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【U-18 総括】今年のアジア大会は逸材揃いだった!今から覚えておきたいアジアの逸材たち

2016.09.07

 U-18アジア選手権は日本の優勝で幕を閉じた。今回は、日本だけではなく、他国の逸材の情報をお伝えしていきたい。彼らは、次の世代の国際大会で出てくる可能性を持った選手たちだ。今回のコラムで、より国際野球に興味を持っていただければ幸いだ。

最強投手陣・日本。その中でも光った3投手は?

寺島成輝(履正社)

 アジア最強の投手陣を誇る日本。どの投手も素晴らしかったのだが、その中でも寺島成輝履正社関連記事)、堀瑞輝広島新庄関連記事)、高橋昂也花咲徳栄関連記事)の3人は群を抜いていた。

 寺島は緩急自在な投球で、12イニングで、25奪三振、防御率0.00、四死球はわずか2と抜群の安定感で優勝に貢献。普段は130キロ中盤~130キロ後半だが、それでもキレのあるストレートを投げるため、他国の打者はまともに打ち返すことができない。さらに、決めに行く時は140キロ前半のストレートで空振りを奪うという絶妙な使い分けができていた。これでもまだ底が見えないというより、もっと凄味のあるストレートを投げるのではないかと期待したくなる逸材だ。

 堀は今大会MVP級の快投を見せた。準決勝までの5.2回を投げて10奪三振を取り、さらに決勝戦でも4イニング8奪三振、安打を1本も許さない完璧な投球。左スリークォーターから投げ込む直球は常時145キロ前後。最速は148キロを計測した。自慢のスライダーが低めに決まるだけではなく、フルカウントからでもスライダーを思い切り投げ込める度胸の良さがアジアの打者たちを圧倒した。ドラフト的には堀の評価は急上昇しただろう。

 高橋は、韓国戦で8回途中まで1失点の投球。「壮行試合の時よりずっといい」と高橋が語るように、140キロ中盤を計測するストレートは堀、寺島よりも重量感があり、高校生が投げるようなストレートではなかった。高橋も、130キロ近くを計測するスライダー、フォークのコンビネーションが冴え渡り、9奪三振。甲子園の時は満足いく出来ではなかったが、ようやく持ち直した。

 一方、野手では最優秀守備賞を獲得した九鬼隆平秀岳館関連記事)。中国戦で本塁打を放ち、パワフルな打撃を見せるだけではなく、守備では投手陣の持ち味を引き出す好リードをみせた。九鬼無しでは、6試合でわずか1失点の結果はなかっただろう。緊張感のある試合を戦い抜いたところも捕手として評価できる。またこの大会の結果によって次のステージを決めると語っていた松尾大河秀岳館)は首位打者を獲得。木製バットにはしっかりと対応することができており、三塁守備も非常にキレが良かった。遊撃と比べると三塁の守備は丁寧に守備をしており、あの丁寧さを遊撃でも生かせるともっと良くなるはず。彼の進路にも注目をしていきたい。

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[page_break:台湾、韓国は投打に好選手が揃う]

 そして11打点を記録した林中勇輝敦賀気比関連記事)の打撃技術、勝負強さ、慣れない一塁守備を巧みにこなした野球センスの高さは次のステージでも生きるだろう。外野手としてベストナインを獲得した鈴木将平は、打率.318を記録。どのタイプの投手にも適応し、安打を量産する姿は、高校生としてはずば抜けていた。足や肩も一級品の選手なので、ドラフトでも指名有望な選手であることは間違いないだろう。

台湾、韓国は投打に好選手が揃う

梁敞渉(韓国)

 さて他国の逸材を見ていこう。準優勝の台湾の4番を打ち、投手としても素晴らしく、台湾の大谷翔平と呼ばれている陳琥は、決勝戦まで打率.438、1本塁打、8打点、投げても6.1回を投げて8奪三振と投打で実力を発揮した。本人はプロ入りしてからは投手に専念するということだが、これほどパワフルな打撃を見せると、二刀流で勝負していく可能性があるかもしれない。

