Column

個人的な会話をしない「見る」コミュニケーション 古賀 豪紀監督(九州文化学園)vol.3

2019.03.28

 九州文化学園で100人近い大所帯を指導している、古賀 豪紀(こが・ひでとし)監督が考える「言葉の力」について読み解いていきたい。コミュニケーションは本当に言葉だけなのか、連載コラムのvol.3、4の2回に渡り、古賀監督の指導スタイルから無形の力について考える。

個人的な会話をしない「見る」コミュニケーション 古賀 豪紀監督(九州文化学園)vol.3 | 高校野球ドットコム今までの連載記事
vol.1:背番号は総選挙で決めるその真意 古賀 豪紀監督(九州文化学園)vol.1

vol.2:どこよりも重みのある背番号 古賀 豪紀監督(九州文化学園)

個人的な会話をしない!

個人的な会話をしない「見る」コミュニケーション 古賀 豪紀監督(九州文化学園)vol.3 | 高校野球ドットコム
インタビュー中の古賀 豪紀監督(九州文化学園)

 「僕は選手と言葉をあまり交わしません。だって100人ですよ。特定の人間とばっかり話してたらヤキモチ妬くじゃないですか。『またキャプテンとばっか喋る』とか。だから僕は絶対平等ですよ。練習の最初と最後に、皆で集合しているときなどしか話さない。個人的に喋ることはほとんどない。トップは絶対それをしてはいけないと思ってるから」

 「どうしても人間なんで喋りやすい人間と話したりするでしょ。監督もレギュラーとばっかりとか、エースとかキャプテンとか。補欠の子なんて監督と一か月も喋らないとかあるかもしれない。だから僕は絶対しないです。全部と喋れないから僕は喋らない。みんな一緒の時にしゃべる」

 100人の大所帯を指導する上で、全員と話せないならば、平等でないので個別には話さないというのが古賀監督流なのだ。逆に言えば、皆と平等に話せるだけの人数を指導している場合は、皆と平等に話すということである。

 この考えの根底も、やはり選手が主役なのである。

 野球をプレーする選手が、ヤキモチなどの余計な気持ちを持たずに、野球に集中できる環境をどのように作るかが根本にある。

 では、まったくコミュニケーションを取らないのだろうか?答えは否である。個別の会話はしないが、「見る」というコミュニケーションを取っている。つまり、監督は選手をちゃんと見ていますよ、という行動をきちんと示すのである。

[page_break:見るコミュニケーション!]

見るコミュニケーション!

個人的な会話をしない「見る」コミュニケーション 古賀 豪紀監督(九州文化学園)vol.3 | 高校野球ドットコム
九州文化学園野球部のみなさん

 それは次の古賀監督の言葉でよく分かる
「僕は、100人いても常に皆の練習を見てやろうと思っている。だから(自分で)ノックをしないのも1つはノックをしてたら、それしか見れないんじゃないですか。100人もいるのだから、バッティング練習や試合とか、そういう時は、動いてるのは全部見られるんで、常に見ています」

 見ることで、個別に会話をしないでもコミュニケーションを図っているのである。

 「選手は見てくれるのが嬉しいんですよ。ノックを打ってあげることが一番と思ってる指導者もいるんですけど、自分らか練習した気になっている。やっぱり見てやるのが一番です」

 これも、徹底した選手ファーストの考え方である。野球をするのは選手であり、指導者でない。100名の選手のために自分ができることを追求した結果だろう。

 「子供達は見てやらないと駄目ですよ。まず見てやって、それでたまに『さっきのプレイ良かったな』と言ってやると喜ぶんですよ。監督見てくれてたんだと。あっちの方のティーをしていたら、『さっきの打ち方、良かったよ』とちらっと通った時いってやるとかね。だから見てやることが僕は大事です」

 だからこそ、見ることでコミュニケーションを図っているのである。個別の会話はしないが、「見ているよ」という合図を送っているのである。だからこそ古賀監督は、「見る」コミュニケーションを大事にしている。

 大所帯をまとめる古賀監督流の、選手との距離感には、指導者とは誰のためにいるのかを再度考え直させてくれる大事な要素が、沢山散りばめられている。

文=田中 実

 次回のコラムも引き続き「言葉の力」についてです!

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

関連記事

応援メッセージを投稿

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

RANKING

人気記事

2024.05.22

【愛知・全三河大会】三河地区の強豪・愛知産大三河が復活の兆し!豊川を下した安城も機動力は脅威

2024.05.22

【秋田】明桜と横手清陵がコールド勝ちで4強入り<春季大会>

2024.05.22

阪神・佐藤がフェンス直撃のタイムリー!昨日のHRに続き今日もバットで結果!再昇格へ連日アピール!

2024.05.22

【愛知・全三河大会】昨秋東海大会出場もノーシードの豊橋中央が決勝進出、147キロ右腕・内山など投手陣に手応え!名指導者率いる三好も期待の 1、2年生が出場

2024.05.22

【福島】学法石川と聖光学院が4強入り、準決勝で激突<春季県大会>

2024.05.21

【大学野球部24年度新入生一覧】甲子園のスター、ドラフト候補、プロを選ばなかった高校日本代表はどの大学に入った?

2024.05.17

「野球部や高校部活動で、”民主主義”を実践するには?」――教育者・工藤勇一さん【『新しい高校野球のかたち』を考えるvol.5】

2024.05.19

【東海】中京大中京がコールド勝ちで17年ぶり、菰野は激戦を制して23年ぶりの決勝進出<春季地区大会>

2024.05.20

【春季京都府大会】センバツ出場の京都国際が春連覇!あえてベンチ外だった2年生左腕が14奪三振公式戦初完投

2024.05.20

【24年夏全国地方大会シード校一覧】現在31地区が決定、宮城では古川学園、仙台南、岩手では盛岡大附、秋田では秋田商などがシードを獲得

2024.04.29

【福島】東日本国際大昌平、磐城、会津北嶺、会津学鳳が県大会切符<春季県大会支部予選>

2024.05.21

【大学野球部24年度新入生一覧】甲子園のスター、ドラフト候補、プロを選ばなかった高校日本代表はどの大学に入った?

2024.04.29

【岩手】盛岡中央、釜石、水沢が初戦を突破<春季地区予選>

2024.04.23

床反力を理解しよう【セルフコンディションニングお役立ち情報】

2024.05.15

【全国各地区春季大会組み合わせ一覧】新戦力が台頭するチームはどこだ!? 新基準バットの及ぼす影響は?