肉離れの応急処置
左右の筋力バランスが同じ程度まで回復してから競技復帰することが理想的。
肉離れの応急処置
肉離れとは突然の動作などによって、特に筋肉が本来持っている柔軟性以上の動きを行った結果、筋線維が引き伸ばされてダメージを受ける状態を指します。太ももの裏側(ハムストリングス)に最も多く発生し、太ももの前側、ふくらはぎ、わき腹など筋肉のある部位には必ず肉離れのリスクがあります。特に太ももの肉離れの場合、走っているときにブチっと音がした、急に力が入らなくなった、内出血が見られる等、かなりわかりやすい状態でアクシデントが起こります。重傷になるとそのまま続けてプレーを行うことはできません。筋肉痛と発生のメカニズムはほぼ同じですが、肉離れのほうがより筋線維の損傷程度が大きいと言えるでしょう。
肉離れになる前には太ももの張りや違和感を感じたり、筋肉の硬さを感じることも多く、こういった身体の変化を見逃さずに対応するだけでも肉離れを防ぐことが出来ます。ウォームアップ不足によっても肉離れは起こりやすくなりますので、普段とは違う身体の状態を感じたらいつも以上に入念にウォームアップを行い、筋温をしっかりと上げて柔軟性を確保してからメインの練習へと移行するようにします。
肉離れになったときは氷などで患部を冷やし、動かさないように安静に保って(RICE処置)病院を受診するようにします。このとき痛めた部位をストレッチして伸ばそうとする選手を見かけますが、ストレッチを行うとより悪化させてしまうことになるので受傷直後、痛みのある場合は行わないようにしましょう。肉離れは筋線維が部分断裂している状態であり、ストレッチをするとより筋線維を伸ばしてダメージを与えてしまうことになります。ストレッチ痛を感じたら、痛みを我慢して無理に伸ばすのではなく、逆に軽く曲げて筋肉を伸ばさないような状態を保つようにしましょう。太ももの裏側を痛めた場合は膝を軽く曲げた状態で安静に保つようにします。
しばらくして痛みを感じなくなった状態にまで回復したところで、ストレッチや筋力トレーニングを再開するようにします。「大会前だから」「試合があるから」といってストレッチ痛が残った状態でプレーすると、再発してまた動けなくなってしまうことになりますのであせりは禁物です。肉離れはよく再発しやすいと言われていますが、筋力が低下した状態のまま競技復帰することで起こると考えられますので、ストレッチで柔軟性を回復させるとともに、トレーニングで左右の筋力バランスがしっかり整った状態を目指しましょう。
文:西村 典子
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