Interview

独立リーガーから誕生した「背番号55」井上絢登(DeNAドラフト6位)の打撃を開花させた徳島インディゴソックス「驚異のメソッド」<インディゴソックス ドラフト指名6人全員インタビュー②>

2023.12.16


今ドラフトで史上最多の「6人同時指名」を成し遂げた四国アイランドリーグplusの徳島インディゴソックス。指名された6人の言葉からその育成力の真相に迫る。

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「壁」を打ち破った井上の本指名

取材に応じる井上絢登

「インディゴソックス同時指名6人組」の中で唯一、野手として本指名を受けたのが、横浜DeNA6位の井上 絢登(久留米商-福岡大)内野手だ。今季の四国アイランドリーグplusで井上は圧倒的な成績をみせていた。
14本塁打、39打点、打率.312、14盗塁――。
打点・本塁打の二冠、そしてMVPも獲得し、ついた異名は「独立のギータ」だった。

しかしながら、これまで井上のような独立リーグ出身の長距離砲にとって、ドラフト本指名の壁は高いものだった。実際、11年連続26人のNPB選手を輩出した徳島でも、強打者タイプの本指名選手はなかなか出ていない。2021年、DeNAから育成1位指名された村川凪外野手(如水館-四日市大)は俊足がウリ、強肩捕手の古市 尊捕手は育成1位で西武に。2022年は 走攻守三拍子揃ったアベレージヒッター・茶野 篤政外野手(中京-名古屋商科大)がオリックス育成4位に、 脚力に秀でた日隈 モンテル外野手(金光大阪)が西武に育成2位で指されている。いずれもクリーンアップを任されるタイプではなく、なおかつ育成指名だ。

井上はその壁を打ち破った。しかも入団するのは、12球団でも上位の打撃力を誇るDeNA。
さらに球団から用意された背番号は「55」。あの筒香 嘉智内野手(横浜)もルーキー時代に背負った「将来の強打者の証」だ。

井上は徳島での2年間を振り返る。
「僕にはそれまで打撃しかなかった。大学でプロ志望届を出してもダメでした。でも、徳島に入ったことで、自分のプレースタイルすべてがレベルアップしました。野球選手としてあらゆる面が成長できたんです」

では井上の成長の軌跡を振り返っていこう。

悔しい指名漏れ

身振り手振りも交えながら話をする井上絢登

井上の代名詞である「フルスイング」は、福岡県筑紫野市の二日市ボーイズに所属していた中学3年生時、自然にでき上がった。
「パワーをつけるために1.2キロのバット、500グラムのサンドボールを打ち返す練習を1日500スイングしていました。その練習を繰り返していたら、スイング力がついて、周りから『フルスイングしている』といわれるようになったんです。それまではイチロー選手を目指していたんですが、柳田 悠岐選手(ソフトバンク)に憧れるようになりました」

高校は久留米商に進んだ。1学年上には日本ハムで活躍する古川 裕大捕手、OBには龍 昇之介外野手(白鴎大-スバル)がおり、井上は彼らから様々な打撃技術を学ぶことができた。
「龍さんから教えてもらったグリップの握り方。これがホームランバッターと僕が言われるようになった原点です」

高校通算20本塁打を放ち、井上は福岡大へ進学した。
大学選手権出場・リーグ戦通算9本塁打の実績を引っさげてプロ志望届を提出したが、残念ながら吉報は届かなかった。だが、井上はNPB選手になるという夢を諦めるつもりはなかった。
「大学の同級生に、いまソフトバンクにいる仲田 慶介(福岡大大濠)がいて、一緒にプロを目指していたんです。いつも仲田と『今年ダメだったなら、独立が一番(NPBに)近いんじゃないか』という話をしていました。そんな中でインディゴソックスから話をいただいたので、入団を決めました」
こうして独立リーガーとなった井上。目標は「打率2割5分でも本塁打20本以上」に設定する。

10種類のティーバッティングで構成された「特製ドリル」

井上絢登

最初にインディゴソックスは、井上に身体の使い方を教えた。
「まず『スイング軌道が大事だ』といわれました。自分のスイング軌道が悪かったので、体の使い方を1年間かけて教えてもらいました。僕はヘッドが下がる癖があって、高めのまっすぐに負けていたんです。それを修正するドリルを作ってもらいました」

メディシンボール投げとティーバッティングで構成された特製ドリルを毎日繰り返す日々が始まった。
「特にティーは10種類くらいありました。エックスティー(※)、ステップしながら打つステップティー、連続ティーなんですけど、体幹を意識しながら打つコアティー、速いボール、遅いボールをミックスしながら投げてもらうティー、高め、低めを打つティー、外、内と交互に投げてもらうティー 。毎日500スイング以上していました」

この多彩なメニューのティーバッティングは、NPBで二軍監督の経験もあるインディゴソックスの岡本 哲司監督が教えたもの。続けるうちに効果は確実に出た。井上は1年目で13本塁打・41打点を挙げ、本塁打・打点の二冠王を獲得したのだ。

そして2022年のドラフト会議の日がやってきた。しかし、井上自身は指名があるとは思っていなかった。
「自分の中では『ちょっと指名のチャンスはあるかな』ぐらいで、ほぼ諦めていました」
打撃力は徳島の1年で確実にアップしたが、まだまだ足りない―。

そんな周囲の空気を井上は敏感に感じていたのだ。
徳島市内のショッピングモールの会議室に集まったインディゴソックスのドラフト候補たち。井上と並んでドラフト中継を見守っていた同級生の茶野、井上と同じ外野手の日隈 モンテルの名前が次々読み上げられていく。結局、井上は指名されなかった。
「茶野は打撃力も高く、俊足ですし、行くだろうと思っていました。僕と同じ外野手のモンテルが指名されたのが悔しくて。ドラフトの夜、ジムにいって夜12時までトレーニングをしていたのを覚えています」
井上は徳島での2年目にすべてを懸けることにした。
「今年がラスト勝負だなと。自分は頭の中をしっかりと整理してやるだけ。監督、コーチの方々のバックアップの大きさは感じていました。その期待に応えるだけでした」
井上の猛練習が始まった。(以下後編へ)

後編はこちらから

取材・文/河嶋 宗一(編集部主筆)
※エックスティー:エックスを描くようにスイングをして、これを何回か繰り返して、打ち返すもの

【徳島インディゴソックス指名6人全員インタビュー】他の記事はコチラから

この記事の執筆者: 田中 裕毅

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