Interview

春夏連覇、U18代表…18年大阪桐蔭の正捕手・小泉航平は社会人からプロ入り目指す【後編】

2021.04.12

ボールボーイとして目の当たりにした17年夏の仙台育英戦

春夏連覇、U18代表...18年大阪桐蔭の正捕手・小泉航平は社会人からプロ入り目指す【後編】 | 高校野球ドットコム
小泉 航平(大阪桐蔭出身)

 名将からの教えを受け、経験値も積んだ小泉は3年春に選手として念願の甲子園デビューを果たす。チームはセンバツ連覇を達成するが、チームとしても個人としても戦うごとに成長を実感していたそうだ。

「甲子園は何とも言えない凄いところで、1試合するだけで凄く成長できる場所だなと思いました。1試合、1試合重ねるごとに自信もついてきますし、その自信がプレーにも繋がってくると思います」

 試合での成功体験が自信を生み、自信が新たな成功体験を引き寄せる。こうした好循環でチームは勝利を重ね、成長を続けてきた。特に延長12回サヨナラ勝ちを収めた準決勝の三重戦が最も印象に残っていると話す。

 「準決勝で粘り勝てたのが、その後の大会や甲子園に凄く活きてきたと思います。『後半、後半』と西谷先生は試合中にも仰っていたので、自分たちの野球ができたのがその試合だと思います」

 夏の大阪大会準決勝では1点ビハインドの9回二死走者なしから逆転勝ちを収めたが、それも春に苦しい試合を勝ち切れたことが大きかったという。大舞台で難しい試合をものにしたことが、チームの大きな財産となっていた。

 また、前年のボールボーイの経験が活かされたのが、夏の甲子園3回戦の高岡商戦だった。1年前は3回戦の仙台育英戦で逆転サヨナラ負けを喫していたが、3回戦の第4試合でロースコアの接戦と共通点は多かった。

 同じ時間帯の試合ということもあり、小泉も意識はしていたそうだが、「近くで見て二度とああいう思いはしたくないという強い思いになっていたので、一歩引いて冷静に試合に入れていたと思います」と前年の経験も踏まえながら上手く乗り越えることができた。

 数々の修羅場を潜り抜けた大阪桐蔭は春夏連覇を達成。「今までにない感覚というか、言葉に表せないくらいの感じでした。春夏連覇を目標にやってきたので、最高の形で終われたので、良かったですね」と喜びを噛みしめた。

[page_break:]

吉田輝星、奥川恭伸をリードしたU18での経験

春夏連覇、U18代表...18年大阪桐蔭の正捕手・小泉航平は社会人からプロ入り目指す【後編】 | 高校野球ドットコム
小泉 航平

 夏の甲子園が終わった後にはU-18日本代表に選出され、U-18アジア選手権に出場。代表での活動は短期間だったが、貴重な経験を積むことができたと小泉は話す。

 「短期スパンで色んなピッチャーの特徴を覚えて、良いところを引き出さないといけないので、そういうところでは凄く勉強になりましたし、他の国の選手たちとも対戦出来て、色んな戦い方や野球が学べたかなと思います」

 代表でバッテリーを組んだ投手の中には後にプロへ進んだ選手もいる。その一人が金足農吉田 輝星(現・日本ハム)だ。夏の甲子園決勝で対戦した時は本調子ではなかったが、「受けてみると、改めて凄い球だと思いました。繊細な投げ分けができることもその時に感じました」とバッテリーを組むことで、能力の高さを実感した。さらに明るく、人懐っこい性格だったこともあり、コミュニケーションは取りやすかったという。

 また、2年生で唯一代表入りしていたのが、星稜奥川 恭伸(現・ヤクルト)だ。2年秋から世代トップのパフォーマンスを見せていた奥川だが、「初めてブルペンに入った時にスライダーや真っすぐのキレが一つ下とは思えないくらい良かったです。スライダーはなかなか初見ではとるのが難しいくらいのキレがあったので、凄く良いピッチャーだなと思いました」と当時から小泉が驚くほどのボールを投げていた。それ故にその後の奥川の活躍を見ても全く驚かなかったそうだ。

