試合レポート

光星学院vs聖光学院

2011.10.13

光星学院vs聖光学院 | 高校野球ドットコム

光星学院 金沢湧紀投手

東北チャンピオンをかけて・・・

 光星学院は右腕の金沢湧紀(2年)が聖光学院打線を相手に2安打1失点と好投。3年ぶりの東北チャンピオンに輝いた。

「驚きました」。
光星学院の仲井宗基監督と、キャッチャーの田村龍弘主将(2年)がともに発した言葉だ。ここまで『打』のイメージを見せつけてきた光星学院。でもこの決勝では、背番号『1』が130キロ台後半の直球を主体に見事なピッチングを見せた。

東北大会では初戦(石巻工業戦)で先発して以来の登板。この時は7回コールドで11個の三振を奪ったが、四球を5つ与え、126球も投じていた。
この2日間、仲井監督や金沢成奉総監督が指導して、テークバックを小さくする投球フォームに直したという。チームが苦しんだ前日の準決勝(花巻東戦)では登板機会がなく、「悔しさがあった」とこの決勝に期するもがあった。

立ち上がり、聖光学院の1番齋藤湧貴(2年)に投じた初球のスライダーをいきなりレフトスタンドに運ばれる。ものの見事に捕えられた一発に、マウンドでしばし呆然とするしかなかった金沢。仲井監督は、「振ってくるバッターだったので、初球はボールから入ってもよかったかな」と苦笑いを浮かべた。

しかし、「あれで目が覚めた」という金沢はその後一人走者を背負うものの、この立ち上がりを1点で切り抜けた。続く2回のマウンドはわずか9球で相手の下位打線を打ち取った。


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聖光学院 岡野祐一郎投手

3回、先頭は再び齋藤。ここが重要と考えていた金沢と田村のバッテリーは、齋藤に粘られながらもライトフライに打ち取った。「(失点してから)うまく切り替えられた」という金沢はこれで完全にピッチングのリズムに乗った。

一方で打線は聖光学院のエース岡野祐一朗(2年)の前に、3回まで1番の天久翔斗(2年)が放った2安打のみ。ここまでの3試合同様、テンポの良いピッチングに自慢の強打が鳴りをひそめていた。ただ、「岡野君は4連投。手も足もでないとは思ってなかった」と仲井監督が話したように、好機をじっくり狙っていたのも事実。
4回、先頭の3番田村を打ち取った岡野。前日の準決勝で2発スタンドへ放り込んだ田村をどう抑えるかに神経を使っていた岡野。打ち取ってホッとした気持ちがあったわけではないだろうが、続く4番北條史也(2年)に外角の球を踏みこまれてセンター前へ運ばれた。
ここを好機と見た光星学院。続く5番大杉諒暢(2年)はサード強襲の当たりでエラーを誘ってチャンスを広げると、6番武田聖貴(2年)のセカンドゴロでそれぞれ進塁。7番城間竜兵(2年)は死球で2死満塁となった。

タイムを取って主将の氏家颯俊(2年)を伝令に送った聖光学院の斎藤智也監督。悲願の東北チャンピオン、そして神宮大会出場へ向けてはここが『勝負所』という意思の表れでもあった。

打席は8番の木村拓弥(2年)。1ボール1ストライクからの3球目、164センチの小柄な左バッターが放った打球は、センターを守る齋藤の頭上を越えた。二者が生還し光星学院が勝ち越しに成功した。聖光学院の岡野にとって、この東北大会で初めてリードを許した場面にもなった。

5回にも北條のタイムリーで3点目を挙げた光星学院。ここも岡野は田村を打ち取ったが、直後の4番打者に打たれた。
2点差をもらい、金沢のピッチングはさらに安定してくる。5回から6回にかけては、は1番の齋藤から四者連続三振。
力強い直球に、完全に振り遅れていた聖光学院打線は終盤焦りからか早いカウントから積極的に振ってきた。それを手玉に取る金沢の球威。7回は7球、8回は4球で打ち取った。9回もわずか3球で2アウト。打席に立った6番の長井涼(2年)に対し、こだわりの直球勝負。そして6球目、長井を三振に取り、小さく拳を握りしめた。


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表彰式 優勝旗を受け取る田村主将

「気持ちで負けないピッチングができた」と快投に胸を張った背番号1。昨年のチームができなかった東北チャンピオンの座を見事に掴み取った。
「練習を手伝ってくれた3年生への恩返しは神宮大会に出ることだと思っていた」と話したのは田村。この日は強打ではなかったが、「(本来は)繋ぎの打線。体が小さい分、低い打球を打つこと」と強調した。

逆に悲願の東北チャンピオンにあと一歩及ばなかった聖光学院。ほとんどの選手がベンチで突っ伏し、まるで最後の夏が終わったように泣き崩れていたのが印象的だった。
「(岡野は)5、6点は取られると思っていたので、3点に抑えたのは意外。でも1点しか取れないとも思わなかった。バタバタした前半にもっと攻められていれば」と岡野の好投を讃えるとともに、得点できなかったことを斎藤監督は悔やんだ。

「打てないなにかが金沢君にはあるんでしょうね。歳内(宏明=3年)のスプリットや日大三の吉永(健太朗=3年)君のシンカーのような。それをこれから追求していかないと」と光星学院の金沢を称賛することも忘れなかった。

投げ負けた形の岡野は、「試合に入ると疲れは感じなかった。変化球のキレ、コントロール、それに球速をもっと上げたい」と冬場の出直しを誓った。
選抜出場は確実と言われる東北決勝を戦った両校。ただ、『それは選んでもらう立場だから』とお互いが強調した。だからこそ、〝東北チャンピオン〝という強烈な自信にできる称号を全力で取りに行ったこの日の両校の戦いだった。

(文=松倉雄太)

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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