甲子園で活躍できる選手の特徴
優勝し歓喜する大阪桐蔭ナイン 写真提供:共同通信
秋の大会は目前ですが、チーム作りは「一年間」のスパンで考えるべきです。大会が目前であっても一年後の理想を追いかけながら結果思考になることなく、試行錯誤するべきです。
成果の出せる選手とそうじゃない選手を整理したいと思います。
甲子園で活躍できる選手の特徴 ~投手編~
田中 誠也(大阪桐蔭)
大阪桐蔭の二年生田中 誠也投手、ストレートは130キロちょっとですが右打者のインコースに投げ切れるコントロールと低めに落とせるチェンジアップがあります。見た目は派手じゃありませんが、アウトに取れる打者です。
左投手であれば右打者が有利だと考えがちですが、田中投手は右打者のほうが打つのが難しいのです。彼をみると「インコースに投げ込めること」の大切さを再確認します。チェンジアップもインコースに投げ込めるから効果を発揮します。打てそうで打てない投手は、この二つ(インコースの制球と低めの変化球)を持っています。
一方、パワー勝負する投手が苦戦した甲子園でした。140キロをこえる速球があっても高めに行けば痛打されます。山形中央の石川 直也投手が今夏甲子園最速148キロを投げましたが、初戦の愛媛小松高校には高めに浮いた速球を打ち返されました。
インコースに突っ込めて低めに変化球が投げられる投手、ある程度のスピードはあったほうがいいとは思いますが、「インコースと低め」に投げられる投手が間違いなく打者を沈黙されていた甲子園。
西嶋 亮太(東海大四)
東海大四の西嶋 亮太投手(3年)のように「外中心」の出し入れもコントロールがいいと何とかなったことも印象的です。外にばかり投げると打者も外に慣れるので、ボールの見極めがしやすくなります。西嶋投手は球半個の出し入れと遅い球を使っての緩急で打者を抑えました。
引っ張りで強引に振ってくる打線には効果を発揮します。逆方向に徹底してくるチームには苦戦するでしょうが、外中心の投手でも抑えられたのが印象的です。
初戦で敗退した「速球派投手」は、ほとんどがパワー勝負して高めに浮いたアバウトなコントロールの球を打たれました。深いトップのチームには狙われると跳ね返されます。今は速いだけでは通用しない時代に突入したのです。
新チームで頑張っている投手は、自分はどのタイプで生きる投手になるのか・・を考えて一年間試行錯誤するべきでしょう。
【目指すべき投手タイプ】
・インコースに投げ込めて変化球を低めに投げられる
・緩急を使えて外にきっちり投げられる
これ限りではありませんが、抑えられる投手像を考えながらその方向に向かっていくのがよいでしょうね。
甲子園で活躍できる選手の特徴 ~打者編~
脇本 直人(健大高崎)
甲子園に出場してくるチームのほとんどの打者が「引っ張り」タイプです。地区予選ではライバルチームの投手の精度も高くないので、甘い球を引っ張りこめば何とかなります。しかし、甲子園で質の高い投手と対戦すると打線は沈黙します。
引っ張りタイプが、急に逆方向にうまく打てるものではありません。引っ張りタイプを言い換えるとドアスイングです。外からバットが出てきて上半身で打つようなスタイルになります。
低めの変化球への対応も難しく、140キロ以上の速球にも対応できません。予選ではかなり打って破壊力があったのに甲子園で沈黙するパターンです。対戦相手の投手が130キロちょっとで変化球が高く浮いてくるのであれば爆発するでしょうが、甲子園初戦はどのチームも万全な準備をしてくるのでごまかしが効きません。
両方向に打てる打者は、大会後半になるほど力を発揮しました。甲子園大会の終盤は、投手も疲れて外中心の配球になりがちです。外の球を引っ張り込むのは難しく、逆らわないで逆方向に打ち返したほうが結果がでます。
インサイドアウトで内側からバットを出せる選手が好投手からも成果を出しています。健大高崎高校の脇本 直人選手(3年)は内側からバットが出てきます。少々詰まってもヒットゾーンに球が飛んでいきます。
甲子園で活躍できなかった選手は、ボール球を追いかけて早めに勝負をしようと振っていた打者です。追い込まれたくないという心から、ボールを打っています。どんな能力のある打者でもボールをヒットすることは難しいのです。確率の高い打者は、間違いなく「甘い球」を振っています。
【目指すべき打者】
・ストライクボールを見極められる(深めトップ)
・引っ張りだけじゃなく逆方向も打てる(インサイドアウト)
ふたつのことはすぐにできるものではなく、毎日意識することで徐々にできていくものです。
何かに自信を持つこと
この変化球に自信がある、左投手には絶対的に強い、盗塁のスタートには自信がある・・など、何か自信を持っている選手に一年間かけてなりたいものです。
何も意識もせずに何となく練習や試合をしても成長はしていきません。数をこなせば上手くなるなんてことはないのです。目標を明確にして、「一年後こんな選手になる」という決意のもと、「これを意識しよう」と動いて欲しいと思います。
(文=遠藤 友彦)