試合レポート

二松学舎大附vs海星

2014.08.15

二松学舎大附、1年生バッテリーと3年生の活躍で夏初勝利!

 1、2年生のベンチ入りが8名の長崎海星と、9名の二松学舎大附。「若いチーム」というチームカラーが似た高校の対決となった。

 長崎海星は4番平湯 蒼藍(2年)、主戦投手として活躍を見せた石場 匠(2年)、正捕手の桑原 唯偉人(2年)、堅守の遊撃手・高山 凌(2年)など2年生が主力となり、3年生が後ろを固める。

 対する二松学舎大附昨夏の東東京大会準優勝の主力選手であった竹原 祐太(3年)、秦 匠太朗(3年)、小峯 瑛輔(3年)、末松 佑弥(3年)が残り、昨秋の本大会でも準優勝するなど3年生を中心に力のある選手が揃うチームだったが、そこに加わったのが大江 竜聖(1年)と今村 大輝(1年)の1年生バッテリーだった。

 今夏の東東京大会では大江は主に救援投手として、今村は正捕手としてチームを引っ張り、3年生たちに大きな刺激を与える存在となった。この試合も、彼らの活躍が光ったゲームとなった。

 1回裏、二松学舎大附は四球、相手野手の敵失などで一死二、三塁の場面で、4番小峯が鋭い遊ゴロを放ち1点を先制。長崎海星遊撃の高山が三塁へ向かう二塁走者を刺して、二死一塁。ここで岡田 浩輝(2年)の中前安打、秦の四球で満塁となって、今村が内角直球に詰まりながらも、右前適時打で3点を追加。さらに2回裏には敵失で1点を追加する。

 3回表、長崎海星は無死一、三塁から2番高山がカーブを引き付けて絶妙な左前適時打を放ち3点差に迫るが、3回裏、5番秦が低めのチェンジアップを捉え、ライナー性の打球が左翼席に飛びこむ本塁打で5対1。

 下級生の時も秦の本塁打を見たことがあるが、その時も今日の本塁打のように低めの球を絶好のタイミングで振り抜き、もの凄い速度でスタンドに飛び込む本塁打を放っていた。「ツボ」を持っている打者だけに、『57本』という本塁打を積み上げることができたのだろう。


 4回裏、二松学舎大附は一死二塁から、小峯が中前適時打を放つ。3年生が下級生に負けじと活躍を見せて、6対1とする。

 だが長崎海星も5回表に反撃。
一死一、二塁から3番峯脇 学(3年)の右越え適時二塁打で、6対2とすると、二死満塁から服部 貫大(1年)の押し出し死球、小川 直弥(3年)の中前適時打で、6対4と追い上げに成功。

 ここで二松学舎大附は投手交代。先発の大黒 一之(3年)に代えて、大江を投入する。大江は押し出し死球を出したものの後続を断ち、しっかりと締める。

 その裏、二松学舎大附は二死二塁から末松の適時打で7対5と点差を広げる。

 この一打は大きかった。
1点差と2点差では投げる心境はまったく違うであろう。大江は6回以降、快調な投球を見せて、スコアボードにゼロを積み重ねる。

 大江は小柄な速球派左腕だ。
1年時から活躍できる左腕の特徴として、球速は遅いが、制球力に優れ、変化球のキレ、投球術で勝負するタイプが実に多い。しかし大江の場合、すべてにおいて1年生とは思えないハイレベルな投球であった。

 左オーバーから投げ込む速球は常時130キロ~137キロを計測しており、なかなか速い。そして120キロ前後のスライダー、120キロ台のフォーク、100キロ前後のカーブと変化球の精度の高さとコントロールの良さ。
強打者に対して内角を堂々と投げ込む度胸といい、捕手・今村が出すサインにも首を振って、意思を持って投げる姿も好感が持てた。
東東京大会の緊迫した場面で活躍したのも頷ける。能力の高さと精神力の強さを兼ね備えたタイプで、高い将来性を感じる左腕だ。

 球速もいずれは常時140キロ台、上手く嵌れば、140キロ中盤まで投げられる可能性も十二分に持っているのではないだろうか。
東北楽天で活躍する松井裕樹の高校1年夏の時は常時130キロ中盤だった。そこから最終学年で149キロまで伸ばした。成長曲線でいえば、常に右肩上がりな状態だった松井。大江にもそんな成長を見せてほしい。それほど期待してみたい投手であった。


 大江は長崎海星打線相手に4と1/3回を投げて、被安打1、奪三振3、無失点に抑える好投で、初勝利をつかんだ。

 二松学舎大附にとっては長い長い甲子園初勝利だった。東東京を代表する強豪校である二松学舎大附。だが決勝で10回連続敗退と、あと一歩で甲子園を逃す辛苦を長年味わってきた。

 初めて決勝に進出してから43年を経て、ようやくつかんだ夏の甲子園。
1年生バッテリーの活躍に加え、1年生に負けじと刺激を受けた3年生も活躍を見せ、勢いに乗る勝利であった。

 敗れた長崎海星にも触れたい。
先発・石場は140キロ前後の速球、曲がりの鋭いスライダーとチェンジアップを投げ分ける好投手。そして2番手で登板した吉田 嵩(しゅう・3年)は常時140キロ台を計測。吉田は素晴らしい才能を持った逸材だ。将来的には速球が常時140キロ後半~150キロ前半に到達していてもおかしくない奥行きがあった。

 4回途中から登板した吉田は、3回に本塁打を放った秦を3球三振。秦に対して、自己最速の145キロを計測した。
球速だけではなく、投球フォームから土台の良さを感じさせる。テイクバックを大きく取った際に、右ひじが綺麗に上がり、その時の胸の張りが素晴らしく、そして球持ちが良く肘のしなりを生かした抜群の腕の振りから投げ込むストレートには、綺麗なスピンがかかっていた。さらに速くなれば、空振りも増えてくるだろう。

 変化球を見ていくと120キロ台のスライダーのキレも良く、カーブも緩急が効いていた。181センチ85キロと恵まれた体格だけではなく、躍動感あるフォームで投げられる体幹の強さ、バランスの良さも魅力だった。

 他には攻守でセンスあるプレーを見せる遊撃手の高山、この日は無安打だったものの、長打力のある平湯と好選手が実に多い。

 今年の長崎は攻守で総合力が高い創成館センバツに出場、春季九州大会準優勝。さらに公立校とは思えない力強いプレーと球際が強い守備で、春季九州大会ベスト4入りした島原農と完成度が高いチームが多い。選手のポテンシャルも高く、強烈な印象を残した。

 長崎。今後は目が離せない地域になりそうだ。

(文:河嶋 宗一)

【僕らの熱い夏2014】第11回 海星高等学校(長崎)

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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