Column

横浜打線を抑えられるか?テイクバック0左腕・渡辺法聖(東北)は真の変則派だった!

2016.08.09

 優勝候補・神奈川横浜の初戦の相手が宮城東北に決まった。宮城東北のエース・渡辺 法聖が神奈川横浜打線が苦しめるのではないか?と注目される。その理由は、テイクバックをしない、「テイクバック0投法」を軸とした変幻自在な投球だ。

 2年まで全く実績なし。試行錯誤を続け、ようやくこの投法を見つけ出した渡辺は、今年の宮城大会で快投を続け、48イニングを投げて、僅か8失点。決勝戦の利府戦では2安打完封勝利で甲子園出場に導いたのだ。その渡辺のピッチングをじっくりと見ると、長い時間をかけて作り上げた、真の変則派左腕であることが分かった。

テイクバックをしないのではなく、効率的な動きでキレのあるボールを投げる

渡辺 法聖(東北)

 投手においてテイクバックを全くしないということはありえない。バックスイングする動作は、力のあるボールを投げるためには欠かせない動作。ここから、腰、体幹といった「軸」となる部分を連動させて腕を振ることで、力強いストレートを投げることができる。このバックスイングがなければその連動もできないのだ。

 渡辺の動作をじっくりと見ると、確かにテイクバックの動きは小さい。だが招き猫のような動作の中でも、若干バックスイングを取って、トップを作っているのだ。渡辺は始動から足を上げて、テークバックを取るまでの動作で、全く腕が見えないように工夫している。打者からすれば、なかなか腕の振りが見えない。

 そこから腰の回転と腕の振りを連動させることができており、変則的に見えても、投球のメカニズムはスムーズなのだ。渡辺はこのフォームで、130キロ~130キロ後半の速球を投げ込み、最速139キロ。変則的なフォームになる投手はどうしても動作がぎくしゃくしたものになり、球速が出ない投手が多いが、渡辺の場合、リリースの時にしっかりと肘が立って、投げることができる。細かい動作を見ていくと強いストレートを投げられる腕の振りをしている。

 タイミングが取りにくい、出所が見えにくい、さらにスピードは130キロ後半と想像以上に出ている。これは打者からすれば厄介。渡辺はこのフォームで1つのウリができているのだ。

[page_break:次なる課題は外角に沈む変化球を 目指すは武田勝、山本昌のような投手を]

次なる課題は外角に沈む変化球を 目指すは武田勝、山本昌のような投手を

 さて渡辺にしかない武器を身に付けたが、もちろんこれでパーフェクトではない。まだまだ課題はある。渡辺の投球を見るとストレートは両サイドへ投げ分け、さらにスライダーを低めに集める投球。右打者にはインコースへズバッとついて打ち取る投球があるが、まだ沈むボールがない。

 やはり上で活躍する左の技巧派投手は沈むボールで打ち取ることができる。昨年、50歳で引退した山本 昌氏はスクリューがあり、武田 勝投手にはチェンジアップがある。右打者からすれば外角へ逃げるボールや、沈むボールはフルスイングができないので、内野ゴロを打ち取るには格好の変化球になる。これはすぐに習得できるものではないが、渡辺が次のステージで活躍するには必要となる変化球になるだろう。

 こういう左投手で怖いのは力のないボールが外角高めへ浮くこと。相手は神奈川横浜打線。彼らはこういうボールを打つのが大得意なだけに細心の注意を払っていきたい。

 とはいえ、高校生の段階で、将来像が武田 勝山本 昌のような技巧派左腕として浮かんでくる投手もかなり稀であり、実際に渡辺は次のステージで勝負できるストレートの力強さがある。まさに真の変則派投手なのである。

 ぜひ今までの成果を発揮して、神奈川横浜打線を翻弄するピッチングを期待したい。

【選手名鑑】渡辺 法聖


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(文=河嶋 宗一


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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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