2016年の高校野球を占う【埼玉編】「今年も波乱の予感!?今年の埼玉県の有力校を一挙紹介!」
昨春は浦和学院が選抜ベスト4、昨夏は花咲徳栄が4年ぶりの甲子園出場を決め、さらにベスト8入りするなど躍進を見せている埼玉県。埼玉の凄さはなんといっても、白岡のように秋、春と県大会出場がなかったチームが一気に浮上することだ。そんな埼玉の今年の有力校、選手を紹介していきたい。
大型左腕・高橋擁する花咲徳栄がリードするも、昨秋の8強は突き抜けた成長が欲しい
榊原 翼(浦和学院)
まず選抜出場の花咲徳栄は、最速145キロ左腕・高橋 昂也、俊足巧打の遊撃手の岡崎 大輔、長打力のある隈本 達也がいるが、全体的に見ると、野手と高橋以外の投手の底上げが課題になりそうだ。昨秋県大会優勝の浦和学院は、サードの諏訪 賢吉、センター・幸喜 勇諮が旧チームのレギュラー。エースの榊原 翼は140キロを超える速球を投げるが、まだ調子が不安定で、思うような結果を残すことができていない。選手たちの力量は県内では抜けているが、旧チームのような安定感ある強さはまだなく、これを夏にかけて築き上げることができるか。
春日部共栄も、大道 温貴、鈴木 慎吾など投手陣の底上げが課題。打線では関谷 将貴、強肩捕手・磯田 歩甫がいるが、関東大会の敗戦をどう乗り越え、力をつけているか。3チームの状況を見ると、まだ突き抜けた力量はなく、勢力図をひっくり返すことは十分あり得そうだ。
また狭山ヶ丘は、制球力が高い藤野 優斗、キレのある速球を投げ込む安田 尋登(1年)、長打力のある4番永田 琢己、川村 駿介など選手の力量の高さは関東大会出場校に負けていない。春の関東大会出場を見据え、全体的な底上げができているか注目が集まりそうだ。
ベスト8では浦和学院と延長13回に及ぶ死闘を演じた川越東がやはり有力候補だ。投げても140キロ台の速球を投げ、打者としても一発長打のある星野 裕帆がどこまで技量を伸ばし、安定感あるパフォーマンスができるかに尽きるだろう。青山 陽哉など能力の高い野手が多く揃っており、この春の戦いに注目だ。山村学園は、左腕の佐々木 大輔が試合を作り、菊地 零士、橋本 透の主軸がポイントゲッターとして活躍を見せてきた。
ベスト8入りし、21世紀枠の候補となった上尾は、制球力のある山下 和音、140キロ台の速球を投げ込む渡部 勝太、185センチの長身から角度ある速球を武器にする阿部 玄太の3枚看板が県内屈指の力量を持つ。同じくベスト8入りした西武台では下級生の時から活躍する左腕・唐沢 裕貴は制球力、変化球の精度が高く、チームをベスト8まで導いた。この春も、上位に導く投球ができるか、注目される。
ベスト16以下のチーム、地区予選敗退チームもチャンスがある
清水 凌(松山)
ベスト16以下を見ると、大宮東は長打力のある大平 燎、走攻守三拍子揃った大型外野手・緒方 康貴(1年)、強肩捕手・高橋 朋也、ゲームメイクができる菅原 隆史(1年)と好選手が並ぶ。昨夏の埼玉大会4強で、秋もベスト16入りした埼玉松山は、左の好打者・清水 凌、昨夏から正捕手の鈴木 武虎が中心。さらに総合力を高めて、今年も上位進出を狙いたい。早大本庄は昨秋花咲徳栄に3対5と競り合いを演じた。花咲徳栄のエース・高橋に19三振を喫したが、それでも9安打を放ち3得点したのは収穫といえる内容だった。
聖望学園は、一発を打てる左打ちの捕手・大野 亮太がチームをけん引。後は投手陣の底上げがカギになりそうだ。その聖望学園と接戦を演じた蕨は機動力でどんどん仕掛けるチーム。持ち味である攻撃力、機動力を磨いて、この春、夏も上位進出を狙いたい。
立教新座は、一発長打があり、投げても140キロ台の速球を投げる中崎 響介、186センチの長身から常時130キロ台の速球を投げ込む松原 勇希とポテンシャルが高い選手が揃っている。慶應志木の好打者・大嶋 駿は長打力もあり、守備範囲の広い外野守備がウリの1年生。一冬越えてから大きくクローズアップされそうだ。昌平は、2年生から4番に入った栗原 拓光に注目。175センチ69キロと細身だが、スイングが実に鋭く、外野の間を抜く打球を連発する。川越工は本格派左腕・高橋 優翔が面白い。本庄第一では、変化球の出し入れが上手い左腕・権藤 聖人は一冬越えてストレートの威力に磨きをかけていきたい。
初戦負けだったが、躍進が期待されるのが叡明だ。その中でもキーマンと呼ばれるのが183センチ71キロの三上 ケビン(1年)、184センチ82キロとの室賀 優斗(1年)の2人だ。三上は非常に足が速く、肩も強くセンターを担う選手。室賀は1年の時は故障で苦しんだが、すでに135キロの速球を投げ込み、本塁打を打つパワーもある。投打ともに期待したい大型選手だ。
埼玉県は秋季県大会は37チームしか出場しないので、地区予選で敗れた強豪校も注目である。
昨夏準優勝の白岡、川越東に敗れた市立川越(試合レポート)、また蕨に惜敗した埼玉栄は名将・若生 正廣監督が時間をかけてどんなチームを作り上げるか興味深い。また西武文理、星野、浦和実業なども浮上しそうだ。
昨年も述べたが、その年の埼玉県の有力校の状況を知るには、地区予選から。地区予選、県大会へかけて夏の躍進を予感させる好チームが多く現れるか注目をしていきたい。
(文・河嶋 宗一)