合宿中のコンディショニング
こんにちは、アスレティックトレーナーの西村 典子です。
いよいよ練習試合の解禁日が近づいてきましたね。暖かい日も少しずつ増えて、ボールを握った練習をする機会も増えているのではないでしょうか。春のシーズンに向けて準備をしっかりして、冬の成果を試合で発揮できるようがんばってくださいね。さて今回はまとまった期間に行う合宿中のコンディショニングについて考えてみたいと思います。
時間管理がキーポイント
練習の質を上げるためにも睡眠時間は確保しよう
合宿期間中は練習環境も変わるとともに、生活環境も大きく変わります。普段は通学している選手たちも宿泊をともにすることとなり、生活リズムも大きく変わることが予想されます。タイムスケジュールなどを確認しながら、まず確保して欲しいのが睡眠時間です。
練習が終わって、夕食をとって、その後にどのくらい時間があるのか、洗濯や入浴といったプライベートな時間だけではなく、時にはチームで集まってミーティングを行ったり、ポジションごとで話し合う時間が必要になるかもしれません。体力的な疲れがどんどん蓄積されてくると、ケガをしやすくなってしまいますので、最低でも睡眠時間を6時間程度はとるようにしたいところです(参考ページ:第28回コラム「良い睡眠を心がけよう」)。
また時間管理ということで特に気を遣いたいのが、朝の時間です。朝から練習を行うこともあると思いますが、起きてから身支度を調え、朝食をとり、その後にバタバタと練習に入ってしまうと、「排泄の時間」が短くなり、トイレにいかずにそのままグランドに出てしまったということにもなりかねません。
私たちの体は朝食をとった後、しばらくすると不要なモノを排泄するように腸が活発に動きます。このタイミングを逃してしまうと、便秘になってしまったり、練習の途中でお腹が痛くなってしまったりしますので、朝の時間はなるべく余裕のあるスケジュールを組んで欲しいと思います。
体調管理に体重と脈拍を測ろう
毎日の体調管理としては体重を測るようにしましょう。体重測定は練習での体力的な消耗の程度と、食事などでえられるエネルギーとのバランスを確認することができます。また練習前後でも体重を測るように準備すると、練習中でかいた汗によってどのくらい脱水しているかがわかります。
目安としては体重減少を2%以内に抑えるようにしましょう。たとえば60kgの選手であれば58.8kgまで、60kgの2%=1.2kg以上体重が減っていると、練習中の水分補給が不足しているのではないかと考えられます。暑い夏場だけではなく、こうした合宿中の練習などでもこまめな水分補給を常に心がけるようにしましょう。
疲労回復の定番・入浴とストレッチ
体力的な疲労をなるべく翌日に持ち越さないようにするには、何といっても練習後のクールダウンと入浴がその鍵を握ります。クールダウンを行わずに練習を終えてしまうと、筋肉の柔軟性もなかなか改善しませんし、疲労物質が体の中に長くとどまることになります。練習後の軽いジョギングやウオーキングとストレッチの習慣がケガの予防にもつながりますので、これはぜひチーム全体として取り組んでもらいたいと思います。
また入浴はただ単に汗を流すだけではなく、体のコンディションを整える重要な時間と考えること。入浴は湯船につかってしっかりと体を温め、血流をよくするように心がけましょう。チーム全体として取り組むのであれば、バケツにお湯などを準備しておき、足湯で体を温めるのも一つの方法です。
オーバートレーニングに注意
疲労感が抜けない場合は練習量や内容の再チェックを
こうした合宿で特に気をつけたいのが「オーバートレーニング症候群」と呼ばれるものです。日本語では「慢性疲労症候群」、常に疲労が蓄積された状態でパフォーマンスが落ちてしまう状態のことをさします。わかりやすい指標として早朝の脈拍が早くなる傾向が見られますので、毎朝の体重チェックとあわせて脈拍を測る習慣もつけるようにしましょう。
起床時がむずかしいときは朝食前など、測りやすい時間帯で構いません。「しっかり寝たのに体が重だるい」「食事量はさほど変わらないのに体重が激減する」「筋肉痛がいつまでたっても軽くならない」といったことが思い当たる場合は、脈拍と体重をチェックし、練習量を減らしたり、練習内容を変更するなど対策をとるようにしましょう。
特に合宿中は「ここで休むわけにはいかない」と体力レベルを考えずにムリをしがちです。我慢強い選手ほどこうした傾向に陥りやすいので、おかしいなと感じたら周りの人も一声かけてほしいと思います(参考ページ:オーバートレーニング症候群について)。
普段とは違った環境で取り組む合宿が、実りあるものになるよう、フィジカル面からもしっかり整えて臨みたいものですね。
【合宿中のコンディショニング】
●合宿では練習環境だけではなく生活環境も変わる
●時間管理を工夫し、睡眠時間と朝の排泄時間の確保をしよう
●体重の変動で脱水状態も把握できる
●疲労回復にはクールダウンと湯船につかっての入浴が不可欠
●脈拍が普段より早い状態が続いたら、練習量や内容を見直そう
●合宿中はどうしてもムリをしがち。オーバートレーニング症候群に注意しよう
(文=西村 典子)
次回コラム公開は3月15日を予定しております。