高校通算20本塁打を放つ石川 慧亮(青藍泰斗)!アベレージヒッターから長距離砲に生まれ変わるまで
作新学院や佐野日大と並び、栃木の高校野球を引っ張る存在である青藍泰斗。昨秋は文星芸大付との接戦を制して22年ぶりの優勝で関東大会に出場。高いポテンシャルを秘めた選手を多く揃えている今年のチームの中で抜きんでた存在が石川 慧亮だ。
中日でプレーをする石川翔を兄に持つ石川 慧亮。自慢のフルスイングから強烈な打球を飛ばし、高校通算20本塁打を放っているが、NPBのスカウトからも注目が集まる。
守備でも外野から鋭い送球を見せており、潜在能力の高さを随所に見せる。そんな石川の成長ストーリーに迫っていきたい。
フルスイングを信条に活躍した中学時代
石川 慧亮
石川の野球人生は小学1年生から。兄・翔についていく形で同じチームに行き、その流れで野球を始めた。「兄は昔から方が強くボールも速い。『凄いな』という感じでした」と兄・翔に尊敬をしながらも、石川は中学に進むと硬式の志村ボーイズへ進むことを決めた。
「練習環境が良かったので、『ここでやれればいいな』と思っていました。また指導者の方も良い方ばかりでしたので、それらが決め手になりました」
先輩には昨夏の甲子園に出場した八戸学院光星の島袋翔斗、さらには国学院久我山の問矢大雅。そして同級生には桐光学園の安達壮汰など実力ある選手たちが多くいた。そのなかで石川が出場機会を掴むべく意識したことは、石川の代名詞となっている「フルスイング」だった。
「とにかく振る、フルスイングというのが中学時代は自分の持ち味でした。それはある程度自覚をしていましたので、ずっとやり続けていました」
すると石川は3番打者として試合に出場。ジャイアンツカップも2度経験し、2年生の時にはベスト8に進出するなど、実績を積み重ねてきた。しかし当時は現在のようなホームランバッターではなく、「確実性といいますか、チャンスメイクが役目でしたので打率を残すタイプでした」と振り返る。
そして高校では、兄と同じ青藍泰斗へ進学する。
「甲子園を目指して兄が青藍泰斗に入学して、甲子園に届かなかったので、敵を取るではないですが、そういった気持ちで入学を決めました」
こうして青藍泰斗の門をたたいた石川。アベレージヒッターから強打者へ生まれ変わるのはここからだった。
[page_break:長打だけではなく、打率を残せるバッターに]長打だけではなく、打率を残せるバッターに
石川 慧亮
青藍泰斗へ進学した石川。入学前のバッティングについて聞くと、次のように語る。
「中学までは逆方向へのバッティングに自信を持っていました。ただ、高校ではボールの質が変わりますので、技術よりも力で負けないこと考えて、沢山素振りをしてパワーを付けることを意識しました」
加えて青藍泰斗入学後、本格的にトレーニングに取り組む。体幹トレーニングをメインにしつつ、ウエイトで力がつけながらも身体のバランスを整えた。筋肉がつき始めると、身体は自然と絞れ、アスリートの身体に。石川自身の目で見てもわかる体格の変化がバッティングの向上に繋がった。
「中学時代はあまりトレーニングをしていなかったのですが、高校に来て筋トレを結構やったら打球が変わってきました。それでホームランを打てるようになりました」
入学してすぐに高校初のホームランを放った石川。中学時代からのフルスイングを継続していたとのことだが、「ビックリするくらい変わりました」と本人も驚きの成長ぶり。すると1年生の春からベンチに入りつづけ、主力して活躍することになる。
しかし1、2年生の夏ともに準決勝敗退。あと一歩が届かないまま、自分たちの代を迎えた。新チームは通算14本塁打だった石川をはじめ、4番・猪瀬 賢信や5番・佐々木 康といった強力バッターを揃えて、昨秋の栃木県大会5試合で36得点を記録。破壊力を武器に関東大会まで勝ち進んだ。
そして関東大会の初戦の西武台戦で石川は3打数2安打の活躍を見せるも、試合は6対9で敗戦。選抜への出場はかなわず、残すは最後の夏だけとなった。悲願の甲子園に出場するべく冬場はトレーニングを重ね、「パワーがついてきて、春先にアピールが出来る」と石川の中では期待感をもって春季大会を待っていた。
だが新型コロナウイルスの影響で活動は自粛。石川は自粛期間中、1日1~2時間程度を使って体幹トレーニングなど自宅出来ることを中心にしつつランニングも混ぜるなど、活動再開まで練習をしてきた。
それでも練習再開後は「体力が落ちているな」という感触はあったとのこと。現在は調子も上がり、紅白戦を通じて実践感覚は取り戻しつつある。
今年は守備に課題を残しつつも、チーム全体として打力があると石川は分析。その中で主軸として活躍が期待される石川の現在の課題は選球眼だ。
「練習でもボール球を打たないように注意をしたり、センターから右方向に打つことは意識しています。元々逆方向へのバッティングは得意でしたので、より伸ばせればと考えています」
栃木県では7月18日から独自大会が始まる。「こういった状況の中で大会が開催されることにみんな嬉しい気持ちです。最後は気持ちを入れて笑って終わりたい」と石川は意気込みを語る。
石川の求める理想像は、日本ハムの近藤健介だ。
「僕自身、一番の持ち味は打率だと思っています。ホームランを打てる選手も良いとは思いますが、バッティングはそれだけではないと思っています。だから長打も打てて打率も残せるようになりたいので、その理想に近いタイプは近藤さんかなと思っています」
理想像に近づくべく、石川慧亮は最後の夏に有終の美を飾るべく、最後までフルスイングを貫く。
(取材・文=田中 裕毅)
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