Interview

阪神ドラフト2位・椎葉剛 “虎の次世代守護神候補”が1年で球速を11キロアップできた理由 一度は野球を諦めかけた男が徳島で得た「圧倒的なパワー」<徳島インディゴソックス ドラフト指名6人全員インタビュー①>

2023.12.15


2023年は、のちのち「ドラフト会議が変わった年」と言われるかもしれない——。そんな感想を抱いてしまうほど、今年の独立リーグの躍進は目を見張るものがあった。じつに23人が指名を受けたのだ。これは社会人野球出身者の13人を超える数字だった。
なかでも四国アイランドリーグplusに所属する徳島インディゴソックスは驚異的な結果を出した。支配下3人、育成3人、計6人もの選手がドラフト指名を受けたのである。一回ドラフトにおける史上最多の指名人数となる。
これは偶然ではない。徳島インディゴソックスは11年連続26人をNPBに送り出しているのだ。徳島でいったい何が起きているのだろうか? 今年指名を受けた6人全員に話を聞くことで、インディゴソックスの育成力の秘密に迫った。
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6人の中で最初に話を聞いたのは、阪神から2位に指名された椎葉 剛投手(島原中央-ミキハウス)だ。インディゴソックスの過去の記録(3位)を塗り替える、最高順位での指名だった。
椎葉の特長は、MAX159キロのストレート。今年のドラフト指名選手の中でも最速だ。この圧倒的なストレートを武器にリーグでは22試合に登板、39イニングを投げ51奪三振、防御率は2.31を記録した。
椎葉がインディゴソックスに在籍したのはたった1年。この短いあいだに何が起きていたのだろうか?

社会人時代は裏方がメイン「公式戦の登板は1回ほど」

椎葉 剛

「いまも『オレはプロ野球選手や!』みたいな感じはないんですよね。イベントなどに出させていただいて、ちょっとずつ『本当になったんだなあ』って思うようになってきています」
椎葉がそう話すのも無理はない。たった1年前、彼は野球を続けられるかどうかの瀬戸際にいたのだから。
「(社会人野球の)ミキハウスで3年間やらせていただいたんですが、公式戦の登板数が1試合とか。だいたいカメラマンなどの裏方をやっていました。ほとんど野球はできなかった。練習はちょっとはしていたんですけど……。『野球いつやめようかな』とは考えていました。そうしたら昨年、3年目のシーズンが終わったときに、クビを切られてしまったんです」
野球を諦めてもまったくおかしくない状況だったが、椎葉の気持ちは徐々に変化した。
「クビになったときは、『もう野球無理だなあ』なんて思ったんですけど……。数日経ったときに、『僕には野球しかない、野球を続けたい』って思いが強くなりました。僕は野球しかしてこなかったし、まったく勉強もできなかったですし、悔しい気持ちもありましたから。クビをきられたままで終わるのはダサいですしね。『野球で見返すしかない、1年で見返してやる。1年で絶対にプロに行ってやる』っていう気持ちが強くなったんです」
そして椎葉は徳島インディゴソックス入団を決める。
「ミキハウスの先輩が2人、インディゴソックスでプレーしていました。2人ともドラフト候補といわれるぐらいまで成長したんですよね。結果NPBには行けなかったんですけど、ミキハウスの時からそんな話は聞いていて、自分も成長できるんじゃないか、思って決断しました」
ちなみに、インディゴソックスについてそれ以上のことは知らなかった。
「独立リーグっていうのも正直知ったのも2年ぐらい前なんです。正直あんまり詳しくなくて……。徳島が(入団するまで)10年連続でNPB選手を出してるってことも正直知らなくて、入団するときに知りました(笑)」

