敦賀気比高等学校 林中勇輝選手 「大舞台ほど強くなる理由」
決勝進出がかかった第11回 BFA U-18アジア選手権の2戦目。韓国に3対1で勝利し、見事、3大会連続の決勝進出を果たした日本代表。この大会で勝負強い打撃を見せているのが林中勇輝(敦賀気比)。中国戦では走者一掃の適時三塁打を放ち、また小学校3年以来の一塁手を守るなど、攻守でハツラツとしたプレーを見せている。今回は大舞台ほど結果を残す林中が活躍できる秘訣を探った。
勝負強い秘訣は次につなぐという意識が常にあるから
林中勇輝(敦賀気比)
林中の大舞台の活躍を振り返ると、ポイントとなる場面でしっかりと結果を残している。まず昨年の選抜では準々決勝の静岡戦でサヨナラとなる適時二塁打、昨年の選手権では明徳義塾相手に6回表終わって0対2の2点ビハインドから反撃となるホームランを放ち、三度目の甲子園出場となった今春の選抜でも7打数3安打3打点とチームの全打点を稼いだ。この勝負強さの秘訣は何だろうか。
「僕は特に強いとは思わないんですけど、大舞台こそ後ろへつなごうという思いが他の大会よりも強いので、それが結果としてつながっているのかなと思います。
2年春の時は、4番に平沼 翔太さんがいたので、平沼さんの後ろへつなごうという思いが強かったですし、3年になってから4番は天野 涼太。他にも1番を打っている植村 元紀は僕よりも凄い打者だと思いますし、前後にそういう打者がいるので、僕は繋ぐだけに徹した。それをU-18でも実践しているだけなんです」
さらりと語った林中。何としても自分が決めるというよりも、こういう思考が結果につながりやすいのかもしれない。そう考えると、林中の思考法は参考になるものがある。
ただ木製バットで結果を残すには、メンタル的なものよりも、しっかりとした技術的な土台があることが前提となる。その上で、先ほど話したメンタル面が大事になる。木製バットの対応は小枝守監督からのアドバイスが大きかった。
「小枝監督のアドバイスは分かりやすくて、すぐに実践できるんです。体重を乗せ方として右の股関節を乗せると思っていたので膝から下を意識して、体重移動もできるとアドバイスしてもらったんです。金属バットの場合ならば、右足に乗せてそのまま回転をさせればいいのですが、木製バットの場合、右足にためていたものを、左足にも伝えればならないという話を聞いて、分かりやすいなと思って、これがうまくいっているんです」
小枝監督の具体的なアドバイスを自分なりに理解し、木製の打ち方を身に付けていった。
一塁守備も、遊撃手との違いをつかんですぐに対応
そして慣れない一塁守備も、遊撃守備の違いを掴んで順応していった。
「遊撃手の場合、ボールを捕球するまで待つ時間があるんです。そして捕球してから左に向かって投げることが多いですよね。しかし一塁手の場合、待つ時間がないんです。また右に回転して投げることも多いので放りにくくて、でも少しずつ慣れていますね」
いろいろ話を聞くと、林中が大舞台で強い理由は、何が何でも結果を出さない焦りがないこと。そして打撃、守備も、指導者からのアドバイスを自分なりに咀嚼して、打つためには、守るためには何をしなければならないのかを理解できていることだろう。その姿を見て、高校生とは思えない落ち着き、余裕が感じられる。そして林中が絶対に取り組んでいるのは「全力疾走」だ。全力疾走した結果が韓国戦では同点となるタイムリーエラーを呼びこんだ。
「やっぱり全力疾走するには、普段からやらないと、できないですし、いつも抜いていたら、あの場面では全力疾走はできないですし、全力疾走したとしても思うようなスピードは出ないと思います。全力疾走は野球を始めた少年野球の選手でもできること。本当に大事なことなのですが、インドネシア戦で凡フライで走らないところを大藤コーチと小枝監督に強く注意されたことで、みんな全力疾走ができています」
巧みで勝負強い打撃を見せ、そして全力疾走を徹底する。チームからすればありがたい選手の1人だろう。迎えた決勝戦。再び台湾と試合を行う。林中勇輝はこの試合でも「勝負強い自分」を、日本で見ている日本の高校野球ファンに見せていくはずだ。
(文=河嶋宗一)
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