食べる
全国の野球少年に心や技術について伝えることもありますが、同時に「食」についても話す機会があります。自分の野球人生で唯一公開しているのは、選手時代の「食べる意識」です。捕手として投げる力はあったのですが、その力を身体が支えきれなく小学生から「肘痛」に悩まされました。
投げ方に問題もあったと思いますが、今考えると身体(筋力)に問題があったことは間違いありません。当時の私は身体能力抜群でしたが、体型は細くて「もやしっ子」のような感じだったのです。
身体はトレーニングと食事、そして休息によって作られていきます。三つのバランスが重要ですが、私に一番足りなかったは、「食」だったのです。
まずは、親へのお願い!同時に親へしてあげること」も宣言する!
【コラム・球児のお弁当】府立河南高等学校(大阪)より
小学生の頃、学校から戻ってきて「お母さんお腹すいた」と言います。母親が準備をして待っている間にお菓子などを食べてしまい、食事が出来てきたときには「ちょっと満腹状態」です。あれだけお腹が空いていたのに、おかわりをすることなく「ごちそうさま」という感じだったのです。
メインの食事を食べる前に糖分を過剰に摂取すると、脳から満腹指令が出ます。お菓子や炭酸ジュースなどでお腹がある程度満たされた氣分になっていたのです。
車で例えると、良いエンジンを搭載していてもガソリンが入っていなければ車は動きません。エンストを何回もしていると車に負担がかかり、ついには故障という流れになります。
自分のマイナスの経験から、高校生を中心に次世代の選手には「食べることの大切さ」を説きます。しかし、多くの野球選手は朝食を取らずに登校したり、私のような本番で食べられない食生活をしているのです。
甘いものは食べるなとは言いません。「食べるタイミングがある」ということを言っているのです。
高校生であれば、自宅から通っている選手も多いので「食べる」と言っても自分だけの力ではどうにもなりません。選手には「家族の協力が必要。まずは、母親へのお願いから始めないといけない」と伝えます。
「この冬で一回り身体を大きくしたい。だからお母さん、協力して欲しい」
私であれば、お願いから始めます。お願いと同時に「母親へしてあげること」も宣言して、氣持ちよく協力してくれるように工夫します。
家族のためにやるお手伝い、またはお母さんに直接してあげること・・、協力してくれる流れにするために、お願いだけじゃなく自分から何かをしてあげることが重要です。
自分の心を整えるために、食器は自分で洗うのは当たり前と選手に伝えます。自分のだけじゃなく家族の食器を洗う宣言などしたらお母さんは大喜びでしょう。子どもの頃に肩揉みをしてあげた経験があると思いますが、その肩揉みを復活するのも良いでしょう。
[page_break食べるバランスと量のほうが重要]食べるバランスと量のほうが重要
食事もトレーニング。チームによって、球児たちへ食の指導が盛んに行われている。
高校野球のチームでは「食事合宿」をするところもあります。身体が大きくなればいいことがたくさんあります。
球が速くなる、遠くに打球が飛ぶ、筋力がついて足が速くなった、守備範囲が広くなった・・
食事をしっかり取り、トレーニングをして、十分な休息を取る。すると筋力がついて野球選手としてプラスの方向へと変化していきます。原点は「食」なのです。
身体を大きくすること以外でも、疲労を回復させるという利点もあります。野球選手は「翌日に疲れを残さない」という努力を怠ると、徐々に疲れが蓄積されていい動きができなくなります。自分のために、食べるということを大切にするのです。
私が携わっていた北海道の駒大苫小牧高校野球部。全国優勝していた頃、甲子園大会期間中に「朝3、昼3、夜3」食べていました。3は、「大盛りご飯3杯」です。熱い甲子園大会でも、最後まで動き切れた背景には「食事」があったのです。
どんなに優秀な選手がいても、バテバテでは勝負になりません。高校生の本番は「夏」です。熱い夏に、最高の動きをするためには「食」の意識を高くするべきなのです。今から食べる訓練をしておかないと、「夏になってから」では遅いのです。
田中 将大投手(独占インタビュー 田中将大選手が語る投球論)が駒大苫小牧高校のときには、体重が84キロ前後でした。プロ1年目で札幌にて食事を一緒にとりましたが「92キロです」と本人が言っていました。現在は97キロ前後ですが、身体のサイズアップとともに、彼のパフォーマンスも右肩上がりになっていったと思います。ただ体重を増やすのではなく、トレーニングと技術力も向上していったときに【大きな飛躍】になったと感じます。
この冬、どの程度食べるのか・・
私は個人的にスイングの数よりも、食べるバランスと量のほうが重要だと思っています。
食べる冬、挑戦してみませんか!?
(文=遠藤友彦)