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早、釣のドラフト候補だけではなく、全学年に逸材が揃う京都国際。そして選手の個性を引き出すスタッフ陣にも注目!【後編】

2020.06.16

 昨夏、京都大会準優勝を果たし、今年も早真之介釣寿生の2人のドラフト候補を揃える。そんな京都国際の戦力や、選手の成長を支えるスタッフ陣について迫っていく。

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近年、急上昇中の京都国際。甲子園出場するための課題と冬の取り組みに迫る【前編】

自大会へ向けて、全学年にキーマンが揃う

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左:中川勇斗 右:金森塁

 5月末には京都府で代替大会の開催が決まったが、どのように臨むかはまだ結論が出ていない。「ベストメンバーで戦いたい」、「3年生中心で戦いたい」、「上を見据えて木製バットで戦いたい」など、3年生の中でも意見はそれぞれ分かれているようだ。取材の2日後に8ブロックあるいは16ブロックに分けてのトーナメント戦が実施されることが発表されたが、どのような戦い方をするのだろうか。

 その一方で1、2年生は「野球小僧が多いので、目がキラキラしている」(小牧監督)と元気にグラウンドを駆け回っている。2年生では金森塁は140キロを超えるストレートを投げる本格派左腕として期待がかかる。中川勇斗は強打が武器の捕手で、秋以降の主軸候補。春は金森が登板する際に中川がマスクを被り、釣を一塁手に回すというプランもあったようだ。

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プロ入りした上野響平の弟・上野楓真

 1年生にも人材が揃っている。上野楓真はプロ入りした上野響平の弟で、同じ遊撃手。技術面ではまだ兄に見劣りするが、「体の力は弟の方が上」と小牧監督は潜在能力の高さを認める。将来的にはチームを支える存在となっていることだろう。

 投打の柱として活躍が期待されているのが森下瑠大平野順大だ。左投左打の森下は投打ともにしなやかさがあり、右投右打の平野は安定して130キロ台後半のストレートを投げることができる。秋以降はこの二人が金森とともに投手陣の軸となり、中川とクリーンアップを組む構想を小牧監督は立てている。来年以降もドラフト路線で楽しませてくれそうだ。

[page_break:選手の能力を引き出す指導者スタッフも充実]

選手の能力を引き出す指導者スタッフも充実

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今年3月から就任した青山友紀コーチ

 さらに新たな心強いメンバーが加わった。それは今年3月から就任した青山友紀コーチだ。滋賀の綾羽高時代には61本塁打を放った実績があり、その後は東北福祉大、ミキハウス、茨城ゴールデンゴールズで2017年まで現役生活を送った。以前から小牧監督と親交があった縁で指導に携わるようになり、「キャッチャー出身で野球脳が高い」と小牧監督は31歳の若き指導者に期待している。

 内野手出身の小牧監督が内野守備、投手出身の宮村貴大部長が投手、青山コーチがバッテリーと打撃とそれぞれ専門性の高い指導を受けられるのも京都国際の強みだ。

 そして、近年の躍進を支えているのがスカウト担当の岩淵雄太コーチ。上野の世代から中学生の視察で各地を回るようになり、早と釣も岩淵コーチの熱心な勧誘によって入学を決めたという。

 岩淵コーチが来るまでスカウトも行っていた小牧監督は選手を見るポイントについて「技術や能力も見ますけど、ボールを全力で追いかける子は伸びていきますね」と話す。明らかにファールとわかる打球でも、全力でボールに向かうようなワンプレーに対する執着心の高い選手は熱心に練習する傾向があるという。上野もボールに対する嗅覚の良さに惹かれて、獲得を決めた選手の一人だった。

 選手、指導者ともに人材が揃ってきた京都国際が甲子園初出場を果たすのも時間の問題かもしれない。しかし、小牧監督は甲子園に行くこと以上に上で活躍できる選手を育てたい気持ちの方が強いという。

 「勝ちたかったら良い選手を揃えて、将棋の駒みたいに動ける子を作れば、負けにくいチームになりますけど、甲子園に出ているのにどこからも声がかからない選手もいっぱい見てきました。結果だけを出すことを求めるよりは高校で花が咲かなくても、その子の持っているエンジンを最大限にして上の世界に送り出したいと思っています。その過程に甲子園があるという考え方ですね」

 曽根海成(広島)や清水陸哉(ソフトバンク)といったOBの存在もあり、プロを目指して京都国際を志す選手は多い。その一方で甲子園に行って自分をアピールしたいと考える選手も増えてきたという。特に昨夏は本気で甲子園を狙いに行っていた。今後は育成と勝利の両立を目指していくと小牧監督は意気込んでいる。

 「早くこの子らの『甲子園に行きたい』という想いに応えてあげないといけないですね。これまでは上受けする野球をしていましたが、上野の代は勝つためにスケールを小さくしても嫌らしい野球も教えていました。勝ちを求めることと育成することは別物だと思っているので、それを並行して進めていく難しさは感じますね」

 スケールの大きい選手を育てながら、トーナメントを勝ち抜くチームを作ることは容易ではない。しかし、それが実現すれば多くの人が魅力を感じるようなチームになるだろう。高校野球の在り方が問われている時代の中で、京都国際の方針は良い手本になるかもしれない。

(取材=馬場遼


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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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