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【明治神宮大会総括】機動力と破壊力生かして高松商が初優勝!ハイレベルな戦い続く

2015.11.18

 第46回明治神宮野球大会高松商の初優勝で幕が閉じた。今回は高松商の活躍を振り返りつつ、今大会を総括していく。

機動力・破壊力を兼ね備えた高松商、毎年チーム力を維持する敦賀気比


高松商の優勝シーン

 優勝を決めた高松商。公立校の優勝は、1999年四日市工以来。奇しくも四日市工も、敦賀気比を14対13で破っての優勝であり、何か共通するものを感じる。

 今年の高松商は機動力を絡めた野球ができるのが最大の強み。巧打者・安西 翼を中心に俊足の選手が揃い、セーフティバント、盗塁などを積極的に行っていた。また4番植田 響介、5番美濃 晃成を中心に振れる打者が揃い、次々と鋭い打球が転がっていった。初戦札幌第一戦では計2本塁打が出るなど7得点、続く準決勝大阪桐蔭戦でも、大阪桐蔭の投手陣に怯むことなく次々と点を重ね7得点。

 決勝では敦賀気比のエース・山﨑颯一郎を攻略し、8得点。打てるチームとして印象付けた。投手陣はエースの浦 大輝が高熱により準決勝で登板ができない中でも勝ち上がり、エースが投げられなくても勝てるということを証明した高松商は、非常に力のあるチームだということを印象付けた。

 今年のチームは中学野球で実績のある長尾 健司監督を慕って入学してきた選手たち。驚くほどのパフォーマンスを持った選手は少ないが、しっかりと捕る、投げる、打つという野球の基礎ができている選手が多い。長尾監督から言わせれば完成度はまだまだで、「今のままでは全国では戦えません」と厳しいコメント。だが全国各地の県立校でこれほど完成度があり、相手の状況に応じた戦略的な野球ができるチームも数少ない。また、積極性のある選手が多いのも今年のチームの特徴だ。公立校が私学を破るにはどんな戦い方を示せば良いのか、その指針になる戦いぶりだった。

 敦賀気比決勝進出は準優勝した1999年以来となり、1974年福井商が達成して以来の福井県勢の神宮大会優勝が期待されたが、あと一歩で逃してしまった。

 しかし、敦賀気比は甲子園に出場を続けるなど、チーム力を維持していることが素晴らしい。今回選手も殆ど入れ替わっている中でも、勝ち上がってきた。今年は林中勇輝遊撃手を中心に、振れて、さらに対応力が高い選手が揃っており、終盤に畳みかける攻撃力は見事。また守備力も高く、全国的にもハイレベルなチームと印象付けた。全国で勝ち上がれるかはエースの山﨑颯一郎にかかっているだろう。持っているポテンシャルの高さは誰もが認める。決勝の試合後、最も悔しがっていた山﨑がこれを機に大きく進化することに期待したい。

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[page_break:出場10校はどこもハイレベル 来春以降は勢力図が大きく変わる可能性あり]

出場10校はどこもハイレベル 来春以降は勢力図が大きく変わる可能性あり

最速150キロを計測した高山 優希(大阪桐蔭)

 ベスト4に進出した大阪桐蔭は、打撃レベル、守備のスピード感は出場10チームの中でもハイレベル。

準決勝
高松商戦では一時1対7までリードを許したが、そこから反撃して1点差まで追い詰めた。だが西谷 浩一監督は「打撃、守備もまだまだで、ここまで勝ち上がれたのが不思議なぐらいですから」と手厳しい。

 これほど手厳しいのは全国で勝つため。だが準決勝でエース・高山 優希以外の4投手が登板できたのは収穫と感じていたようで、「これほど緊張感のある舞台で投げることはないですから」と4人の投手たちの成長に期待していた。またエースの高山は最速150キロを計測。厳しい冬に鍛え上げどんなチームになっていくのか、楽しみにしたい。

 青森山田は、守備力の堅さは出場校トップクラス。捕手・村山 直也のリードセンス、や強肩に注目が集まった。スピード感溢れる守備、無駄のない連係プレーは実にハイレベルだった。また打線も、センター方向から逆方向へしっかりと打ち返す打球が目立った。そんな青森山田の課題として、兜森 崇朗監督は投手陣の底上げが必要だと語っていた。

 神宮大会はその地区の優勝したチームが出場する。そういうこともあって、野球の精度、個々の選手たちの能力の高さは我々を驚かせるものがあった。

 東邦秀岳館戦(試合レポート)で二打席連続本塁打を放ったエース・藤嶋健人、最速143キロを計測した松山仁彦を筆頭に投手力、打撃力ともに高い選手が多く、個人の能力の高さは出場10チームでもトップクラスといっていいだろう。秀岳館は正捕手・九鬼隆平を中心に、東邦の藤嶋から9安打を打つ強打が注目。初戦で敗れたが、打線の破壊力は今大会でも随一のものがあり、一冬越えた後の進化が楽しみといえるだろう。

  木更津総合はエース早川隆久の投球が注目されたが、大阪桐蔭戦で先頭打者本塁打を放った峯村貴希も大舞台でアピール。守備力が身上なチームだけに峯村が流れを変える打者として成長できるかが来年勝ち上がる上でカギになるだろう。

  札幌第一関東一戦(試合レポート)では、12安打を打って関東一投手陣を攻略。特に9番兼村京佑が5打数4安打と大活躍で、上位下位の切れ目のない打線がウリと印象付けた。創志学園を中心に投打ともに能力の高い選手が揃った好チーム。高田は敦賀気比戦(試合レポート)で5失点、打線も1点止まりで、本来の力を発揮することができなかった。全国の舞台で自分たちの力を発揮するにはどんな戦いを見せれば良いのか、残り3か月間でしっかりと準備をしていきたいところ。東京本大会では投打で安定した力を発揮していた関東一だったが、今大会、走塁ミスなど目立ち、初戦札幌第一に4対7で敗れたが、後半に追い上げていった粘り強い試合運びは武器になるはず。

 今回は高松商が優勝を果たしたが、この冬の取り組み次第では勢力図がガラリと変わっておかしくない。それだけ力が拮抗したチームが集結した大会だった。
秋の時点でこれほど緊張感のある戦いができたのは収穫だろう。出場10校が選抜だけではなく、夏にも生きる大会だったといえるほどの成長を見せてほしい。

(文=河嶋 宗一


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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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