試合レポート

花咲徳栄vs春日部共栄

2011.10.06

花咲徳栄vs春日部共栄 | 高校野球ドットコム

試合シーン1

乱戦

花咲徳栄(以下徳栄)対春日部共栄(以下共栄)という夏の決勝と同じ顔合わせとなったこの試合、徳栄・上田、共栄・青木という両エースがいるだけに両監督共に4,5点ぐらいの勝負を思い描いていたが、予想に反し序盤からオープンな展開となる。

1回裏、青木は先頭の山本に対しいきなりスリーボールとし、フルカウントまでもってくるが、ストレートを難なくレフト前へ運ばれると、続く山崎にもレフト前ヒットで続かれる。3番・楠本は送りバントだったが、共栄内野陣がこれを内野安打にしてしまい、これで無死満塁となる。ここで4番・藤原にレフト前タイムリーを打たれ先制されると、さらに、続く関口のファーストゴロを板倉が後逸しさらに2点を追加される。6番・若月のセンターフライを今度は一瞬打球を見失った鎌田が落球してしまい4-0とされた所で、早くも青木は一度もリズムを取り戻すことなく降板となってしまった。エースがこれではゲームにならない。代わった西澤もさらに2点を失い共栄はいきなり初回で6点のビハインドを失う。

だが、6点をもらった徳栄のエース・上田もピリッとしない。2回表、この回先頭の鎌田にライト前ヒットを打たれると、続く吉田もデットボールで出塁を許しランナーを貯めてしまう。結局、7番・藤谷にセンター前タイムリーと、8番・西澤に犠牲フライを打たれ2点を返されるなど共栄に反撃のきっかけを与えてしまう。

さらに、この日は西澤ががんばった。徳栄打線はキーとなる打順に左打者が多いこともあるが、2回以降、相手打線を1安打に抑え込む。すると、4回表には藤谷、西澤の連続タイムリーで2点を返し、5回には田村のセンター前ヒットで1点を返す。ついに6-5の1点差となる。5回終了後グラウンド整備中の両チームベンチはどちらがリードしているかわからないような対照的な雰囲気になっていた。


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試合シーン2

だが、6回裏だった。西澤はこの回先頭の若月にレフトオーバーの2塁打を打たれるとさらにワイルドピッチで無死3塁としてしまう。これまでの試合展開やこの日の上田の出来を考えても最悪1点はOKの場面だった。
だが、続く佐伯にフォアボールを出しランナーを貯めてしまう。これはまさに痛恨だった。
この辺りは1年生の経験のなさが出てしまったか。案の定、続く上田にライト前タイムリーを浴びると、その後、無死満塁となり、スクイズを内野安打にしてしまったり、押し出しのフォアボールを出したりと自滅しこの回5点を失い11-5と再び6点差をつけられてしまう。

だがそれでも、共栄は諦めなかった。7回に田村のセンター前タイムリーで1点を返すと、8回には「徳栄自体が夏の時から(配球が)外中心なのはわかっていた。インコースをファールで逃げて外の甘い変化球を狙った」と鎌田は右打者の外中心の配球を読みきり、低めのボールになるスライダーを完全に見極めると、板倉、鎌田、吉田のクリーンアップに意地の3連続タイムリーが飛び出し一気に4点を奪うなどついに12-10の2点差まで追い上げる。

だが、追い上げもここまでだった。結局最後は上田が何とか投げ切り徳栄が関東大会へ進出した。

まずは勝った徳栄だが決して手放しでは褒められない勝ち方だった。それについて徳栄・岩井監督も「若いチームなんでね。何で勝てたのか良くわからない。でも、秋は上田で行こうと決めていたので代える気は一切なかった。甲子園に行っていて新人戦もやっていない。チーム作りが遅れていただけに今大会は一戦でも多くできればと思っていた。それだけに関東は想定外ですし、このチームは発展途上のチームです」と分析する。
打線は1年生主体ながら体つきの割にはスイングが鋭く、いわゆる全員が1~3番打者というような選手達が徳栄らしさを随所にみせた。だが、問題は投手陣だ。エース・上田も今日は調子が悪かったようだが、それ以前にストレートに球威がなく、それでも外角中心で何とか踏ん張っていたが、審判とアジャストしなかったり、スライダーを見極められてしまうと途端に苦しくなる。関東になると打線全体のレベルが上がるだけに配球面を含めた投手陣の整備が必須となりそうだ。

一方の共栄だが、このコールドも考えられる状況での驚異的な粘りは特筆に値する。それだけにエース・青木の乱調が痛かった。確かに、この日はストレートの伸び、コントロール共になかったが、それよりもやや準決勝の雰囲気や徳栄打線に飲まれてしまった感がある。精神面も含めた今後の奮起に期待したい。また、打の中心である主将・鎌田も今大会結局最後まで本来の長打力をみせられなかった。彼は自分の現状についてこう分析する。

「練習でできても、試合になると外から出たり手打ちになっては意味がない。今後は自分がもっと引っ張れるように」と完全復活を宣言していた。また、本多監督も「今まで打力のあるチームとやってこなかった。その中で出たエラーとフォアボールこれが敗因。でも、この子達はとにかく諦めない。意地は見せました。うちは勉強もあるからポイントを絞ってやらせなきゃいけないけど、でも、もっと練習しなきゃね。まずは投手力の整備からです」とこの敗戦を受けチームの立て直しを誓い、まずは球場内通路に選手達を集め30分間に及ぶ試合後ミーティングに入った。

(文=南英博)

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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