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昨秋滋賀8強入りを果たした実力校!瀬田工(滋賀)の注目選手はエース・小辻だけではない【後編】

2020.03.07

 1980年夏に滋賀県勢初の甲子園準決勝進出を果たした瀬田工。プロ野球の日本ハムと西武で活躍した西崎幸広を擁した1982年春以来は甲子園から遠ざかっているが、昨秋は8強入りして復活の気配を感じさせた。

 エースで4番の小辻鷹仁(2年)はスリークォーターから最速146キロの速球を投げるプロ注目選手。彼以外にもポテンシャルの高い選手が多く、春以降の躍進を予感させる。取材を進めていくとその強化策はとても興味深いものだった。

 前回に続いて、今回は秋季大会を中心に話を進めながら、収穫や課題。そして春以降の意気込みについて語っていただいた。

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脱坊主に週末合宿?!38年ぶりの甲子園を目指す、瀬田工(滋賀)の取り組みの狙い【前編】

隼瀬一樹擁する伊香に敗戦

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瀬田工ナイン

 合宿生活によって鍛えられた今年のチームは身体能力の高い選手が多く、小椋和也監督は甲子園も狙えると期待をかけていた。2回戦から登場となった秋の滋賀大会は初戦で彦根総合に10対0で5回コールド勝ち。3回戦では水口東に延長11回の末に6対4で勝利して、3年ぶりのベスト8進出を決めた。

 勝てば近畿大会出場に大きく近づく準々決勝では好投手・隼瀬一樹(2年)を擁する伊香と対戦。延長戦までもつれる大接戦となったが、12回表に勝ち越し点を献上して3対4で惜しくも敗れ去った。

 「自分たちの力が最初から最後まで発揮できないまま終わりました。僕が甲子園を追いかけすぎてしまいましたね」と反省した小椋監督。甲子園に行くことにこだわりすぎたことで選手の力を上手く引き出せなかったそうだ。

 また、小椋監督は敗因を分析する中で選手に集中力がなく、集中力を高めずに試合にはいっていたことを課題に挙げた。そこでジャグリングやバットとボールを使ったリフティングなど、集中力の高まる作業を練習試合の前にやらせてみた。すると、やっていない時に比べて得点力に大きな違いがあり、改めて集中力の重要さを実感した。

 秋季大会後の練習試合では東邦いなべ総合といった強豪校相手にも勝利を収めたという。まだ不安定な面はあるが、勢いに乗った時の強さは本物だ。春以降は他校にとって脅威となるだろう。

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38年ぶりの甲子園出場に向けて

昨秋滋賀8強入りを果たした実力校!瀬田工(滋賀)の注目選手はエース・小辻だけではない【後編】 | 高校野球ドットコム
投手陣 左から足利優太、松田康輝、田中瞬、小辻鷹仁、三原滉平、小浦翔

 公立校にエースで4番のプロ注目選手がいると聞けば、その選手のワンマンチームと連想するかもしれないが、決してそうではない。ノックを見ていると、肩の強い選手が多く、二塁手の三原と遊撃手の田中瞬(2年)を中心に球際に強さが際立っていた。

 攻撃面でも田中が1番、三原滉平が2番を打ち、4番の小辻につなぐチャンスメーカーとしての活躍が期待されている。

 投手陣も秋は小辻頼みにならないように整備を進めている。三原、田中に加えて、松田康輝(2年)、小浦翔(2年)の4人が130キロ以上のストレートを投げる本格派。特に三原は夏までに140キロを投げられると小椋監督は期待を寄せている。

 さらにカーブを武器とする左腕の足利優太(2年)も控えており、投手のバリエーションは豊富。春から球数制限が導入される中で、一人の投手に負担を与えない起用法を可能にしている。

 「秋は小辻頼りになってしまったので、この冬で意識を変えて、春で抜かそうと思わせてくれた」と三原が話すように、チーム全体の底上げを目指して冬の練習に取り組んできたことが実を結んでいる。

 小椋監督が就任して5年目となり、滋賀の頂点を狙えるチームを作りあげてきた瀬田工。今後は1980年代のように滋賀をリードする存在になりたいと小椋監督は話す。

 「常に優勝争いするようなチームを作っていきたいですね。でもそれを言いすぎると、選手も固くなるので、ノビノビやらせたいです。特に今年は野球部の以外の先生も『頑張れよ』と言ってくれています。少しプレッシャーになりますけどね(笑)」

 優勝したいという想いは選手も同じだ。三原は「秋の悔しさをバネにして春の大会では絶対に優勝するという気持ちで過ごしてきました。春夏連覇に向けて練習の質を上げていきたいです」と意気込んでいる。

 38年ぶりの甲子園出場に向けて機は熟した。80年代の高校野球を盛り上げた古豪が令和の時代で大きく飛躍する。

(取材=馬場遼

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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