ランニングとシンスプリント
オフシーズンの基礎体力強化の時期が到来!
こんにちは、アスレティックトレーナーの西村典子です。
オフシーズンに入り、基礎体力強化の時期になってきました。来年の春に向けて皆さんはそれぞれのチームでトレーニングやランニングを中心に汗を流していることと思います。今回はランニング量が増えることによって起こりやすいといわれている脛(すね)の痛み、シンスプリントについてお話をしたいと思います。
シンスプリントとは練習量の増加などによって生じる、脛の痛みの総称をさします。原因が特定できないことも多く、脛の痛みに悩まされた経験のある選手もいるのではないでしょうか。
ただみんな同じ練習を行っているのに、脛が痛くなるのは決まっていつも同じ選手・・・という場合は、運動量(オーバーワーク)だけではなく、いろんな原因を考えることができます。
【身体の構造上の問題】
足の裏、土踏まずのアーチが落ちているいわゆる偏平足の選手はシンスプリントになりやすいと言われています。地面からの反力がそのままダイレクトに脛などに負担がかかるためです。また普段は偏平足ではないのに、走っているときにべた足になってしまう選手もいます。これは足の裏や足指の筋肉のグリップ力が弱いために起こる現象です。また脛そのものの骨の形状として、下から3分の1あたりのところで少し曲がっているのですが、この曲がり具合には個人差があり、これもまた一つの構造上の問題といえるでしょう。
【身体の使い方の問題】
片足で着地したときにしっかりと自分の体重を支えられず、膝が内側に入ったり、バランスを崩したりすることが多い選手はこういった動きを修正する必要があります。横方向からの力に弱く、ランニングによる地面からの反力がある特定の部位(この場合は脛)に繰り返されることで痛みを引き起こします。また走り方にも特徴があります。足の裏全体で着地する、ドスンと足を着いてしまうといった着地の問題、走っているときに足が後ろに流れてしまう、後ろから見て足の裏をみせる走り方、特にハの字型になっている選手は要注意です。
【シューズの問題】
ランニング練習のときにソールの重いアップシューズで走っている選手はいませんか?アップシューズは主にスパイクを使わないときの練習用に使われますが、これには弾力があって滑りにくいゴム素材でつくられたイボ状のスタッドがついています。芝でのグリップ力強化を目的としていますが、これはランニングを想定したシューズではないため、ランニング量が増えると脛や足首、膝、腰などに負担がかかりやすくなります。これに対し、ランニングシューズでは前方への踏み出しがスムーズにいくように、前方へと傾斜がついています。ランニングの時にはランニングにあった適切なシューズを選ぶようにしましょう。
片足スクワット
このようにさまざまな問題が考えられれるので、シンスプリントへの対策としては姿勢の改善、動きの確認、シューズや環境への配慮といったことを考えるようにします。
まずは鏡の前で姿勢をチェックしましょう。
片足で立ったときにお尻が外に逃げないように骨盤のあたりに手を押さえて静止します。足の指全体で地面をしっかりつかむようなイメージを持ちましょう。そこからゆっくりと片足スクワットを行います。このときに、
・膝が内側に入っていないか
・安定感がなくふらついていないか
・上体が鏡に対して正対しているか
・左右差はないか
といったことを確認します。膝が内側に入ってしまう選手は横方向への安定性が悪く、重心がぶれてしまいます(写真右側)。この状態ではシンスプリントを引き起こしやすいだけではなく、野球のパフォーマンスそのものにも影響を与えますので、トレーニングなどで修正する必要があります。
トレーニングでオススメなのはフォワード(前方向への)ランジです。立った状態から一歩前へ踏み出し、また元に戻る動作ですが、このときに膝が内側に入らないようにすることはもちろん、肩が下がったり、内側に入ったりしないように注意しながら行いましょう。膝とつま先の方向を一緒にすること、鏡を見ながら上体が鏡に対して正対していることなどを確認しながら行います。膝を曲げたままで歩くニーベントウォークを行うときも同様のことに気をつけて行うとよいでしょう。また足底のアーチをキープするためには足指の筋力も必要となります。足指を鍛えるトレーニングとしては、椅子などに腰掛けた状態で行うつま先上げのトレーニングなどを行いましょう。特に拇指(おやゆび)を意識するとより効果的です。
走り方では、ドタドタ音がなるほどに足底全体で地面に着地するのではなく、静かな着地(ソフトランディング)を心がけるようにしましょう。ソフトランディングを行うためには着地足と反対側の足(いわゆる支持足)に、荷重に対する安定性がないと走ることができず、早く地面に足がついてしまい、足が後ろに流れてしまう原因にもなります。これを改善するためには腿上げのトレーニングや階段を上がるダッシュなどで腸腰筋(ちょうようきん:股関節の前側にある筋肉)などを鍛えること、またこの部分を意識しながら走ることが必要となります。
練習中の動きを今一度意識し直そう。
脛が痛くなってから対応するのではなく、痛くなる前、また痛くなった経験のある選手は特に普段から体の使い方、走り方などに注意しながらこのオフシーズンのランニングを乗り切るようにしてくださいね。
【シンスプリントにならないために】
・着地時に膝が内側に入らないようにしよう
・足底のアーチが落ちていないか確認しよう
・片足スクワットやフォワードランジで動きの確認を行おう
・ドタドタと走るのではなくソフトランディングを心がけよう
・ランニング時にはランニングにあったシューズを選ぼう
(文=西村 典子)
次回、第34回公開は12月15日を予定しております。