Interview

「徳島でトップ3に入れば、NPBに行ける」井上 絢登(DeNA6位)が語る“最強育成球団”での激烈な日々<インディゴソックス ドラフト指名6人全員インタビュー②後編>

2023.12.16


井上絢登

今年のドラフト会議で史上最多の「6人同時指名」を成し遂げた徳島インディゴソックス。その中で野手として唯一、本指名を受けたのが、DeNAから6位指名を受けた井上 絢登内野手(久留米商-福岡大)だ。大学で指名漏れを味わい飛び込んだ独立リーグで、井上は勝負の2年目を迎えていた——。
前編はこちら

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「まかない食べ放題」のバイトで苦しいオフを乗り切る

取材中の井上絢登

打撃力はあがったが、ドラフト指名はなかった——。
徳島での1年目を終えた井上は、スラッガーとしての進化だけではなく、走れる選手になることも目指した。守備位置も外野から三塁に変えた。NPBに入るため、走攻守すべてのレベルアップを目指すため、12月まで徳島に残り、徹底的にトレーニングを続けることにした。

独立リーガーはNPB選手と異なり、オフシーズンは生活が一気に不安定になる。井上も猛練習を行う傍ら、アルバイトに精を出した。
「鳴門市内のホテルのアルバイトをしました。自分で探したんです。食堂のバイキングのスタッフをやってました、和装して(笑)。ここはほかのバイトよりも時給が高かったですし、何よりまかないが食べ放題だったんです! 週3回、17時から22時まで働いていました」

食べ放題は魅力的だったようで、阪神からドラフト2位指名を受けた椎葉剛も井上の紹介でこのホテルで働いたという。
その後、井上は地元・福岡に戻り、母校・福岡大で三塁の守備練習に汗を流した。

走攻守すべてがレベルアップした2年目

徳島で迎えた2年目のシーズン、まず、井上は自慢の打撃をさらに発揮するために、日々の準備を大事にした。
「アイランドリーグの公式戦はYouTubeに上がっています。毎晩、次の相手投手の研究のために動画をみて、しっかりとメモを取ってやっていました。その結果、球をしっかり待つこともできるようになりましたし、相手投手の駆け引きもできるようになりました」

前年から取り組んできたスイング軌道の改善もさらに進化した。
「良いスイング軌道が自分の中で身についてきました。2年目で14本放った本塁打は初球に打てたものは、ほぼ狙ったものです。半分は狙って打てたかな」

2年目の井上は14本塁打、39打点を挙げ再び本塁打、打点の二冠王を獲得。そして打率も.246から.312へと大きくアップし、長打力だけでなく安定した打撃ができるようになった。

また、12盗塁を記録。足でもアピールした。
「橋本 球史コーチから足の大切さを学びました。足を速くする練習、スタートの練習を徹底的にやりました。盗塁の際に意識しているのは、身体が浮かないこと。リードを取る時にスピードがロスしないようにするためです」

三塁の守備でも度々、強肩を披露した。
「投手陣と一緒にチューブを使ったトレーニングをしたり、そしてドライブインで使うプライオボールも使って投げたりして、ノックに入っていました」

そして井上は2度目のドラフトの日を迎える。
「やれるだけのことは全てやりました。これ以上やることはないな、そんな気持ちでした」

「ベイスターズは良い打者が多い球団、それでも負けたくない」

井上絢登が指名をされた瞬間

そして迎えたドラフト会議。井上はDeNAから6位指名を受けた。
「めちゃくちゃ嬉しかったですね。やっとNPBの舞台で勝負できるんだ、と。NPBに入るためにできることはすべてやってきましたから。一軍で活躍するための準備をしっかりしていきたいと思いました」

しかし、ここからが本当の闘いだ。DeNAは今ドラフトで井上と同じ左打者を5人獲得した。1位の度会 隆輝外野手(横浜-ENEOS)、3位の武田 陸玖投手(山形中央)、4位の石上 泰輝内野手(徳島商-東洋大)、育成1位の高見澤 郁魅内野手(敦賀気比)、同3位の小笠原 蒼内野手(京都翔英)である。また、井上の守る三塁には今年の首位打者・宮崎 敏郎内野手(厳木)という巨大な壁がそびえる。

ライバルは多いが、井上に対する球団の期待は高い。与えられた「背番号55」は、若手時代の多村 仁外野手(横浜)、ルーキー時の筒香 嘉智内野手(横浜)、勝負強い打撃が光った後藤 武敏内野手(横浜)ら、代々の強打者が背負ってきたものだ。

「良いライバルが多いと思いますので、絶対に負けたくないなと思います。背番号55は仮契約の時に伝えられて、とても驚きました。良い背番号をもらったので、ベイスターズファンに覚えてもらえるように、背番号通りの選手になりたいと思っています。最初の目標は開幕スタメンです。そして日本一に欠かせないピースと呼ばれる選手になりたい」

「徳島でトップ3に入ればNPBに行ける」

井上絢登

井上にとって、徳島インディゴソックスとは何だったのか。
「自分のプレースタイル、全てを成長させていただけた2年間でした。野球選手としてあらゆる面で成長できました。四国アイランドリーグplusは本当にレベルが高かった。NPBの舞台で活躍して、独立リーグの価値を高めたいと思っています。

徳島インディゴソックスは選手のレベルが非常に高い。そしてどの選手も徹底的なトレーニングの成果で身体が大きい。徳島でトップ3に入る実力があれば、NPBに行けます。良い選手が集まっていて、お互い意識しあって、自分を高められる球団です。

インディゴソックス内の競争を勝ち抜くのはすごく大変です。でもNPBにいくためには、トップを目指す気持ち、ライバルに絶対に負けない気持ちが大事だと学びました」

井上が徳島の2年間で見せたのは、コーチらの教えをしっかりと吸収できるクレバーさ、自分のタイプを客観視して課題克服へ向けて貪欲に取り組める姿勢だ。これを持ち続ければ、きっと横浜の輝く星となってくれるだろう。
前編>はこちら

取材・文/河嶋 宗一(編集部主筆)
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この記事の執筆者: 田中 裕毅

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