を果たした西尾東
昨年の秋季県大会後に開催された、第145回全三河大会で東三河の有力私学の桜丘や投手力のいい安城学園、科学技術豊田などを下して2016年春以来、3度目の優勝を果たした。ここ10年の間に県のベスト4以上が4回ある西三河の公立の雄としての位置を築いている。その礎を築いた寺澤 康明監督が異動して、野田 圭佑監督が後任となって、最初の実績と言っていいであろう。夏は、もう一つ空回りしたが、伝統の勝負強さを徐々に取り戻してきたかなという印象である。
「本気で私学の強豪を下すには打ち勝たなくてはいけない」というのがチームとしての考え方でもある。一発のあるパウエル 海投手(2年)や、シュアな牧野 祐大外野手(2年)、神谷 真之将捕手(2年)などの中軸打線は、一冬越えてさらなるパワーアップと確実性の向上が期待される。エースの期待がかかる柘植 大介投手(2年)は決して球威があるというわけではないが、テンポのいい投球で、終始自分のリズムで試合を作ることができる。投手がさらに成長していけば、来季の注目校の一つとなっていくであろう。
昨夏シード権獲得の公立の雄・東浦
神谷 知宏(東浦)
近年、知多地区の雄として確実に力をつけてきていると評価されている。昨春の県大会もベスト8に進出して、公立校で唯一のシード校となって昨夏に挑んだ。昨夏は、初シードということもあってか、初戦となった3回戦から、いくらか硬さがあって、もう一つ満足な結果を得られなかったというところもあった。
それでも、そのチームから神谷 知宏投手(2年)をはじめ、中軸の杉本 凌太郎外野手(2年)と遊撃の夏目 暖人内野手(2年)と攻守の軸が残ったのも大きい。知多地区からのシード校として出場した昨年秋の県大会は、初戦で接戦の末に4対5で豊橋中央に屈してしまったが、その後の第135回全尾張大会では愛知啓成を下すなど、決勝に進出した。こうした実績の積み重ねの一つ一つがチームとしての自信にもなっていくことは、中嶋 勇喜監督はこのチームを育てながらも実感していることである。
「何とか、名古屋の有力私学に勝って、さらにステップアップさせていきたい」ということも、中嶋監督はテーマとして掲げていることでもある。「冬の間の地味な練習を積み上げていくことが、確実に翌年に成果となって現れてくる」ということも実感している。それだけに、一冬越えた東浦の戦いぶりは、注目していきたい。
(文=手束 仁)