 大阪桐蔭で濃密な3年間を過ごした小泉は、「プロの世界で活躍するために社会人でもっと技術を磨きたい」とNTT西日本に進むことを決めた。自らの実力に自信を持って入社したが、1年目は社会人のレベルの高さを痛感する1年となった。

 「全てにおいて技術不足だと感じましたけど、1年目はそういった意味でもいい期間だったと思います。肩にも自信はあったんですけど、いつもだったらアウトになっていただろうなという球でも走塁の上手さでセーフになったりしていましたね」

 入社早々から壁にぶつかったが、田中 孝宗コーチのマンツーマン指導で少しずつ改善を重ねていった。中でも力を入れてきたのはキャッチング面だ。

 「スローイングも全てはキャッチングから繋がっていますし、良いところで捕れないと握り替えミスもします。ワンバウンドを止めるのもキャッチングの構えが固まってしまうと反応も遅れます。よく(大原周作)監督や田中コーチに教えてもらっているのは掌で捕ると握り替えがスムーズになるということです。網で捕ってしまうと、どうしても手の感覚のないところで捕ってしまうので、掌で捕ることが大切だと思います」

 2年間、地道に力を蓄えてきた小泉が今年の目標に掲げているのが正捕手定着だ。昨年までは同期入社で大卒の辻本 勇樹にスタメンマスクを譲ることが多かったが、今年はその座を奪いに行くつもりでいる。

 「今年は自分の中で勝負の年です。2年間、先を見ずに地道にやってきたことを、この1年で結果として求めていかないといけないので、正捕手目指してやっていきます。まずはここで試合に出て、結果も残したい。もちろんプロに行くためにというのは常に考えています」

 鍛錬の期間を経て、飛躍の時が近づこうとしている小泉。社会人の舞台で輝きを放つ日もそう遠くはなさそうだ。

(記事=馬場 遼

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

関連記事

応援メッセージを投稿

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

RANKING

人気記事

2024.04.30

【春季栃木県大会】夏への布石が着々と成果を挙げた! 文星芸大附が堅い守備で完封勝利!ドラフト候補・堀江は最速146キロをマーク

2024.04.30

大阪大などに卒業生を輩出する進学校・三国丘  文武両道を地で行く公立校は打倒・強豪私学へ「何かしてやりたい」

2024.04.30

【岩手】宮古、高田、久慈、久慈東が県大会出場へ<春季地区予選>

2024.04.30

【北海道】昨秋優勝の旭川実と春季連覇中の旭川明成が初戦で激突!<春季全道大会支部予選組み合わせ>

2024.04.30

【春季愛知県大会】享栄がまとまりの良さを見せて、豊川に完封勝利で決勝進出

2024.04.29

【全国各地区春季大会組み合わせ一覧】新戦力が台頭するチームはどこだ!? 新基準バットの及ぼす影響は?

2024.04.26

今週末に慶應vs.横浜など好カード目白押し!春季神奈川大会準々決勝 「絶対見逃せない注目選手たち」!

2024.04.26

古豪・仙台商が41年ぶりの聖地目指す! 「仙台育英撃破」を見て入部した”黄金世代”が最上級生に【野球部訪問】

2024.04.28

【広島】広陵、崇徳、尾道、山陽などが8強入りし夏のシード獲得、広島商は夏ノーシード<春季県大会>

2024.04.28

【岡山】関西が創志学園に0封勝ちして4強入り<春季県大会>

2024.04.23

【大学野球部24年度新入生一覧】甲子園のスター、ドラフト候補、プロを選ばなかった高校日本代表はどの大学に入った?

2024.04.21

【兵庫】須磨翔風がコールドで8強入り<春季県大会>

2024.04.22

【鳥取】昨年秋と同じく、米子松蔭と鳥取城北が決勝へ<春季県大会>

2024.04.29

【全国各地区春季大会組み合わせ一覧】新戦力が台頭するチームはどこだ!? 新基準バットの及ぼす影響は?

2024.04.22

【春季愛知県大会】中部大春日丘がビッグイニングで流れを引き寄せ、豊橋中央を退ける