個人的な会話をしない「見る」コミュニケーション 古賀 豪紀監督(九州文化学園)vol.3
九州文化学園で100人近い大所帯を指導している、古賀 豪紀(こが・ひでとし)監督が考える「言葉の力」について読み解いていきたい。コミュニケーションは本当に言葉だけなのか、連載コラムのvol.3、4の2回に渡り、古賀監督の指導スタイルから無形の力について考える。
今までの連載記事
vol.1:背番号は総選挙で決めるその真意 古賀 豪紀監督(九州文化学園)vol.1
vol.2:どこよりも重みのある背番号 古賀 豪紀監督(九州文化学園)
個人的な会話をしない!
インタビュー中の古賀 豪紀監督(九州文化学園)
「僕は選手と言葉をあまり交わしません。だって100人ですよ。特定の人間とばっかり話してたらヤキモチ妬くじゃないですか。『またキャプテンとばっか喋る』とか。だから僕は絶対平等ですよ。練習の最初と最後に、皆で集合しているときなどしか話さない。個人的に喋ることはほとんどない。トップは絶対それをしてはいけないと思ってるから」
「どうしても人間なんで喋りやすい人間と話したりするでしょ。監督もレギュラーとばっかりとか、エースとかキャプテンとか。補欠の子なんて監督と一か月も喋らないとかあるかもしれない。だから僕は絶対しないです。全部と喋れないから僕は喋らない。みんな一緒の時にしゃべる」
100人の大所帯を指導する上で、全員と話せないならば、平等でないので個別には話さないというのが古賀監督流なのだ。逆に言えば、皆と平等に話せるだけの人数を指導している場合は、皆と平等に話すということである。
この考えの根底も、やはり選手が主役なのである。
野球をプレーする選手が、ヤキモチなどの余計な気持ちを持たずに、野球に集中できる環境をどのように作るかが根本にある。
では、まったくコミュニケーションを取らないのだろうか?答えは否である。個別の会話はしないが、「見る」というコミュニケーションを取っている。つまり、監督は選手をちゃんと見ていますよ、という行動をきちんと示すのである。
見るコミュニケーション!
九州文化学園野球部のみなさん
それは次の古賀監督の言葉でよく分かる
「僕は、100人いても常に皆の練習を見てやろうと思っている。だから(自分で)ノックをしないのも1つはノックをしてたら、それしか見れないんじゃないですか。100人もいるのだから、バッティング練習や試合とか、そういう時は、動いてるのは全部見られるんで、常に見ています」
見ることで、個別に会話をしないでもコミュニケーションを図っているのである。
「選手は見てくれるのが嬉しいんですよ。ノックを打ってあげることが一番と思ってる指導者もいるんですけど、自分らか練習した気になっている。やっぱり見てやるのが一番です」
これも、徹底した選手ファーストの考え方である。野球をするのは選手であり、指導者でない。100名の選手のために自分ができることを追求した結果だろう。
「子供達は見てやらないと駄目ですよ。まず見てやって、それでたまに『さっきのプレイ良かったな』と言ってやると喜ぶんですよ。監督見てくれてたんだと。あっちの方のティーをしていたら、『さっきの打ち方、良かったよ』とちらっと通った時いってやるとかね。だから見てやることが僕は大事です」
だからこそ、見ることでコミュニケーションを図っているのである。個別の会話はしないが、「見ているよ」という合図を送っているのである。だからこそ古賀監督は、「見る」コミュニケーションを大事にしている。
大所帯をまとめる古賀監督流の、選手との距離感には、指導者とは誰のためにいるのかを再度考え直させてくれる大事な要素が、沢山散りばめられている。
文=田中 実
次回のコラムも引き続き「言葉の力」についてです!