Column

県立武生商業高等学校(福井)

2017.03.02


集合写真(武生商)

ノックではなく、監督が実際に打った生きた打球で守備練習

■武生商はどんな学校?
福井県越前市にある福井県立武生商業高等学校は1965年に丹南地域における商業教育の拠点校として開校。現在は情報処理科、商業科、情報ビジネス科を設置している。部活動は、リオ、ロンドン五輪代表の佐藤 希望選手を送り出したフェンシング部やバドミントン部、吹奏楽部が強豪として知られている。野球部は昨春の福井大会で8強。昨秋も準々決勝で福井商に敗れたもののベスト8に進出した。

■武生商野球部の紹介

現在、野球部は2年生14名、1年生7名の計21名。野村 健吾主将は現チームを「2年生に経験があり、守備力が高い」と、見ている。また、ノックではなく、野口 大輔監督が実際に打った、生きた打球を処理する通称・外野実弾が恒例の守備練習だ。

■武生商を引っ張る選手は?

秋季大会
では野村主将をはじめ、大塚 理功選手、内田 和希選手、城野 達哉選手、西川 諒選手、池川 怜侍選手、宮川 侑豊選手、宇野 開登選手、前澤 佑哉選手が次のバッターにつなぐ活躍を見せた。また、内田選手はベンチプレス100kgを上げる怪力の持ち主で、そのパワーに期待がかかる。

■秋季大会で得た手応えと課題

福井大会
2回戦で夏の甲子園帰りの北陸と対戦した武生商。2点を先制し、6回に1点を返されたが、大塚投手が虎の子の1点を守りきり2対1で勝利を飾った。しかし、「秋季大会は悔しい大会だった」と、話す野村主将。準々決勝では福井商に1対2で敗れた。「攻撃力、守備力ともに課題が残りました。ですから、今春は自分たちのミスで点数を取られないこと。そして、チャンスは作るが点を取りきれなかった攻撃力をアップし、いろいろな方法で得点を奪う決定力を付けたいです」

■この冬の意気込み
冬は体育館が他部活と共用のためトレーニングルームでのウエイトトレーニングや、学校の階段を使ってトレーニングなどもしている武生商。このオフシーズンは「チーム全体として体力アップと守備の安定が目標」で、「春はどんな姿になりたいのか、自分でビジョンを描いてどういう練習をするべきか。自ら考えて動けるようになっていきたいです」と、野村主将は話している。

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[page_break:「今」を大切にする「今に生きる」が合言葉]

「今」を大切にする「今に生きる」が合言葉

 ここからは前澤 佑哉選手(2年)と内田 和希副主将(2年)にお話を伺います。

前澤佑哉選手(武生商)

Q. 秋に見つかった課題は何でしたか?

前澤:体力、コントロール、変化球と、ピッチャーの総合力がまだまだ足りないことが分かりました。
内田:打撃面で差を感じました。秋季大会も福井商から1点しか取れずに負けてしまったのでそこが課題です。3番打者として物足りない結果だったので、冬はしっかり振り込みます。

Q. この冬はどんな冬にしたいですか?

前澤:「継続」をテーマに一日一日を大切にし、自分に負けずに練習をしていきたいです。
内田:体を一回り以上大きくしてスイング力をつけたいです。そのために何をするかを自分で考えてメニューを組むことで、考える習慣もつけたいです。

内田和希選手(武生商)

Q. モットーや好きな言葉は何ですか?

前澤:「一生懸命を楽しむ」です。
内田:「今に生きる」です。今すぐ変えることができるのは「今」だけ。過去や未来よりも「今」を大切にしようという意味で、『スラムダンク勝利学』の著者である、辻 秀一先生のメンタルトレーニングのなかで、教えていただいた言葉です。

Q. 他のチームに負けないこのチームの長所は何ですか?

前澤:好きなところは、守備にこだわっていること。守備こそが最大の攻撃です。他のチームに負けていないところは、一人ひとりの甲子園に行きたいという気持ち。そのためのハードワークや食トレなどみんなが意識を高く持って取り組んでいます。
内田:仲の良いところが好きです。全員とのコミュニケーションは他のチームに負けていないです。

Q. この冬の目標宣言をお願いします。

前澤:総合力で福井県NO.1のピッチャーになり甲子園に行く!
内田:今の自分は180センチ、83キロなので、体重は(身長-95)の85キロに。スイングスピードは140キロの数値を目指して、しっかりトレーニングしていきます!

