神宮大会を沸かせた逸材たち 期待のドラフト候補を徹底総括
明徳義塾の優勝で幕が閉じた明治神宮大会。今年は1万人以上の観衆が訪れるなど、見ごたえのある大会となった。今回はそんなドラフト候補たちを総括したい。
勝てるピッチングを見せた市川悠太
市川悠太(明徳義塾)
今大会、評価を全国レベルのピッチャーであることを不動のものとしたのが明徳義塾の市川悠太だろう。右足の内転筋を痛め、さらに右手の爪が割れ、最速145キロを誇るストレートも、今大会は142キロにとどまり、ほとんどが134キロ~139キロだったが、それでも回転数が高く、本気で投げ込んでくるときのストレートは大学生を見ているかのようなストレートだった。市川はショート気味に食い込んでくるストレートで攻める投手だったが、今大会はアウトコースへのスライダーを有効的に使い、決勝戦では4安打完封。創成館の好打者・峯 雄汰は「インコースのストレートを標準に絞っていたけど、アウトコースのスライダーが良かった」と創成館打線の勢いを止めていた。
不調ながらも、ストレートの切れ、変化球の切れともにドラフト候補としての片りんを見せた市川。この冬は故障の回復、体力強化が課題となる。10試合完投の源は体幹トレーニング。毎日10種類以上の体幹トレーニングのメニューをこなし、スタミナを強化してきた。関節が柔らかく、その柔軟性を失わない程度のトレーニングをしたいと語るように、意識の高さも見られる。来春、ドラフト上位候補の評価を与えられるような投手へ成長するのか注目したい。
創成館の川原 陸、七俵 陸の両左腕はともに踏み込み足が広いフォームから繰り出す135キロ~130キロ後半のストレートは威力があり、体格が良く、その後、大化けが期待できそうな逸材。また右オーバーとサイドを投げ分けする伊藤 大和も140キロを超える。これほどの素材が集まった創成館は全国トップレベル。この神宮大会の経験が選抜にどう生きるか。いずれは上の世界を狙える逸材として引き続きチェックしたい選手だ。
大阪桐蔭の147キロ右腕・柿木 蓮、192センチの大型左腕・横川 凱は、平均球速が130キロ中盤と不調に終わった。実力不足というより、コンディション、メカニクスなどをもう一度見直して復活してほしい。
甲子園で最速145キロを計測した大橋 修人も、常時130キロ後半にとどまり、140キロ連発はならなかった。「自分が良いときは指にかかったストレートが投げることができる。今はそれができない。そのストレートを投げるために答えを探している最中」ともがきながら上達のヒントを探っている。
今大会で野手として大きく評価を高めた大谷拓海(中央学院)
大谷拓海(中央学院)
野手では今大会の主役として期待された大阪桐蔭の根尾 昂、藤原 恭大、大阪桐蔭山田健太は不調に終わった。今、大会が終わっても、3人は全国的に見てもトップレベルの選手であることは変わりなく、ぜひ悔しさを冬の練習にぶつけ、選抜では当たりを戻してほしい。
今大会評価を挙げた野手は成瀬 和人(静岡)だろう。今大会、打率.571を記録したが、何より光ったのは腰が据わり、鋭いスピンから放たれる強烈な打球である。打席の存在感、逆方向へ鋭い打球を打ち返す技術の高さは、今大会でもトップクラスだった。また静岡の村松 開人も初戦の日本航空石川戦で3安打。打球の速さはもちろん、俊足、軽快な遊撃守備ともにハイレベル。ドラフト候補として注目したい選手だ。
二刀流だと根尾昂が注目されるが、スケールという点では、大谷 拓海(中央学院)はかなり凄みのある選手へ成長しそうだ。投手ではなく、野手として。投手としては130キロ後半の速球とフォークで武器にする大谷は全国的に見ても好投手として推せる。ただ明徳義塾の市川 悠太から逆方向へ打ち込んだ本塁打を見ると野手として魅力を感じる。根尾も体幹の強さ、反応の良さで本塁打にできる選手だが、将来、どちらが本塁打を量産できるかといえば、大谷である。
投手としてもまだまだ伸びしろがある選手なので、しっかりと体が完成して、判断するスカウトもいるかもしれない。千葉県では久しぶりに現れた投打ともに凄い逸材なので、ぜひ両面で凄いと思わせるパフォーマンスを見せることを期待したい。
日本航空石川の4番上田 優弥は静岡戦では3安打。打球の速さは必見だが、もう少し打球の角度をつけてほしい。スイング軌道、腰の使い方、下半身の使い方などが変わってくると、評価も変わってくる選手だ。
以上が明治神宮大会で光る活躍を見せたドラフト候補たちである。これまでの地方大会を見ていても、まだまだ成長を期待したい逸材は多くいる。ぜひ選抜では、スケール感たっぷりのパフォーマンスを見せて、ファンを興奮させることを期待したい。
(文・河嶋 宗一)
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