鹿児島商vsれいめい
鹿商9点目
しんどい試合を勝ち抜いてこそ・鹿児島商
鹿児島商は、3回戦の出水商戦に続き、北薩の雄・れいめいにもコールド勝ちしたが、松下幸男監督は「きょうも、この前と同じくしんどい試合でした」と浮かれた様子はない。「でも、こういう試合を勝ち上がっていくことに意味がある」と力を込めた。
出水商戦と同じく、序盤から中盤までは1点を争う緊迫した展開だった。二回にはエラーで先制点を与えてしまった。攻撃でも、バント失敗や走塁ミスなど、細かいミスが何度かあった。
「今はミスが出てもOK。下を向く必要はない!」
今大会、松下監督はそう決めている。鹿児島を代表する名門校とはいえ昨年1年間県大会を、ほとんど勝っていない。1つミスが出ると、それを引きずって連鎖反応で傷口を広げてしまい、力を出し切れないまま敗れる試合を何度も経験してきた。
復活の足掛かりを作りたいこの春は「ミスが出ても切り替えて、今やるべきことを精いっぱいやっていれば、結果は後からついてくる」と選手たちに言い続けた。
鹿商コールド勝ち
「ミスが出てもすぐに切り替えられるよう、その選手を1人にしないで、みんなで声を掛け合うことを徹底した」
富塁寿主将は言う。期せずして三回に先制点を与える悪送球をしたのが富自身だったが「エラーした分は打って返せ!」と仲間が声を掛けてくれた。八回にはコールド勝ちの口火となる右翼線三塁打を放った。
この試合は、富のようにミスをした選手が、それを取り返す働きをしたり、他の選手がカバーするプレーが何度かあった。捕手・丸田翔太郎は四回、先頭打者を打撃妨害で出塁させるも、バント処理で二塁を刺し、二盗も許さなかった。七回には二塁打で出塁した丸田が、走塁ミスでアウトになったが、後続がつないで勝ち越し点を挙げた。
序盤から大量点を挙げて勝てれば、こんな楽な話はないが、それをやれるだけの力はまだついていない。
「今は九回終わって1点勝っていればいい」
そのぐらい大きく構えて、1つ1つのミスを気にするよりも、結果として勝ち続けることで自信を取り戻すことを最優先のテーマに掲げている。
今大会、ここまで3勝挙げてベスト8。まだまだ鹿児島商らしさには遠いかもしれないが「目指してやってきたことが本物になりつつある」手ごたえを指揮官は感じていた。
(文=政純一郎)