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仙台育英に”強気の”完投勝利したサウスポーに強力ライバル現る! 「心の緩みがあった」秋の悔しさでチーム内競争激化!【野球部訪問・東陵編②】

2024.04.17


眞壁 悠斗

東陵高校野球部(宮城県気仙沼市)が春の東北大会出場を目指し練習に励んでいる。昨年は宮城県大会で春、夏、秋と続けて4強入り。春、秋はいずれも3位決定戦で敗れ、東北大会出場は惜しくも逃した。一冬越え、進化を遂げた東陵の選手たちを紹介する。

エースナンバーを争う左右の二本柱

投手陣の中心は昨秋背番号「1」を背負った長身左腕・熊谷 太雅投手(3年)。県大会準々決勝で仙台育英打線相手に9回1失点完投勝利をやってのけ、一躍注目を集めた。「(怖さは)少しありました」と強敵を意識しながらも、角度のある直球で果敢にインコースを攻める強気の投球を披露した。「こんなに強いチームに勝てるんだ。自分のストレートが強豪校の打者にも通用するんだ」。高校入学後、一番の手応えをつかんだ。

しかし、続く準決勝の古川学園戦は4回2失点、東北大会出場を懸けた仙台一戦は4回途中5失点と、仙台育英に勝利したあとは先発で試合をつくることができなかった。熊谷は「自分のコンディションも良くなかったですし、仙台育英さんに勝ったことでいろんな方が見に来ていたので、緊張が勝ってしまった」と振り返る。

今オフは筋力トレーニングや食事トレーニングに力を入れ、体づくりに努めた。身長184センチに対して体重66キロとまだまだ線は細いが、冬の期間に約4キロ増量した。現在最速で130キロ台前半の直球は磨いている最中。未完の大器は春、そしてその先の夏に向け成長を続ける。

熊谷 太雅

そんな熊谷にライバル心を燃やす投手がいる。昨秋は背番号「7」だった右腕の眞壁 悠斗投手(3年)だ。昨春の県大会では2試合に救援登板。熊谷よりも早く公式戦のマウンドに立った。結果的には2試合とも失点を喫し、中でもあと1点失えばコールド負けが決まる状況で登板した準決勝の仙台育英戦では、1死しか取れずにサヨナラ打を浴びる屈辱を味わった。

「今の自分のレベルでは通用しない」と痛感し、練習量を増やしたものの、夏はメンバーを外れ、秋は熊谷に背番号「1」を譲った。秋は初戦の大崎中央戦で8回1失点と好投するなど実力を発揮した一方、リードした展開で登板した準決勝は5回7失点と崩れ敗戦投手に。仙台育英に勝利した試合も自身の登板はなく、「チームが勝ったのはうれしかった」としながらも「熊谷が大黒柱になって一人で抑えているのが悔しかった」と本音を明かした。

悔しさが募った1年。それでも、眞壁は下を向かなかった。「(熊谷は)仲間ですし、二人で抑えたい気持ちもあるんですけど…絶対に熊谷に勝とうと思って、背番号『1』を目標にこの冬はやってきました」。ウエイトトレーニングで下半身を鍛えた結果、最速130キロ前後だった球速が最速140キロまでアップ。元々武器としていた直球の質がさらに向上した。

タイプの異なる二人だが、春に向けては「チームを勝たせるピッチングをしたい」と声を揃えた。東陵の投手陣を牽引する左右の二本柱に今春も注目だ。

経験豊富な強打者が打線引っ張る

打線は昨秋の県大会では5試合で28得点と機能した。全試合で4番に座った齋藤 大翔外野手(3年)が打率.455、1本塁打と結果を残し、佐藤 春希内野手(3年)、高野 聡介外野手(3年)らも高打率をマークした。

同じく3割超の打率を残し、勝負強さも発揮した右の強打者・沼田 和丸外野手(3年)は、野手陣の中では主将の飯塚 祐太内野手(3年)と並ぶ経験値を誇る。昨年は春、夏の県大会も複数ポジションで試合に出場。主力選手の多くを占めていた1学年上の代に割って入り、存在感を示した。沼田は「今の自分があるのは、先輩たちが負けていても最後まで諦めない粘り強さを教えてくれたから。自分はそのことを、プレーを通じてチームメイトに伝えたい」と力を込める。

昨秋、仙台育英に勝利した試合では、4回に先制の適時打を放った。1死一、二塁の好機で打席に立ち、「頭は真っ白だった」。それでも「打つしかない。とりあえず来た球を振ろう」と必死に食らいつくと、左前に落ちる安打になった。今年も打線の中軸を担い、培ってきた勝利への執念をチーム全体に伝播させるつもりだ。

沼田 和丸

攻守の要である三宅 翼颯捕手(3年)もキーマンの一人。夏までは打撃面に課題を感じていたが、秋の地区大会前にノーステップ打法に変え、バットを寝かせて肩に担ぐ構えを取り入れると、打席でボールがよく見えるようになった。

県大会は全試合で安打を放ち、打率.400をマーク。守っても複数の投手陣を好リードした。今オフは打撃はもちろん、ブロッキングなど守備力の強化に重きを置いてきたという三宅。「キャッチャーは司令塔。投手からも野手からも『こいつに任せておけば大丈夫』と信頼されるキャッチャーになりたい」と意気込んでいる。

三宅 翼颯

昨秋4強止まりとなった要因について、選手たちは「心の緩みがあった」「隙を突かれた」などと口にした。今年は昨年得た収穫と課題を生かし、先輩たちから受け継いだ「粘り強い」野球を貫く。

(取材=川浪康太郎)

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この記事の執筆者: 川浪 康太郎

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