Column

正面の力

2012.02.02

廣戸聡一の4スタンス理論 第5回 「軸と4スタンス理論」

第9回 正面の力2012年02月02日

【廣戸道場 廣戸聡一先生】

 いきなりですが質問です。皆さんはキャッチボールのとき、相手のどこに投げるように意識をしているでしょうか?

 おそらく、ほとんどの人が「胸」と答えるのではないでしょうか。それもそのはず、昔からみんなそう教わってきているから。では、なぜ「目の前」ではないのか。目に近い方がよく見えるし、捕球のミスも減りそうなものですが。

 理由はひとつ、その方が“動きやすい”からです。試しに動いてみるとわかります。顔の前にグローブを置いてから投げるのと、胸の前からとではワンテンポの差が出ます。捕りにいくときも同様で、胸の高さの球の方が追いやすいのがわかるはずです。

 胸の位置というのは体における『正面』にあたります。よく皆さんもコーチや監督から「正面で捕れ!」といわれるでしょう。無意識でそう言っている人も多いかもしれませんが、人間というのは正面で物事をこなすときが、最も力が発揮されやすいようにできています。
 一番わかりやすいのが相撲でしょうか。胸の高さでがっぷり四つに組んでいるときはお互い大きな力を出せていますが、少しでも正面から外れてしまうと途端に押し負けてしまう。

 もちろん野球でも一緒です。バッティングで、ポイントが前だとか後ろだとか言いますが、きちんととらえているときは必ず体の正面で打っています。中継でホームランのスローなどがあったら、ぜひ確認してみてほしいと思います。


【バッティングシーン(観戦記事より)】

 野球とは全く違う場面でも、正面の力を感じることがあります。たとえば誰かにものを渡すとき、正面を外して渡すと、相手はどんな風に感じるでしょうか。おそらく「感じ悪いな」と思うでしょう。逆に両手を添えて体の正面で渡すと、「丁寧だな」に変わります。カップいっぱいに入ったコーヒーを、片手で横側から持ってくる人はいません。安心、丁寧、確実。そんな意味も正面という言葉には込められているのです。

 野球に戻りますが、守備をしているときの構えでも『正面』は重要です。守っている選手を見ていると、意外とバッターに対して正面に構えていないことに気がつきます。

 ぼんやりホームベースの方を向いていたり、ピッチャーの背中の方を向いていたり。打球が来る角度というのは同じ右バッターでも人によって違います。バッターボックスの立ち位置や、打ち方そのものも違うのですから当然です。守備で名を馳せる、千葉ロッテの岡田幸文選手などはそういった準備ができている好例でしょう。足が速いとかそういった以前の話として、『正面』という準備をすることが大切なのです。

 人間は正面でしか、ものを「とらえる」ことができません。ボールをキャッチすることも、バッティングでミートするもとも同じ「とらえる」です。守備で相手のバッターを、きちんと視界に収めることも「とらえる」というでしょう。日本語の素晴らしいところで、同じ言葉には深い意味が込められているのです。軸をしっかりと持ち、正面で作業をする。この2つのことがきちんとできれば、おのずと野球選手としても人間としても成長していくはずです。

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■次回の廣戸聡一の4スタンス理論の公開は2012年02月09日予定です。お楽しみに!

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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