横浜vs弥栄
雨風に負けずタレント揃いの横浜が躍動!弥栄の140キロ左腕も負けじと力投
先発・石川(横浜)
この試合、試合前から雨と暴風が吹き荒れ、グラウンドコンディションは芳しいものではなく、試合開始も少し早めた9時52分にプレーボールとなった。横浜は注目の大型ルーキー・万波 中正は6番ライトでスタメン出場となった。
先制したのは横浜。1回表、一死二、三塁から4番村田雄大の二ゴロ間に三塁走者が生還し、1点を先制。さらに5番公家響が右越え適時二塁打で2対0と差を広げる。
3回表、雨が激しくなり、一時中断。その後、再開したものの、雨でグラウンドコンディションが悪くなった影響か、弥栄野手陣はミスが出てしまう。
無死一、三塁のチャンスから4番村田の犠飛。さらに二死一塁から万波が詰まりながらも右中間を破る二塁打。中継の隙をついて石川が生還し、4対0と点差を広げると、その後も、7番申 晟守の左越え適時二塁打、8番徳田の中前適時打で、一気に6対0と点差を広げる。
さらに4回表には石川の3ラン、5番公家のホームランが飛び出す。それにしても、横浜の打者たちは捉えたと思った打球が本塁打と確信できる打球を放つ。そこがやはり違うと実感させられる。
この試合で光ったのは5番公家の打撃である。右中間へ鋭い打球、4回表に飛び出したスライダーを捉えてレフトスタンドへ持っていった豪快なホームラン。2つの打球の弾道の高さ、打球のの鋭さや彼の技術の高さを見ると、やはり別格の選手で、今年の高校生三塁手の中ではトップクラスではないだろうか。
今年、U-18一次候補に三塁手には吉澤一翔(大阪桐蔭)がいるが、その吉澤とどちらを選ぶか。そのレベルにあるといっていい。吉澤は確かな打撃技術、勝負強さ、周りに振り回されない我の強さがある。あとは三塁手としての守備がどれだけ向上するか。また公家は高めの速球に空振りする傾向が強い。速いストレートにどれだけ対応できるか。合わせる打撃だけではなく、速いストレートも打ち返せる隙のなさを目指していきたい
先発の石川は、左オーバーから投げ込む速球は常時120キロ後半~130キロ中盤で最速136キロを計測。去年よりもコンスタントに130キロ中盤を出すことが多くなり、指にかかった時のストレートは絶品で、まさに空振りが奪えるストレートだ。
石川は横浜高投手らしく、下半身主導の動きから打者寄りでリリースすることができる投手。指先にしっかりと力を伝える。いわゆる体全体を使って腕を振って投げる技術を持った投手で、今は130キロ台だが、140キロ台に達した時がかなり楽しみかもしれない。
篁(弥栄)
スライダー、カーブのキレも良く、神奈川県屈指の左腕というべき投手だが、この日はストレートが狙われており、初回から安打を打たれ、5回裏、弥栄は代打・井上の左横線適時打で1点を返されたのは、反省点といえる。キレ型という印象は変わりないのだが、それでも目に見えて球威は出てきたので、次のステージでも活躍ができる逸材であることは間違いない。
試合は7回表に石川の適時打で1点を追加して、11対1。7回裏はエース・藤平尚真が登板。
連投、さらに雨の中での登板ということで、本来の出来ではなかったのか、常時140キロ前後にとどまった。
コンスタントに140キロを出していても、それでも物足りなさを感じてしまうのが藤平の凄さ。去年と比べると身体付きはがっしりとしてきて、同じ140キロでも、思わず差し込まれそうな威力があった。ストレートの質は着実にレベルアップしているといえる。
120キロ後半のスライダーの切れも昨年よりもレベルアップ。1イニングだけだが、しっかりとステップアップしているのが伺えた。あとは長いイニングで投げているのを見てみたい。
敗れた弥栄だが、守備のミスが多いのが気になった。その中でも光ったのは投手たち。先発の近藤は、威力ある速球を投げる本格派左腕。左オーバーから繰り出す120キロ後半の速球、キレのあるスライダーのコンビネーションは絶品で、この日は甘く入ったコースを打たれたのが反省点だが、ここまでベスト16まで勝ち進んだ原動力になったように、夏でも注目される存在になることは間違いないだろう。
さらに3番手左腕の篁将希。140キロ左腕として評判だったが、確かにその評判は偽りがない投手だった。コンパクトなテイクバックから左スリークォーターで投げ込む篁。常時130キロ中盤を計測し、最速は公家から三振を奪った最速136キロ。力で公家から三振を奪っていたので、そのストレートの威力は本物といえる。変化球は110キロ前後のスライダーが中心。このスライダーが決め手が出てくれば、もっと打たれにくい投手になりそう。いずれにしろ夏まで要注目の左腕といえそうだ。
注目の万波は4打数2安打。三振、二塁打、三振、右前安打だった。シートノック、一つ一つの所作、打撃を見て、野球選手・万波は確かにビッグな逸材だ。最近のU-18世代で、最も衝撃を受けたスラッガーがジョシュ・ネイラー(現・マーリンズ傘下ルーキーリーグ)なのだが、そんな世界レベルの野球選手を目指せるポテンシャルがあることは十分に伝わった。この男が大きく育つには、どんな成長を見せればいいのか? またこの試合で見えた課題は別の機会でお伝えしていきたい。
(写真・文=河嶋 宗一)
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