 前澤選手、内田選手ありがとうございました。

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[page_break:高校生は「心→体→技」]

秋季大会の様子(武生商)

高校生は「心→体→技」

 最後に、野口 大輔監督にお話を伺いました。

Q. 新チームのチーム作りはどのようにされましたか?また、この冬のテーマも教えて下さい。

 前チームから、バッテリー、内野手が残ることが分かっていたので、夏休みは、高岡商(富山)、県岐阜商、遊学館(石川)、彦根東(滋賀)など甲子園常連校にも胸を貸していただいて試合数を多くこなし、その中で足りない部分を確認して、日々練習を積み重ねていきました。
右のパワーピッチャーの前澤、左の技巧派の大塚、成長著しい右のサイドハンドの木村、一昨年の鯖江市長旗優勝の立役者で技巧派の福田らを中心に相手に応じた投手を登板させることで、守備からリズムを作り、自分たちから崩れないチームを目指してやってきました。

Q. 冬の強化ポイントを教えてください。

 目標は秋の福井大会で3位までに入り、北信越大会で1勝を挙げることでした。福井大会では1回戦が前澤、2回戦は夏の甲子園帰りの北陸を大塚が抑え、準々決勝に進みました。相手は福井商で1点及ばず、1対2で悔しい敗戦となりました。目標としていた「自分たちからは崩れない野球」は実践できたのですが、やはり攻撃力の部分が足りないと、選手も私も感じました。

 その後は、経験のあるレギュラーメンバー(Aチーム)と、その次のグループ(Bチーム)に分け、Aチームは自分たちで考える力を。秋から試合に出始めた者が多いBチームのメンバーには、今一度基本に戻り、スイングやティーバッティング、捕り込みなど、数をこなすなかで自信をつけ、チームのレベルの底上げを図ろうと取り組んできました。

 12月に入ってからは、こちらがメニューを与えるのではなく、選手たちで考えて練習メニューを組んでいくという取り組みも始めました。選手の意識も、「次こそは、福井商などを倒して甲子園」という意気込みが強くなってきたので、今のところ功を奏しているように思います。また、12月の終わりには、2012年から何度かメンタルトレーニングの講習会をお願いしてきた『スラムダンク勝利学』の著者・辻 秀一先生に武生までお越し頂き、改めてメンタルトレーニングを行っていただきました。

 それ以降、選手もより自分たちで考えて行動することの大事さ、フロー(辻先生の提唱するメソッド)の価値を常に意識することの大事さを実感しているようです(FLOW DO IT.やるべき事を行う)。それにより、体力がついたり、体が大きくなったりすることで、今までできなかったこと(技術)ができるようになる。そのように考えています。心技体という言葉がありますが、高校生は「心→体→技」ではないかと。

 また、12月の先生の講習後には、より自主性・主体性を伸ばしていくために、グループに分かれて選手間ミーティングを毎日実施するようになりました。それによって今まであまり発言してこなかった選手からも意見が出るようになり、春が楽しみになっています。

 冬はとにかく自分との戦いだと思っています。自分が掲げた目標にどれだけ近付こうと努力するのか? やれと言われてやっているうちは、本当の力は身につかないのではないかと考えています。そのため、青山学院大学の駅伝部が実行されている、目標の設定やビジョンの明確化を参考に、月に1度、目標の可視化を行っています。

 今年の冬は福井にしては珍しく雪が少なく、1月初めには2日間紅白戦も行うことができました。外で野球ができる喜びと、それまでトレーニングしてきた成果が実感でき、その後、より高い目標を掲げることのできた選手も多いように感じました。これまでのOBの悔しい思いを、今年の春、夏に晴らせるよう頑張っていけたら良いと思っています。

Q. 冬の練習に励む選手にメッセージをお願いします。

 雪が少ないとはいえ、やはり外での練習は難しい日が多く、室内でのトレーニングなど地道な練習がほとんどです。秋の悔しさを忘れずに日々、こつこつと積み上げていってほしいと思っています。
「何も咲かない寒い日は、下へ下へと根を伸ばせ。やがて大きな花が咲く」
この言葉を胸に、共に頑張って行きたいです!

 野口監督、そして武生商業高校野球部の皆さんありがとうございました。


今年も大好評!
冬が僕らを強くする 特設ページ
各チームのページ下部にあるフォトギャラリーもお見逃しなく!

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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