 他にも、3番を打ち、捕手もこなす疹建富は、決勝戦までの打率が.357、9打点を記録するなど勝負強い打撃が光った。また韓国戦でも本塁打を放ったようにパワフルな打撃がウリ。スイングを見るとまだまだ無駄に遠回りすることがあるので、さらに的確にボールを捉えることができるようになると楽しみだ。

 投手陣では決勝戦で登板した張喜凱は非常に面白い右のアンダースロー。120キロ台のストレートを内外角にきっちりとコントロールし、90キロ台ながら緩く大きく曲がるスライダーはなかなか簡単には打てないキレを誇る。このままいけば、台湾でも実力派のアンダースローとして活躍するだろう。また国際大会で日本を苦しめる投手になっているかもしれない。

 3位の韓国は、実力的には日本、台湾と大差がなく、潜在能力の高さはピカイチ。その中でも光ったのが4番姜白虎だ。決勝戦まで打率.462、2本塁打。自慢の打撃力を存分に見せたが、3打点に終わった。韓国が世界一を狙うには、彼の前にどれだけ走者をためることができるか、また勝負強さを発揮できるかに尽きるだろう。

 李鍾範の息子として評判だった李政厚は決勝戦まで打率.478を記録。自慢のバットコントロールを存分に見せつけた。上のステージで活躍するためには140キロ台のストレートをしっかりと打ち返せるスイングを身に付けること。まだひ弱さを感じたので、プロ入りしてからパワーをつけていくと、足も守備力も高い選手なので、プロでも活躍が期待できそうだ。

 そして投手陣では140キロ台の速球を投げ込み、日本戦でも好投を見せた金珉、140キロ近い速球、キレのあるスライダーでゲームメイクする梁敞渉は、まだ2年生なので、今後の活躍が楽しみだ。3位決定戦まで2イニング5奪三振の快投を披露した孫珠瑛は、角度のある130キロ後半の速球、曲りが大きいスライダーも魅力。好素材が揃う韓国投手陣だが、この3人の今後に注目してもらいたい。

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[page_break:4位の中国も潜在能力が高い選手が揃う]

4位の中国も潜在能力が高い選手が揃う

劉向鵬(中国)

 4位に終わった中国は突出したパフォーマンスを持った選手はいなかったが、安定した打球処理、スローイングが光る遊撃手・楊晋を中心にしっかりと守り、韓国、台湾相手に緊張感のあるゲームを見せた。投手陣も120キロ台ながらも、コーナーへしっかりと集める投球で、基本に忠実なピッチングを見せていた。

 その中で楽しみなのが韓国戦で2試合に登板した曹正清。193センチの長身から120キロ後半のストレート、曲りが大きいカーブ、スライダーをテンポよく投げ分けていた。投手の基礎はできているので、あとは体作りが必要だろう。まだ2年生なので、上手くパワーアップできれば、常時130キロ台~140キロ台も見えてくる逸材だけに、中国は、彼を化けさせるつもりで育成してもらいたい。完成すれば中国代表のエースになってもおかしくな投手だ。

 190センチ90キロと豪快な体格を誇る劉向鵬は130キロ近い速球を投げ込み、曹より威力あるストレートを投げることができていた。まだ2年生で、劉は普段は野手を務めているようなので、投打で注目だ。

 また今回、年齢制限で出場できなかった趙倫は177センチ71キロとがっしりとした体格から136キロの速球を投げ込む本格派右腕。日本でも彼ほどの中学3年生がいたら騒がれているだろう。趙倫は、
「今回、試合に出られないのは残念ですが、もっと、球速が速いピッチャーになりたいですし、いずれはアジア最速投手になりたいと思っています。将来はアメリカで投げられるような投手になりたい。また、台湾、日本にも興味があります」と今後へ向けての意気込みを語ってくれた。来年、再来年と、間違いなくクローズアップされる投手だろう。

 アジアを見渡すと、面白い逸材が多く、発見が多かった。いずれ彼らとは大学、社会人、U-23、トップチームで対戦する可能性は十分にある。日本の選手同様、各国のスーパー高校生もぜひマークしていきたい。

(文=河嶋 宗一


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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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