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秋季大会を振り返って~明治神宮野球大会編~

2010.11.26

第23回 秋季大会を振り返って~明治神宮野球大会編~2010年11月25日

秋の頂点にたったのは強打の日大三

秋季大会を振り返って~明治神宮野球大会編~ | 高校野球ドットコム

吉永健太朗(日大三)

神宮大会は大学の部で学生最後となる選手達に注目が集まる中、早稲田大が制して大いに盛り上がりを見せた。

大学生が学生最後の大会であるのに対して、高校生にとって秋季大会は新チーム始動の大会であり、さらに神宮大会は初めての全国大会となる。
秋といえばやはり好投手の存在は大きく、夏を経験した選手たちが多く残るチームが今大会でも有利となった。

日大三の小倉監督は優勝後、「甲子園経験者の多さが役に立ちました」とコメントした。

新チームには1番・高山俊、3番・畔上翔主将、4番・横尾俊建、そしてエース吉永健太朗と捕手の鈴木貴弘の今年のセンバツ準優勝の主力メンバーや、代打で活躍した清水弘毅も残る。

都大会では力みで途切れがちだった打線も、神宮大会に入ってからはつながりを見せるようになった。
各試合でいずれも決定打となる本塁打が飛び出し、「強打の日大三」の健在振りを発揮した。小倉監督はよく打ってくれたと選手をほめる反面、決勝戦の戦いぶりに「終盤もう少し打ってくれれば……」ともコメントをもらした。
都大会から攻撃はどこかで打線が爆発するのを待つといった状態だったため、粘り強さをどこまでつけてくるのか冬の課題となった。

危なげない試合で神宮大会を勝ち抜いた日大三だが、それを支えたのがエース吉永の好投だった。
都大会からの試合をほとんど一人で投げ抜き、神宮大会では恵の雨を挟んだこともあり3試合すべてを完投。
完投を続ける中で投球の幅が広がり、また一つ自信と周囲の評価を上げてエースとしての存在感を見せつけた。

秋の優勝までの日大三の道のりは長かった。
日大三は今年の選抜で準優勝に終わり、夏は「打倒興南・島袋」と意気込みを見せながら西東京の準決勝で敗退した。日大鶴ヶ丘にリードしていた試合をひっくり返され、延長14回の激闘の末に敗れるという衝撃の幕切れだった。このときの敗戦のことは選手のインタビューの中で度々触れられる。選抜で勝ちあがった経験と、それだけにあと一歩届かなかった経験から得たものは計り知れず、優勝への想いが一番強いチームだ。
今度は来春の選抜、甲子園の舞台で優勝を勝ち取れるか。


神宮にチームを導いた好投手たち

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葛西侑也(大垣日大)

 準優勝の鹿児島実もまた夏の経験者が多く残るチームだ。
3番の豊住康太、4番の揚村恭平、5番の濵田竜之祐とエースの野田昇吾は夏の甲子園に出場している。
エースの野田が神宮大会のすべてを完投した。
しかしながら四死球で精細をかく場面もあり、課題が残った。

 連覇を逃し、ベスト4に終わった大垣日大もやはり前チームからエースの葛西侑也が粘投を続けた。しかしながら神宮大会では打線が沈黙。初戦は5安打、準決勝では7安打と打線が援護できなかった。

経験が豊富な他のベスト4とは違い、旧チームから一新したメンバーで秋を勝ち抜いたのが浦和学院
1年生の佐藤拓也はエースで1番打者として、チームを導いた。

秋はこの佐藤が原動力となって勝ち進んだ。それゆえに勝ち進むにつれて佐藤への負担も大きくなってしまった。この佐藤自身と、バックアップするチームの成長に期待したい。

大会通して振り返ると緊張感漂う試合が多く、各地区から投手が牽引して勝ち上がってきたのが伺えた。

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釜田佳直(金沢)

1回戦の東北対石川金沢では、石川金沢のエース釜田佳直がコンスタントに140キロ後半のストレートを投げ込んで球場を沸かせた。
ピンチを作りながらもしぶとく守っていた金沢だが、終盤に連打されて東北に敗れた。
釜田はMax150キロを記録し、よりスピードへの注目が集まることだろう。
スピードに踊らされることなくどんな投手として確立するか冬越えが大事になりそうだ。

同じく1回戦の関西対明徳では、公式戦の12試合を通して失点がわずかに4だった関西が9対4で明徳に敗れた。
エースの堅田裕太が初回にいきなり3連打を浴び、続いた水原浩登も抑えることができなかった。
打線は12安打で明徳の9安打を上回っていたものの、決め手を欠いた。

2回戦の大垣日大天理では天理のエース西口輔が5回まで大垣日大を無安打に抑える好投を見せた。
敗れたものの、全国の舞台で力を試して収穫はあったようだ。

神宮大会の熱戦の中で、頂点に立った日大三は投打の力と経験とが一歩リードした存在だった。
春の選抜に向けてこの日大三の打線をどのように抑えるかが神宮大会に登場した好投手たちの課題となり、存在感を増したエース吉永をどう打ち崩すかが打線の課題となってくる。

選抜への戦いはもう始まっている。

(文=高校野球情報.com編集部)

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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