Interview

【後編】現役続行か引退か。ドラフトに命運をかける千葉葵(滋賀学園)の覚悟

2020.09.16

 8月に甲子園で行われたプロ志望高校生合同練習会に参加した最速142㎞/h左腕の千葉葵。1年夏を最後に公式戦のマウンドから遠ざかっていたが、合同練習会では力強いストレートを披露した。

 表舞台から姿を消していた2年の間に何があったのか、そしてプロを目指すきっかけについて語ってもらった。

 後編の今回は夏の独自大会、そして合同練習会を中心に話を伺った。

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夏未登板もスカウトが熱視線。大型左腕・千葉葵(滋賀学園)が復活するまで【前編】

手ごたえを感じながら登板無く終えた最後の夏

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ピッチングをする千葉葵(滋賀学園)

 夏の甲子園も中止になってしまったが、幸いなことに滋賀県では県の頂点を決める独自大会が開催されることになった。6月には練習試合でも登板し、「順調な感じで(調子は)上がっていました」と仕上がりには手応えを感じていた。

 独自大会ではベンチ入りし、ブルペンで投げる姿も見られたが、なかなか登板機会は訪れない。序盤に大量失点を許した準決勝の近江戦でも出番がなく、一度もマウンドに上がれないまま千葉の夏は終わりを迎えた。山口達也監督は千葉の状態をこう見ていた。

 「ちょっと時間が足りなかったなという感じはします。春先から徐々に良くなってきましたが、実戦経験がどうしてもなかったのですし、コントロールにバラツキもありました」

 確かにブルペンでの投球を見ていても、球威こそ戻っていたが、制球力に苦しんでいる印象はあった。「欲を言うなら1イニングだけでも投げさせて欲しかったと思います」と話しつつも、山口監督の采配にも理解を示している。

 「チームが勝つための監督の采配なので、それは納得しています。まだまだ伸ばせるところはあったと思うので、もう少し時間があったら、監督の理想にもっと近づけたと思います」

 本来ならここで高校野球生活が終わっていたが、千葉にはまだチャンスが残されていた。それはプロ志望届を提出した高校生を対象に行われる「プロ志望届高校生合同練習会」だ。独自大会後に「高卒左腕を探している球団がある」と山口監督に話を持ちかけられたことで、プロへの挑戦を決めた。

 合同練習会は甲子園で開催された。2日目にはシート打撃が行われ、5人の打者に対戦する。ここで好投することができれば、プロ入りへのチャンスを広げることができるはずだった。

 しかし、ここでも不運に見舞われた。前の投手の投球が終わり、千葉がマウンドに上がった直後のことだ。急に強い雨が降り出し、シート打撃は一時中断。なかなか雨は降りやまず、千葉の投球は雨天練習場で実施されることになった。

[page_break:今後の伸びしろに期待が膨らむ素材型パワー系ピッチャー]

今後の伸びしろに期待が膨らむ素材型パワー系ピッチャー

【後編】現役続行か引退か。ドラフトに命運をかける千葉葵(滋賀学園)の覚悟 | 高校野球ドットコム
ポーズをとる千葉葵

 30分以上の中断時間を経てからの登板という難しい局面。1人目の相手となった西野力矢大阪桐蔭)に対してはボールを2球続けた後に強烈なピッチャー返しを食らったが、次の土田龍空近江)からは空振り三振を奪う。その後はショートライナー、四球、ショートゴロという結果で千葉の合同練習会は幕を閉じた。

 約2年ぶりとなった表舞台での投球。プロ注目選手と対峙した2日間をこう振り返ってくれた。

 「凄い選手が揃っていて、自分の良いところ、悪いところがハッキリさせられて、もう一段階伸びるためにいい経験ができたと思います。まだまだ制球力も足りないですし、変化球も全然投げられていないので、課題としてはまだまだ山積みでした」

 公式戦か遠ざかっていた中での参加ということもあり、得られるものは多かった。「プロの方からお話が来たらいつでも準備ができていますよという状況を作って、待っています」と現在はプロ入りを見据えながら練習を続けている。

 山口監督は千葉を「素材型でパワー系のピッチャー」と評価している。今後の伸びしろには期待がかかるが、高校3年間で実績を残せなかっただけに指名が確約されている状態ではない。合同練習会をきっかけに社会人野球のチームから誘いも来ているそうだが、指名漏れした場合は野球を辞めるつもりだという。

 「(ドラフトで指名されなかったら)野球はそこで区切りをつけて、看護師を目指そうと思っています。こういう状況で看護師や医者が必要な時代になってくるので、一人でも人を助けられる職業に就きたいと思ったからです。2年生の冬にそういうことを考え始めました」

 ドラフト会議は多くの野球選手の運命を左右する日になるが、千葉のように現役続行の分かれ目になる高校生は稀だろう。10月26日は千葉にとってどんな日になるだろうか。

(取材=馬場遼

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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