プロ注目の最速139キロ右腕・野島勇太(神戸弘陵)の新たな武器・カットボール【後編】
身長176センチ、体重69キロとまだ細身な体が印象だ。マウンドに上がると遠近法でより細く見えるが、そこから繰り出すストレートは球速以上の伸びと切れ。数字では測れないストレートを武器に投げ込むプロ注目右腕が野島勇太だ。
8月17日に公示されたプロ志望届提出者一覧に野島の名が提示されており、現在は運命の日を待ちながら練習を重ねている。兵庫県選抜にも選出されるなど、注目されてきた野島の野球人生に迫る。
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プロ注目の最速139キロ右腕・野島勇太(神戸弘陵)はいかにして県内屈指の好投手となったのか【前編】
台湾遠征で掴んだ新たな武器・カットボール
最速139キロ右腕・野島勇太(神戸弘陵)
冬場に野島は下半身と体幹の強化を重点的に取り組み、体力づくりに励んだ。すると、2019年の選抜にも出場した市立和歌山相手に完封するなど、強豪相手に着実に結果を残していく。
この試合を野島は「ストレートが良い感じだったんです。三者凡退が少なくて打たせて取る投球でしたが、ストレートで勝負できるというところで収穫がありました」と自信を深めることが出来た。
だが、野島にとって2度目の夏は2回戦・東播磨の前に敗退。上位進出とはならなかった。
「真っすぐには自信を持っていました。ですが、周りの方に助けてもらっていたところが多かったので、個人のレベルアップが必要でした」
特に課題となったのが変化球とコントロールの向上。9回を投げきるためにはカウントを取れる、そして三振を取れる変化球の習得が野島の新たな課題となった。
野島は夏の時点で持っていたカーブ、スライダー。そしてフォークボールでキチンと勝負が出来るように、ブルペンで多く投げ込むように取り組むようにした。
この時期の野島の取り組みについて、岡本監督は成長を感じていた。
「チームの柱としてバッテリー間ではリーダーシップをとって、自覚と責任をもって試合をコントロール出来るようになりました。信頼の置ける投手になりました」
こうしてエースとして迎えた野島の秋は初戦の六甲アイランドに2対5で敗戦。まさかの初戦負けで敗者復活戦へ回ることとなった。「やってしまった」と思いましたと、野島も痛恨の敗戦だった。
しかしこの負けを無駄にはしなかった。
「負けられない試合ばかりでしたので、勝てる投球を心がけました。調子が悪ければその中でも良いボールを勝負球にして、配球で工夫をして投げるようにしました」
すると、神戸弘陵は敗者復活戦から勝ち進み、ベスト8進出。大きな躍進となり、野島は冬に選抜される兵庫県選抜に選ばれた。明石商・中森俊介、来田涼斗など県内のレベルの高い選手たちが揃う仲間と台湾へ渡った。
「周りのレベルが高くて心配でした」と台湾遠征当初を振り返った野島だが、ここで新たな武器・カットボールの習得に繋がった。
「木製バットが相手でしたので、カットボールが有効と言うことで、ダルビッシュ有さんのカットボールを参考に習得に励みました」
すぐに習得が出来たという野島だが、その感覚は独特だ。
「リリースの瞬間に薬指に力を入れて投げるんです。力を入れてつぶすといいますか、挟むといいますか、それでストレートよりも強く振って小さく曲がればと思っています」
このカットボールがメインとなったことで、元から持っていたスライダーなどはカウントを取るために使うようになり、決め球はカットボールとなった。夏の大会が終わってからの課題をここで解決することになった。
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野島勇太(神戸弘陵)
また同じく選ばれた選抜メンバーと比較とすると身体の線が細かったことを感じた野島。冬場は食事量を増やし、身体を大きくした。おかげで体重は63キロから69キロと増量した。
ここまでの成長を岡本監督はこのように語る。
「台湾でいろんな経験をして、練習への取り組み方が変わりました。ウエイトトレーニングも積極的に取り組むようになって、下半身は一回り大きくなりましたね」
指揮官も期待した野島の春だったが、新型コロナウイルスの影響で中止。野島はキャッチボールやランニングをしながら練習再開を待った。そして6月に入って練習が再開すると、「カットボールがよくなりました」と成長を実感。自信をもって最後の夏に挑んでいた。
大会は神戸国際大付がいる激戦区。チーム内でも神戸国際大付に勝つことを目標に大会に入ったが、3回戦・神戸学院大附の前に0対3で敗戦。神戸国際大付と戦う前に敗れ去ることとなった。
「調子が悪くて試合が作れませんでした。今までの中で一番悔しかったです」
岡本監督も野島の最後の夏は不完全燃焼だった。
「思ったようなボールを投げ込むことが出来ず、不完全燃焼でした。実践感覚がなく、バッターとの駆け引きできませんでしたが、まだまだできる投手です」
現在は毎日グラウンドに足を運び、キャッチボールや遠投。さらに身体づくりをしながら後輩の手伝いをしている。野島はプロで活躍するために何を課題に感じているのか。
「体が細いので、このままだとプロでは通じないと思っています。ですので、体を鍛えていますが、ピッチングはコントロールと球速がまだですね。最低でも145キロを出せるように、コントロールアップもかねて足腰の強化をして安定感を出せるようにしています」
ストレートでも変化球でも勝負できる。三振を取れる投手を目指している野島。最後に神戸弘陵での3年間を振り返ってもらった。
「1年生から出させてもらったからこそ成長出来ました。試合に出られたことは感謝していますが、恩返しができませんでした。ですので、プロに入って恩返しをしたいです」
神戸弘陵からは山井大介、飯田優也などプロ野球選手を輩出している。そんな先輩たちと比較しても伸びしろがあることを岡本監督は語る。
「今までの選手たちの方がスケールはあるかもしれません。ですが継続して努力できる選手ですので、成長度合いは凄いと思います。未完成ですので、オリックスの東晃平のようなキレと駆け引きの巧い投手になると思います。数年後が楽しみです」
運命の日は10月26日。その時に野島勇太の名前が呼ばれるか、楽しみに待ちたい。
(取材=田中 裕毅)
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