「明確な目的」でブレない行動!魅力ある大型右腕・小林 珠維(東海大札幌)・前編
北の大地に現れた大型右腕小林 珠維(こばやし・じゅい)は、投打でチームの柱となっている。東海大札幌で寮長も務める丸石 隼伸は、「秋の大会ではエースで4番です。投げては速球で相手を圧倒し、ピンチの場面で登板した際も相手の流れを一瞬で立ち切る投球をしてくれました。打つ方も『つなげば後ろに小林がいる!』という存在感が大きかったです」と秋季大会の小林について話してくれた。
また、バッテリーを組んだ横地 純弥も「札幌創成戦の満塁のピンチで小林珠維にピッチャーが変わってその回のピンチを乗り切った」と、登場とともに球場の雰囲気を変えた小林について信頼を寄せている。
そんな小林が、この冬更なる進化を遂げようとしている。大型右腕の現在地と今後の成長曲線について考察したい。
プロ野球選手になるために
インタビューを受ける小林 珠維(東海大札幌)
インタビューの始めに小林に今年の目標を聞いてみた。
「1つ目は、(秋の大会で)全道大会にも出場することができていないので、まずはチーム一丸となって[stadium]甲子園[/stadium]に行くのが目標です。また、2019年のドラフト会議でプロ野球選手になる、プロのスタートラインに立つということが1番の目標です。」
しっかりとした言葉で、現在の目標を話してくれた。この目標の先にはプロ野球選手で活躍するという目的を感じられる。この『明確な目標』が今、小林の成長を加速させている。
大脇英徳(おおわき・ひでのり)監督(東海大札幌)は、
「目的ができた。[stadium]甲子園[/stadium]も大事なんですけど、俺は将来絶対プロに行くんだというそこが定まってきた。進路への意識が取り組みを変えてきてる。目標がはっきりしたことが本人が変わりつつある大きな要因です」
と話してくれた。小林の受け答えで一貫して感じるのは『明確な目標』である。
今回の連載インタビューでは小林の中にある『明確な目標』を中心に、将来性抜群の右腕の素顔に迫っていきたい。
[page_break:更なる成長に向けて]更なる成長に向けて
小林 珠維投手のストレートの魅力を語った、相棒・横地 純弥捕手
小林の武器はなんと言っても最速146キロのストレートだろう。バッテリーを組んでいる横地 純弥捕手も
「ストレートが早いのでストレートでどんどん押していきます」と小林をリードする時の話をしてくれた。
ただし、小林は自分のストレートに満足していない。この冬はストレートの「キレ」を意識して練習に取り組んでいる。
「ストレートが速いピッチャーと、速く見えるピッチャーといて、自分はまだキレが足りない。ただ見ていて速いだけなので、打席に立ったら速く見えるストレートに向けて、真っ直ぐのキレをあげていきたいです」
「キレを出すために、2キロのサンドボールを1日何百回も行ったり、下半身がまずないと上もついてこないと思うので、去年よりもスクワットやデッドリフトとかを主に行っています。またちっちゃい筋肉、インナーマッスルなど細かいところまで鍛えるようにしています」と具体的なアクションプランも語ってくれた。
キレを出すという『目的』を理解しながら身体を鍛えているのがわかる。
更に言えば、キレが出ることで、自分の目標でもあるプロ野球選手に近づける、という明確な意識が垣間見える。だからこそ、小林はブレずにやるべき事をやれるのである。
小林 珠維投手のブルペンの様子
大脇監督は「学校の様子も、練習の様子も、自分というものを持てるようになってきました。周りの状況に影響されず、自分はこれだけはやらないといけないからと、『俺は俺のペースだ』という姿勢がたくさん見られるようになってきてます。ウエイトトレーニングをしてても俺はこれをやんないといけないんだ、とすごい集中力を持って行っています」と話してくれた。
『明確な目的』の上でのブレない行動こそが今の小林の最大の武器だろう。
もちろん、ストレートだけでなく変化球を磨くことに関しても余念がない。
「大きいカーブとスライダーと今考えてるんですけど、チェンジアップと、あともう一つ。まっすぐと似てるんですけど、ちょっと動くまっすぐを試しています。ただ、それは時間が少しかかるかなと」
もう言うまでもないだろう、変化球を磨く、それは小林の『明確な目標』があるからだ。
小林はこの冬、ストレートと変化球両方の精度を上げて『プロ野球選手になるために』投球の幅を広げようとしている。
前編はここまで。中編では小林投手のプレースタイルや理想の選手像について語ってもらいました。中編もお楽しみ!
文=田中 実