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山陰をリードしてきた伝統校である鳥取西と米子東が高校野球史を語る上で欠かせない理由

2020.01.29

鳥取の高校野球を牽引してきた米子東と鳥取西

山陰をリードしてきた伝統校である鳥取西と米子東が高校野球史を語る上で欠かせない理由 | 高校野球ドットコム
鳥取西ナイン

 高校野球の歴史を語る上で、鳥取西は絶対に外すことのできない存在である。というのも、1915(大正4)年に始まった、現在の夏の全国高校野球選手権の前身となる全国中等学校野球優勝大会に鳥取中として出場を果たして開幕第一戦を戦っているからだ。

 しかも、後攻めの鳥取中は、鹿田一郎投手が歴史的第1球を投じている。こうして、高校野球の長い歴史がスタートしているのだ。そういう意味では、まさに全国を代表する伝統校という存在でもある。

 しかも、地元では屈指の進学校でもあり、同じく第1回の鳥取県大会から皆勤を続けている米子東とは文武を通じて長い間のライバル関係にあり、昭和の時代には甲子園出場を競い合ってきている。

 鳥取西は1873(明治6)年に前身の中学が設立され、その後鳥取中~鳥取一中を経て、学制改革で鳥取西となった。創部も1896(明治29)年で、岡山県の津山中や松江中(現松江北)などとも試合をしている。

 第1回中等野球山陰大会では杵築中(現大社)を下して全国大会へ進出している。そして、開幕試合を戦うこととなるのだ。試合も、広島中(現国泰寺)を14対7で下して、歴史的な勝利を挙げている。

 現状では2008(平成20)年夏が最後となっているが、春4回、夏23回出場で通算25勝27敗は県内随一の記録である。

 ユニフォームはエンジをベースとしたものとなっている。鳥取西のエンジは、そのベースが早稲田にあったことを意味している。伝統校では、こうして最初の野球導入のルーツをユニフォームの形やデザイン、カラーにおいて残しておくということはよく見られる傾向でもある。これもまた、伝統校としての誇りとも言えるものでもある。

 これに対して米子東は爽やかなグリーンをベースとしたカラーで、これはスクールカラーに準ずるが、文字は創部当初に指示した慶應義塾に倣ったゴシック体で「YONAGO」となっており鳥取西のワセダ文字での「TOTTORI」との対比にもなっている。

[page_break:米東で親しまれた米子東が19年の春夏連続出場がもたらしたもの]

米東で親しまれた米子東が19年の春夏連続出場がもたらしたもの

山陰をリードしてきた伝統校である鳥取西と米子東が高校野球史を語る上で欠かせない理由 | 高校野球ドットコム
米子東ナイン 

 米子東は1899(明治32)年に鳥取二中として創立し、翌年に創部して19年の春夏連続出場まで春9回、夏14回で通算16勝23敗という数字が記録されている。

 甲子園の出場実績と勝利数としては鳥取西にリードを許してはいるものの最高実績としては鳥取西をリードしているのも米子東の誇りだ。

 1956(昭和31)年夏は別府鶴見が丘や中京商(現中京大中京)などを下してベスト4進出。鳥取一中が記録している県勢の記録に並んだ。

 そして1960(昭和35)年春、初戦で大宮に2対1と競り勝つと、松阪商秋田商を下して決勝進出。決勝では高松商に大会史上初のサヨナラ本塁打を浴びて涙を飲むが、県勢としては初の決勝進出は大いに称えられた。

 地元では「米東(べいとう)」という呼ばれ方で親しまれている。

 歴史的に見ても、かつては鳥取西米子東の両校が引っ張り、さらに倉吉東が追随するという形で、言うならば旧制中学の歴史を担う伝統校がリードしていたのが鳥取県の構図でもあった。

 しかし、やがて倉吉北の台頭以降は鳥取城北米子松蔭などの私立校が力を示すようになってきている。

 それでも、県の高校野球を支え引っ張り続けてきた両校への期待と人気は不変のものである。それだけに、19年の米子東の活躍は大いに盛り上がった。県を代表する伝統校が平成の最後と、令和の最初に県代表となったことにも意味があったとはいえよう。

文=手束 仁

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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