「今までで一番悔しかった…」ドラフト上位候補右腕・達孝太(天理)が味わった大阪桐蔭戦の屈辱【後編】
2021年の高校野球界は投打にわたって逸材が揃う大豊作の1年となることが予想されている。そんな注目選手たちが揃う中でも高身長なのが天理・達孝太である。
身長193センチ体重85キロという恵まれた体格から角度を付けたボールは、最速146キロをマーク。そこに落差の大きいフォークなどを織り交ぜる同世代の中でも好投手の1人であることは間違いない。
そんな達はこの1年間をどのように過ごしてきたのか。今回は新チーム以降の取り組みについて迫っていきたい。
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先発完投型投手を目指して。達孝太(天理)が100球以上の投げ込みをして得たもの【前編】
大阪桐蔭に突き付けられた苦い経験
達孝太(天理)
そして今度はエースとして迎えた秋、天理は順調に勝ち上がり、決勝戦は近畿王者・智辯学園を破り、見事優勝を飾った。「背番号に関係なくチームに貢献するために投げました」という達のなかで最も良かったのが近畿大会の乙訓戦だった。
「調子自体はあまり変わりなかったのですが、全く力むことなく伸びのあるボールを投げ込むことが出来ました。まだまだだと思っていますが、現状では理想に最も近い投球でした」
達が語る通り、乙訓戦は9回を投げて被安打5、奪三振13の快投。ドラフト候補の実力をいかんなく発揮した一戦だった。だが、その反動は大きかった。翌日の大阪桐蔭との準々決勝は2回まで大阪桐蔭打線を0点に抑える好投を見せる。
しかし3回に宮下隼輔のホームランなどで一挙4点を失い苦しい試合展開となると、5回にも1失点。そして7回には打者10人に6安打を許して6点を失う。結果的に7回投げて三振は10個奪うも被安打11、失点11でコールドで敗戦した。
「去年抑えられたことで自信を深めたので、もう1回絶対に抑えるつもりで投げていましたが、相手のレベルも上がっていて抑えられませんでした。今までで一番悔しい試合です」
それからストレートの勢いや回転数を意識し、わかっていても打たれないストレートを目指して、日々の練習に打ち込んでいる。
達が明かす変化球の握りと投げるポイントを解説
左:ストレート 右:カーブ
そんな達はストレートをはじめフォークなども光り、どの球種でも一級品のレベルである。そんな各球種に対する意識などについて話を聞かせてもらった。
ストレート
リリースの瞬間は、体からボールが最も離れているため、どうしても力が入りにくい状態になる。だからこそボールを上から押しつぶす、切るような感覚で投げることでスピンの利いたストレートを投げ込むことを心がけている。達自身ストレートに関しては、スピードがなくても回転数の多さで打者に速く感じてもらえるように、回転数を一番大事に投げることを常に意識をしている。
カーブ
人差し指は力を入れないためにボールにつけず、親指と中指の2本だけで持って抜くようなイメージでリリースする。握っている段階から抜けやすい握りにはなっているため、腕を振れば勝手に抜けるようにはしている。ストレートと緩急差を付けられるような緩く、大きく曲がる軌道をイメージで投げるようにしている。
左:フォーク 右:カットボール
カットボール
真っすぐの握りと指は同じだがで、ボールは少し動かして中指が高い方の縫い目を握れるようにする。そのままリリースも真っすぐと同じ感覚で投げれば、中指が長い分、最後まで自然と指先が縫い目にかかるようになるため、横に小さく変化させることが出来る。
フォーク
昔は落ちる幅や落ち方にムラがあったため、親指と薬指の2本を横に添えてあげることで、安定して投げられるようになったため、現在の握りとなった。そこからチェンジアップ気味に変化させたい時は抜いて落とすイメージでリリースを早めにする。フォーク気味の時は、上からつぶす感じで投げることで使い分けている。
1つ1つのボールに対してこだわりをもって語れる。そうした頭の柔らかさも達の魅力の1つだが、最後にドラフト候補として迎えるラストイヤーに向けての意気込みを伺った。
「マックス・シャーザーのような、分かっていても打たれないストレートを投げられればと思っているので、数字としては150キロを求めて、春夏は万全な状態で投げられるように準備していきたいです」
大阪桐蔭を抑えたことで一役脚光をあびた大型右腕・達孝太。最後の1年にどんな投球で高校野球界を沸かせてくれるのか。達の成長が楽しみでならない。
(記事=田中裕毅)
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