Column

網谷 圭将(横浜DeNAベイスターズ)「背番号『100』のスラッガー候補」

2017.03.28

 「侍ジャパン」や「一流選手」の称号へ向かって日々、レベルアップに励んでいる「プロ野球ネクストヒーロー」。このコーナーでは高校野球で一時代を築いた選手たちのプロ入りまでのプロセスと現在の活躍に迫っていきたい。

 今回は横浜DeNAベイスターズの育成選手・網谷 圭将(捕手・19歳)をピックアップ。千葉英和(千葉)時代は高校通算33本塁打を放ち、右の強肩強打捕手として注目された網谷。育成枠指名からのスタートながらアレックス・ラミレス監督に見込まれ、1年目からシーズン前には一軍での実戦に出場。スラッガーとして貴重な経験を積んでいる彼のこれまでと今後への期待を綴る。

「育成選手からスラッガー大成者」の最右翼

網谷 圭将(横浜DeNAベイスターズ)「背番号『100』のスラッガー候補」 | 高校野球ドットコム

網谷 圭将(千葉英和時代)

 2005年にスタートしたNPBの「育成選手制度」。過去11年間で「育成出身」での大成する選手も以下のように多数出現した。

山口 鉄也(読売ジャイアンツ・投手)
2009年侍ジャパンWBC代表、2013年侍ジャパンWBC代表
松本 哲也(読売ジャイアンツ・外野手)
2009年セントラルリーグ新人王
中村 真人(元:東北楽天ゴールデンイーグルス・外野手)
2009年101試合出場
内村 賢介(元:東北楽天ゴールデンイーグルスなど・内野手)
2010年~2012年 3年連続で100試合出場 通算100盗塁
岡田 幸文(千葉ロッテマリーンズ・外野手)
2011年、2012年ゴールデングラブ賞
山田 大樹(福岡ソフトバンクホークス・投手)
2012年規定投球回到達
千賀 滉大(福岡ソフトバンクホークス・投手)
2016年12勝、2017年・侍ジャパンWBC代表(ベストナイン) ※関連記事

 各人の入団当時を振り返ると山口、山田、千賀の投手3人は、入団時点は同期の中で決して能力が高い選手ではなかった。その状況から努力で中継ぎの座をつかみ、そこからステップアップしてきた。また、野手では松本、内村、岡田のような俊足巧打タイプの選手が軒並み活躍してきた。

 このような傾向の一方、育成選手からスラッガータイプの大成はまだないのが現状だ。ただ、網谷はその概念を一気に払しょくする可能性を秘めている。事実、彼の野球遍歴は「スラッガー」と共にあった。小学校6年時は千葉ロッテマリーンズジュニアとして、NPB12球団ジュニアトーナメントに出場した網谷は、市原市立ちはら台南中学時代は千葉県の名門シニア・千葉市シニアに所属。郡司 裕也(現・慶應義塾第2年関連記事)とともに第18回リトルシニア全国選抜野球大会で優勝も経験している。

 千葉英和高では1年夏の千葉大会から「6番・サード」でスタメン。初戦の昭和学院秀英戦で4打数2安打。流山南戦では「8番・ライト」で2打数1安打。4回戦の横芝敬愛戦では1打数1安打。3試合で7打数4安打の鮮烈デビューを飾ると、1年秋の千葉県大会我孫子戦ではホームランを放ち、自慢の長打力を発揮するようになっていった。

[page_break:チャンスを今こそつかみ、横浜の星となる]

 2年夏は「4番・キャッチャー」として先発。1年前よりも体が絞られ、筋肉質の体型から3回戦長狭戦では4打数3安打。リリーフとしても135キロ前後のストレートを披露した網谷だったが、結局4回戦で敗れ、2年秋も千葉県大会初戦敗退に終わった。そんな苦しい時期にあっても網谷は、自らを高める作業を続ける。

 その成果は3年春の県大会2回戦の千葉黎明戦で凄い当たりとなって現れる。1学年下の好投手・川口 廉(現・JFE東日本)から放った一発は、推定140メートルの大アーチ。この残像は3年夏の千葉大会松戸国際に敗れ初戦敗退に終わってもスカウト陣にはっきり残っていた。

 高校通算33本塁打を打った長打力、強肩を武器にプロ志望届を出した結果は……。2015年・ドラフト会議で、横浜DeNAベイスターズから育成ドラフト1位指名。2016年2月1日、183センチ83キロの18歳は、Baystarsの背番号「100」ユニフォームを身にまとって二軍キャンプ地の[stadium]嘉手納球場[/stadium]に降り立った。

チャンスを今こそつかみ、横浜の星となる

網谷 圭将(横浜DeNAベイスターズ)「背番号『100』のスラッガー候補」 | 高校野球ドットコム

網谷 圭将(千葉英和時代)

 そんな網谷にチャンスはすぐ訪れた。捕手としての能力をアレックス・ラミレス監督が評価し、2月18日に一軍キャンプに合流。韓国・SKワイバーン戦との練習試合で左有鉤骨骨折した影響で、二軍戦では19試合で打率.184に終わっても、奄美大島で行われた秋季キャンプでは捕手だけではなく、三塁手としての練習も重ねた。キャンプ終了後には、11月25日から12月18日まで開催されたアジアウインターリーグのイースタンリーグ選抜メンバーにも選出される。

 異国の地、チャイニーズ・タイペイで網谷はついにチャンスをつかんだ。16試合に出場して、50打数18安打、打率.380、6打点。2年目はスタートから宜野湾市での一軍キャンプに召集される。そして、網谷は2月13日、阪神タイガースとの練習試合で左腕・横山 雄哉からバックスクリーンへの先制弾。背番号「100」が強烈なインパクトを[stadium]宜野座村野球場[/stadium]に詰めかけた虎党に与えた。

 アレックス・ラミレス監督はそんな網谷について「次の筒香(嘉智)になるポテンシャルがある」と評する。現在は二軍の主軸として経験を積む網谷の見据える先は「育成選手出身初のスラッガー誕生」、その上にある横浜の星「侍ジャパンの4番」へ。彼のサクセスストーリーは2017年、開花の時を迎えようとしている。

(文=河嶋 宗一

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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