「とにかくプロに行きたい」阪神の正捕手に定着した梅野隆太郎の進学秘話【前編】
阪神タイガーズの正捕手に定着し、攻守にわたって活躍を見せている梅野隆太郎選手。昨年は、自身キャリアハイの成績を残し、球団としては2010年の城島健司選手以来となる、捕手部門のゴールデングラブ賞も受賞した。
そんな梅野選手の活躍の礎として、高校時代があることは間違いない。今回は、福岡工大城東時代の恩師・杉山繁俊監督(現東海大福岡)の言葉から、そのルーツを探る。
第一印象は小さい!でもプレーは本当に凄かった
福岡大時代の梅野隆太郎選手(右から4人目)
「小さい!」
これが梅野を最初に見た時の印象でした。
梅野は中学時代、那珂川シャークスというチームに所属してましたが、いい捕手がいるという情報が入ったので、那珂川シャークスの監督さんにお願いしてグランドまで練習を見に行きました。
体はあまり大きくないと聞いていたのですが、グランドに着いて実際に梅野の姿を見ると本当に小柄な選手で、監督さんの前でも思わず「小さいですね」と言ってしまったくらいです。
それでも那珂川シャークスの監督さんは、他からもたくさん声が掛かってるから、まぁ見てやってくださいよと。
どうだろうな思って見てましたが、いざ練習が始まると驚きました。
いきなりバッティング練習が始まったのですが、それは力強い打球で球足も速い。スイングの速さも群を抜いていて、キャッチャーとしての動きも悪くなく、遠投も100メートルくらいは平気で投げる。
思っていた以上に凄い選手だなと思い、
その場で「最初小さいと言ってしまいましたが、是非うちにチャンスがありましたら」と監督にお願いしました。
あくまで甲子園を目指す中にプロ野球の夢もある
梅野選手の恩師である杉山繁俊監督(現東海大福岡)
私が練習を見に行った際に、たまたま梅野のお祖母様も練習の手伝いにいらっしゃっていました。
那珂川シャークスの監督さんに、少し話していけばどうですかと言われて、練習後に少しお祖母様とお話しをさせていただきました。
「本当に申し訳ないのですが、最初小さいですねと言ってしまいまして…」
冗談話から始めるのもいいかなと思いましてね。
その後に、すごく良い野球センスを持っているので、ぜひウチに来て一緒に野球をしませんかとお祖母様にお伝えしました。
すでに色んなメディアでも報じられていますが、梅野は早くにお母様を亡くしてます。プロになって欲しいというお母様の願いを叶えるために、梅野はとにかくプロになりたいと言い続けてきた男でした。
私はそんな梅野の想いを踏まえて、最後に監督さんとお祖母様に次のようにお話しさせていただきました。
「私の方から、絶対にプロ野球に行けますとは言えません。過去にそのチャンスがあった選手もいましたが、それは私が育てたのではなくその子の努力によって行きました。
プロに行くための特別扱いもできません。あくまでもチームとして甲子園を目指していく中に、プロ野球という夢もあると思います。彼にもそういった気持ちでやって欲しいと思いますので、是非お考えください」
最終的には、二つか三つに絞った中から、福岡工大城東を選んでくれました。
結果として高校からプロには行けませんでしたが、大学野球での活躍に繋がった3年間になったと思っています。
前編はここまで!後編では、高校時代の成長過程や現在の梅野選手への思いも語っていただきました。後編もお楽しみに!
(取材・文=栗崎祐太朗)