「こんなにトントン拍子でいくとなんて思ってもいなかった」

椎葉 剛

インディゴソックスのモットーは「鍛えて勝つ」。チームには「インディゴコンディショニングハウス」という専門の施設がある。選手たちはまずここで徹底的にフィジカルを鍛えて、強靭な身体を作るのだ。
「体重増やしたうえで、ウエイトトレーニングを本格的に始めました。社会人の時はウエイトをほとんどしてなかったです。週1回くらい。今年みたいにがっつりっていうか、1週間通してウエイトするってことはほぼなかったです」
椎葉はそれまで、ウエイトトレーニングに懐疑的だった。
「自分はウエイトしないタイプだったんですよ。考え方が古かったんですけど、『ウエイトをすると身体が固くなる』だとか『可動域が狭くなる』とか思っていたんです。でもインディゴコンディショニングハウスの殖栗(正登)さんから『筋力がないと球速がでない』ということをしっかり教えていただいて、『やっぱり必要なんだな』って理解しました」
ウエイトトレーニングは1日約2時間。シーズン中は「上半身と下半身とそれ以外の体幹、メディシンとか、瞬発系とか3日に分けてやっていました。種目的にいったら全部で4種目。1部位4種目を3セットぐらいずつやってました」
トレーニングを続けることで、椎葉の身体に変化が現れた。
「特に感じたのは、ケガをしにくくなったことです。これまで小学校、中学、高校と絶対どこかの学年でケガしてたんです。でも今年1年、初めて痛いところが出ずにシーズン戦い抜けました。それはやっぱりウエイトだったのかなって感じています」

ウエイトトレーニングは強靭な身体を作ることと同時に、筋出力向上が目的だ。筋出力とは、自分が持っているパワーのこと。これをプレーの中で100%を出し切ることができるように徳島では徹底的な練習を行うのである。
ピッチャーは、基本であるストレートの球速を伸ばし、力強いボールを投げることに主眼が置かれる。それまで148キロが最速だった椎葉は、最初の目標を150キロにおいた。
「でも、150キロという目標は、(入団直後の)3月、4月で達成できてしまったんです。次は155キロを目指しました。こんなに上手いこと、トントン拍子でいくと思ってなかったんで、自分の中でもびっくりしてるんです」

オーナーに直訴「僕の人生がかかっているんです!」

左・インタビュアー 右・椎葉 剛

球速を伸ばすため、中心的に鍛えたのは“背中”だった
「徳島に来てメインで行ったトレーニングは背中です。千賀さん(晃大・現ニューヨークメッツ)とか速いピッチャーは広背筋がデカいんです。それを見て『自分はまだまだだな』と思い、トレーナーと話して背中のメニューをメインでやりました。」
その結果、椎葉のストレートは159キロにまで伸びたのだった。
「インディゴソックスのウエイト施設は、ほかにはないぐらい充実していると思います。ズバ抜けているんじゃないでしょうか。また、『インディゴコンディショニングハウス』には治療施設もあります。毎日トレーナーに体のチェックをしてもらい、ここが固くなったりだとか、ここが張っているとか、自分の体のわからないところを教えてもらえるんです。ケガがなくなったのは、ウエイトをして強くなったことと、治療施設で教えてもらったところを自分でストレッチしたり、機材を使って治療をしたりできるようになったからだと思います」
椎葉の話を聞いていると、私自身も当時の徳島での生活の記憶が鮮明によみがえった。私も椎葉と同様、1日平均2時間以上はトレーニングに励んでいた。トレーニングは地味で、キツいものだ。「NPBの世界に行くんだ」という強い気持ちなければ続けることは難しい。
インディゴソックスの荒井健司オーナー兼GMによれば、椎葉がコンディショニングハウスの閉館時間にクレームをつけてきたことがあったという。
「夜12時に閉まるのですが、椎葉は深夜まで開けてトレーニングさせて欲しいと直訴してきました。『僕の人生がかかっているんです!』って。ここまで言ってきた選手はほかにいません」
インディゴコンディショニングハウス――。私にとって人生の中で一番辛い時間を過ごした場所でもあり、最高の場所でもある。椎葉にとってもきっとそうだろう。

<後編は>こちらから

取材・文/鎌田光津希(元徳島インディゴソックス、千葉ロッテマリーンズ)

この記事の執筆者: 鎌田 光津希

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