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平成23年度熊本県高野連指導者研修会

2011.11.25

平成23年度熊本県高野連指導者研修会

 平成23年11月19日。熊本市の済々黌で「一流の極意~トッププロ野球選手のトレーニング法~」と題する講演会及び実技研修会が行われた。
この研修会は、熊本県高校野球連盟が県内の指導者に向け、毎年開催している恒例行事であり、今年も県内から約85名の指導者が集った。その実態を知るべく、ドットコム取材班が会場となった済々黌へと潜入取材を行った。

塁間マネジメント

安福トレーナーに講演を聞く約85人の指導者たち

 昨年は日大三小倉全由監督を招いた指導者研修会。
今回、白羽の矢が立ったのが、埼玉西武ライオンズの片岡易之を4年連続盗塁王に導くなど「塁間マネジメント」と呼ぶ走塁法で各方面から注目を浴びているプロトレーナーの安福一貴である。

安福の所属している株式会社ナイスガイ・パートナーズの代表である木下博之熊本→慶大)が、熊本県高野連・菅浩理事長の教え子にあたるという縁もあって、今回の研修会が実現された。
とはいえ、熊本県高野連としては願ってもない機会だった。

「招待試合の1試合(今年5月に行われたRKK招待野球)が、雨のため途中で中止になって残念でしたけど、甲子園で見る東海大相模など強豪校のアグレッシブな走塁は見習うところがあります。ちょうど、そんなことを考えていた時に今回の話に結び付きました。比較的取り組みやすい走塁、そして最先端の技術ということがマッチしたことも大きいですね」(菅理事長)

塁間マネジメントについても紐解いた

講演会では、中学、高校と陸上を続けてきたが安福が、高校を卒業後、家業(ラーメン屋)に携わることで夜型となり「昼間に行われる(クラブチームの)大会で、神経が動かないことを学んだ」など自らの経験をもとに「考え方の角度を変えて見直すこと」をわかりやすく説明。
準備期、試合期、移行期などのピリオダイゼーション(期分け)や発育とトレーニングについてなどを受講者に問いかけながらの講演に会場も熱気に包まれた。

講演の最後に、メインである「塁間マネジメント」について、なぜ50メートル6秒2の片岡選手が4年連続盗塁王を成し遂げることができたのか。
また、スタート、走り、スライディングということを3つに分けているのかを紐解きながらわかりやすく説明した。

例えば、「スタートを失敗したと思って、焦るから全部駄目になる」など、自分の中でメンタルを安定がさせることで余裕を持つことができ、それが自然と結果に繋がることなど心の持ち方を説いた。
また、質疑応答の時間でも「スライディングの距離について」や「日頃の歩き方や姿勢について」など各指導者との活発なやりとりも行われた。


基礎という大もとの部分

済々黌の2年生部員が実技のモデルとなった

 当日、グラウンドで予定されていた実技は、あいにくの雨のため、会場を体育館に移し、約2時間みっちりと行われた。

実技のモデルとして、済々黌の2年生部員が登場し、ウォーミングアップなどから指導者の目線でみてあげるコツなどを説明し、各指導者は自らの体を動かしながら体験するなど、食い入るように見つめていた。

50メートル6秒0の俊足選手であり、実技練習中、終始先頭に立っていた中村健朗(2年)は、2時間の実技を終え、汗を拭いながらこう話してくれた。

「結構きつかったです。自分は100メートル(走)に自信があるのですけど、塁間などの短い距離がまだまだなので、瞬発系のトレーニングなどを教えていただけたことがよかったです。また、この冬、下半身強化や体幹、インナーマッスルを鍛えることも課題としていたので、今日教えていただいたことをチームメイトと確認しながら今後に生かしたいと思います」

終始、会場は熱気に包まれた

一通りの研修会を終え、菅理事長は選手の育成において、基礎こそが大事な要素であると、こう述懐した。

「今日は、熱心に講義や実技をやっていただいて、伝わってくるものがありました。野球という動きの中で出来る斬新なトレーニングであり、基礎という大もとの部分を作る大事なことを具体的に説明していただきました。これからオフに入るので、(各校には)準備として是非、取り入れてもらいたいですね」

目新しいものをどんどんやるのではなく、今あるものをいかに工夫して、新しいものを作っていくのか。
バックグラウンドがそれぞれ異なる各校だからこそ、基礎となる土台部分をしっかりと築き上げていく。そんなことの積み重ねによって、おのずと多くの引き出しも強化されていくことだろう。

(文=アストロ

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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