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第86回センバツ大会総括(投手編)

2014.04.13

第86回センバツ大会総括(投手編) | 高校野球ドットコム

 龍谷大平安優勝で幕を閉じた第86回選抜大会。今回から3回にわたって、今回の大会で評価を上げた投手、野手、そして、戦いぶりの光ったチームを紹介し、大会を総括したい。

田嶋に飯塚など、逸材続々の今センバツ

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廣渡 勇樹投手(創成館) Photo: Kyodo News

 今大会も多くの投手が活躍し、NPBのスカウトから注目を集めた。夏までに、どれだけ潜在能力を開花させるかが楽しみだ。

 今の時点でドラフト上位候補に挙がると予測されるのは田嶋 大樹佐野日大)。優勝した龍谷大平安には敗れた(2014年4月1日)が、智弁学園(2014年3月28日)、明徳義塾2014年3月31日)といった強豪に投げ勝ち、評判通りの粘り強い投球を見せた。右肩の開きが遅く、急に腕が出てくるようなフォームから投じる常時130キロ後半~140キロ前半のストレートは球速表示以上にキレがあり、空振りを奪える。そして打者の手元で鋭く落ちるスライダーとのコンビネーションは絶品だ。また今大会を代表する強打者・岡本 和真(智弁学園)を4打数1安打に抑える快投を見せ、評価を上げた。しかし、4試合で17失点というのは、田嶋としては納得いく数字ではないだろう。夏への課題として、さらに打たれにくい投手を目指してほしい。

 昨秋の神宮大会で3本塁打を放ち、打者として注目されていた飯塚 悟史日本文理)は、今大会は投手として大きく評価を高めた。まず投球フォームがコンパクトになった。過去の飯塚は、角度ある速い球を投げようとして、テイクバックを大きく取っていたため、制球が定まらなかった。

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岡本 和真投手(智辯学園) Photo: Kyodo News

 今年は、テイクバックをコンパクトにして、体の近くで腕を振る軌道に改良したため、制球力が付いた。内外角に意図した所に投げられるようになり、投球の幅が広がり、評価を高めた。今の投球からさらにスケールアップして夏を迎えれば、ドラフト指名も現実味帯びてくる。

 その飯塚と初戦で投げ合った田中 空良豊川)は非常に速い投球テンポから140キロ台中盤の速球、縦横のスライダーをストライクゾーンにどんどん投げ込んで、打たせて取るスタイル。夏まで球速・球威が向上し、スライダー中心の投球スタイルから緩急を使う投球を覚えたいところだ。

 1年夏2年夏で甲子園を経験した岸 潤一郎明徳義塾)はストレートが常時140キロ台を計時するようになり、投球に力強さが出てきた。智弁和歌山打線を2失点に抑えた投球術の巧みさは評価されており、ドラフト候補としてマークしていきたい投手。

 伊波 友和美里工)は最速142キロのストレート、スライダー、カーブ、フォークと多彩な変化球を武器とする好右腕。敗れたものの、初戦の関東一戦(2014年3月24日)では7回まで無失点に抑えた。

 山岡 就也広島新庄)は真っ向から振り下ろす130キロ後半の速球は伸びがあり、縦に大きく落ちるカーブのキレも素晴らしい。東海大三戦で14奪三振を記録して、注目を集めた。タイプとしては田嶋と比べて球速は届かないが、縦の変化を使えるのが強み。さらに球速が上がれば、指名候補に挙がってくるだろう。

[page_break永谷、高橋など2年生の活躍が目立った]

永谷、高橋など2年生の活躍が目立った

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須崎 琢朗投手(鎮西) Photo: Kyodo News

 140キロまで球速を伸ばした高井 ジュリアン東海大三)は、夏まで持ち味である打たせて取る投球に磨きをかけたい。石原 丈路福知山成美)は130キロ前半の直球、90キロのカーブのコンビネーションで打たせて取る実戦派の左腕。より力強さを求めたい。伊藤 優輔(小山台)は綺麗なフォームから投げ込む伸びのあるストレート、キレのある変化球の精度の高さは評判通り。夏では得点を簡単に与えない投手を目指してほしい。

 140キロ中盤の速球を計測した東妻 勇輔(智弁和歌山)も面白い存在だ。潜在能力が高く、即プロ入りではなく、大学や社会人野球での開花を期待したいのが、立部 峻長廣渡 勇樹創成館コンビ、加えて緩急自在な投球で勝負する度胸抜群の須崎 琢朗鎮西)の成長も愉しみだ。

 今センバツでは、準優勝履正社の2年生コンビが最も注目を集めた。溝田 悠人は130キロ後半の直球、スライダー、チェンジアップを巧みに投げ分ける実戦派右腕、リリーフで投げる永谷 暢章は角度ある常時140キロ中盤の速球、縦に鋭く落ちるスライダーは一級品。投球内容は速球中心で力で押すタイプ。コーナーの出し入れや緩急を覚えれば、さらに輝きを増す。

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溝田 悠人投手(履正社) Photo: Kyodo News

 優勝した龍谷大平安高橋 奎二は球速は130キロ台なものの、曲がりが鋭いスライダーとのコンビネーションが冴え、優勝に貢献。さらに球速アップしていけば、来年のドラフト候補に挙がる投手だろう。

 駒大苫小牧初戦突破に貢献した伊藤 大海は130キロ後半の速球、カーブ、スライダーをコントロール良く投げ分ける本格派右腕。来年以降、北海道地区を代表する右腕へ成長していくか。

 今治西2014年3月25日)、広島新庄2014年3月29日)相手に好投を見せた山田 知輝は投手らしい投手で、直球の最速が130キロ前半でも、ストライク先行の投球、リズムの良い投球、投球の組み立ては高校生としてハイレベルに達していた。あとは投手としてどれだけスケールアップすることが出来るか注目をしていきたい。

 (文=河嶋 宗一

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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