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規則委員会からの提言!ベンチ前キャッチボールを考える

2018.03.10

規則委員会からの提言!ベンチ前キャッチボールを考える | 高校野球ドットコム

 一昨日取り上げた、“ミットを動かすな”運動に続いて、今回はベンチ前のキャッチボール禁止へ向けての提言を考えてみたいと思います。1月にアマチュア野球規則委員会から、日本野球連盟(社会人野球)、日本学生野球協会、全日本大学野球連盟、日本高等学校野球連盟、全日本軟式野球連盟の5団体に宛てた提言にはこう書かれています。

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 提言からもわかるように、日本では厳格に適用してこなかった野球規則の一部が、東京オリンピックを2年後に控えている状況で、国際基準に合わせようと急速に進んでいるとも考えられます。

 まずは高校野球の反応から。

 2月の日本高等学校野球連盟理事会後に窪田哲之審判規則委員長が取材に対応した際、「ベンチ前のキャッチボールについては、今シーズンは従来通り」と話し、認められる方針になりました。これは、大学や社会人に比べて高校野球は裾野が圧倒的に広く、すぐに採用して周知するのは難しいということが一つの理由です。さらに地方など球場設備面での懸案もあります。竹中雅彦事務局長も「国際化は非常に大事だと思っています。ただ、我々はトップだけを見てはいけない。加盟校全てに気を配らなければ」と話します。

 それでも、来シーズン以降は状況を見ながらも、ベンチ前のキャッチボール禁止についての検討をする可能性はあるとも話しています。そうなれば、投手のイニング間の投球練習の球数について増やす可能性もあると明かしています。高校野球では現在、例外を除いて、登板初回は7球、それ以外のイニング間は3球が一般的なルールです。

 ご存知の方も多いと思いますが。公認野球規則5.07(b)に準備投球についての記述があるんです。

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 近い将来、ベンチ前のキャッチボールが禁止になるかもしれないということは、対案として、準備投球8球までか1分以内にという公認野球規則通りの運用が求められます。

[page_break:採用する方針を示している社会人野球はどうしてるの?]

 実は今シーズンからベンチ前のキャッチボール禁止を採用する方針を示している社会人野球では、そのかわりに、これまで登板初回の8球を除いてイニング間の投球を5球にしてきましたが、それが撤廃されて1分以内とすることになりました。

 大学野球は努力目標として、各連盟に任されることになります。先日、ある大学連盟の審判の方にお話を伺うと、「ウチのリーグでは、今シーズンは採用しないけど、来シーズンからは採用される可能性がある。監督会議などでその旨を伝えることになるのでは」と話していました。

 ベンチ前のキャッチボール禁止については、選手のこれまでの“慣れ”も考えると相当な猶予期間が必要なのではないかと思います。高校や大学では指導者が『将来ベンチ前のキャッチボールが禁止されても対応できるように』と今のうちから指導する必要があるのではないでしょうか。

 また少年野球の時から、ベンチ前のキャッチボールをしない癖をつけることも大事になります。今シーズン、中学生の団体であるリトルシニアではこう規定されました。

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 ボーイズリーグやヤングリーグなどがどうするかはまだ表には出てきていませんが、少年野球からベンチ前のキャッチボールをしない癖をつけていけば、大人の野球へ向けても自然となくなってくるのではないでしょうか。

 さて、アマチュア野球規則委員会の提言の中に、【2アウトになるとベンチ前でキャッチボールを始めることが通例となっています】という部分があります。

 社会人野球やプロ野球のパ・リーグ、多くの大学リーグではDH制を採用しているため、投手は自分の打順を気にせずに、基本は2アウトから出てきてキャッチボールを始めます。しかし、高校野球など投手が打席に立つ場合は、自分の打順を考えて早いアウトカウントからキャッチボールを始めるケースもあります。

 ただ、試合取材でカメラ席にいるとよくわかるのですが、打順が遠いにも関わらず、ベンチに戻って一服するとすぐに、0アウトからでもキャッチボールを始める投手が時々見られます。以前、「すぐにキャッチボールを始めないと落ち着かないんです」と話していた投手もいました。こういう声を聞くと、正しい表現ではないかもしれませんが、ベンチ前でキャッチボールをすることが、不安を打ち消すための精神安定剤代わりとなっていないでしょうか。

 逆に投手がベンチ前でキャッチボールを全然できないシチュエーションと言えば、先頭打者で出塁し、塁上で攻撃を終わることでしょう。この時は絶対にベンチ前でのキャッチボールはできませんよね。

 もう一つ、ベンチ前のキャッチボールについて触れなければいけないのは交代して出場する野手です。投手ほど注目されていないのですが、野手もベンチ前に出てキャッチボールや捕球練習をしているケースがあります。これも2アウト時に限ったことではないというのが印象です。その時点では出場していない選手なので、攻撃中だけでなく、守備中にキャッチボールが見られることがあります。

 各団体や各都道府県で様々なルールを作っていますが、その中から今年の春季沖縄県大会の細則を紹介します。

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 内野手であれば、ゴロの捕球練習をしたくなる気持ちもわかります。この件は各都道府県によって規定が違う部分もあるので、試合前に十分な確認をしてはいかがでしょうか。

 ベンチ前のキャッチボールのことについては様々な意見があります。全面禁止するとなると、故障につながる可能性があるという声もわかります。さらにイニング間の投球練習を増やせば、試合時間短縮に逆行するという声も無視できないと思います。しかし、東京オリンピックを2年後に控えている中での国際化・・・日本の球界全体で取り組むべき難しい課題です。最終的にルールを作るのは規則委員会や各団体です。果たして2年後、野球はどうなっているのでしょうか。

 ただしひょっとすると、東京オリンピック後には、何もなかったかのように話題にすらなってないかもしれません。

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参考
● アマチュア野球内規 2018
● 高校野球特別規則 2018

(文:松倉雄太)

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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