試合レポート

智辯学園vs履正社

2011.11.06

智辯学園vs履正社 | 高校野球ドットコム

智辯学園 小野耀平投手

背番号9にエースの風格

 「いつもと(試合の臨む)意気込みが違った」と語った智辯学園の小坂将商監督。
先発のマウンドには、背番号9の小野耀平(2年)が立っていた。エースナンバーの青山大紀(2年)は脇腹を痛め野手としても出場できす、さらに4番を打っていた小池将大(2年)もケガのため出ることが出来なかった。
そんな状況で、指揮官が小野に与えた役割はピッチャーで4番。まさにこのゲームは、小野の真価が問われる一戦。

1回表、まっさらなマウンドに上がった小野。キャッチャーの中道勝士(2年)との呼吸を確かめるように投球練習を開始した。ラストの1球を投げた際、二塁に送球しようとした中道が球を落とした。これがこのゲーム最大のピンチへの引き金となる。

ゲームが始まり、履正社の1番は宮﨑新(1年)。第1球でストライクを取れた小野は、2ボール2ストライクと追い込んだ。宮崎が1球ファウルで粘った後の6球目、小野は中道のサインに3回首を振って直球を投げ込んだ。これに反応した宮崎が打ち返し、打球はセンター前へ。近畿大会初先発の小野にとっては、出したくない先頭打者を出す形になってしまった。

2番庄野雄斗(2年)が送り、3番原田涼平(2年)は進塁打で2死3塁と場面は進む。打席は4番の小保根誠(2年)。ストライク、ボールの後の3球目。小野が投じた変化球に小保根は空振りするが、中道がこれをミットに当てて、ボールは後へ逸れていった。三塁走者の宮﨑が生還し、履正社が1点を先制する。

ゲーム前投球練習の最後の1球を落としていたのが、この1点への伏線。直後の4球目を小野は小保根の体にぶつけてしまう。小野と中道の呼吸はまだ合っておらず、一歩間違えば大量失点の危機だった。

だがここで気持ちを奮い立たせた小野。5番の熊本颯(2年)に対し、直球で押してファウルでカウントを稼ぐ。そして1ボール2ストライクからの4球目、落ちる球で熊本を空振り三振に取った。


智辯学園vs履正社 | 高校野球ドットコム

智辯学園 小野耀平投手(近畿大会初登板で、履正社を相手に4安打2失点で完投)

大事な立ち上がりを1点で切り抜けた智辯学園。打線は2回に今大会初めて打席に立った8番上西良幹(2年)がレフトへタイムリーを放ち同点に。続く3回には3番米田伸太郎(2年)のスクイズで勝ち越しに成功した。

小野は2回以降走者を背負っても冷静に牽制球で刺すなど、徐々にリズムを掴みだす。中道との呼吸も合っていった。
5回にエラー絡みで同点に追い付かれた後も、第1打席で打たれていた宮﨑を三振に切る。そのピッチングはまさに〝エース〝の風格が漂っているようだった。

5回裏、6番山口悠希(2年)のタイムリーと相手のエラーで2点を勝ち越した智辯学園。小野は後半、四死球こそ出すものの、打たれたヒットは1本だけ。

履正社・岡田龍生監督が「打つ方で小野投手に対応できなかった。完敗です」と賛辞をおくるほどだった。

「打撃以外でチームに貢献したかった」と試合後に胸を張って答えた小野。
誰もが注目する存在である青山が出られなくても、『俺がエースだ』と言わんばかりに気合のこもったピッチングで背番号9が準決勝を完投した。

(文=松倉雄太)
(撮影:試合シーン60~100=中谷明)

【お勧めコラム】
独占インタビュー 小野耀平選手(智辯学園)
ライバルを追い抜く為に

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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